《HAL's Monitor Report》


No.0020 - 2000/08/22

千葉県四街道市 K・Y 様

 モニター対象製品 MARKLEVINSON No.31.5L

1.試聴記

 今回大変に太っ腹の企画でMARKLEVINSONの最上級CDトランスポートを約3週間近く 試聴することができ、我が家のシステムの新しい方向性を見出せたように感じて います。まずは川又さんに感謝! です。

(1)CDトランスポートらしからぬ?
 送られてきた31.5Lは全くの新品であったため、はやる心を押さえて丸一昼夜の 通電。それにしてもこんな高額の機器の新品をモニター用に使用して良いのだろう かといらぬ心配。我が家のトランスポートはアキュフェーズのDP-90。31.5Lの 初代版、31Lとは実は同期生で93年の発売開始です。今や年代物でしょうか。でも、 DC-91との組み合わせの音にはまあ満足しています。一度エソテリックのP-30をこの 構成で聴いてみましたが、相性は今一つで特に高域のさわやかな感じが出ません でした。さて、我慢我慢のウォームアップが終了したところで、いよいよ試聴開始。 いやはやこのCDをセットする操作フィーリングは何ともアナログプレーヤそのもの でいいですね。 さあ、音出しです。 まずは愛聴盤の寺神戸 亮のバイオリンから。(試聴CD1)

(2)アナログの音?
 おおっ、おー! 何だ? という感じで音の出だしから、思わず身を乗り出して しまいました。音の良いの悪いの、スベッた、コロンだではなく、思わずニコニコ したくなるような音楽がこぼれ出てきたのです。楽器の音の質感が非常に気持ちに ぴったりときて、心地良い。音全体に深々とした奥行があり、音像はいつもより 小さ目の感覚で、良く定位し拡散した感じにはならない。多少重心は低めで、 その分これ見よがしな高域の強調感はない。でもホールのエコー感はしっかりと 出てくる。柔らかく深いオルガンの音に支えられてバロックバイオリンが漂う ように、輝くように歌ってくれる。う〜ん、これは操作性だけではなく、音も アナログ的な良さを持っていますね。

(3)モーツアルトが微笑む?
 次はイングリッドヘブラーのピアノ(試聴CD2)です。 ピアノの低弦が非常に しっかりと目に見えるように鳴る。高い音はコロコロと気持ち良く転がり、 それでいて耳に障るような音は一切聞こえてこない。ただ、ただピアノが鳴る。 モールアルトが微笑む。呆然とする私。はっと、我に返り「そんな馬鹿な?」 という感じでDP-90にて聴き直す。 うん、高域の感じが爽やかで結構良いでは ないか。チョット安心する。ただ何となくDP-90の方がハイファイ調と云ったら 良いのか、ステレオで聴いています、というそんな感じが残る。

(4)アンダンテカンタービレに泣く?
 続いて、またまたモーツアルト。グリュミオーのバイオリンソナタ(試聴CD3)。 大好きなアンダンテカンタービレ。大袈裟ではなく、鳥肌が立つ、産毛が逆巻く。 アタマに痺れが走る。おまけに涙が滲む。何というモールアルト、明るくて、 優しくて、そして悲しい、、、正直申上げて、これには参りました。脱帽です。 オーディオであることを忘れてしまいそうでした。聴きなれたCDでこれだけ 感動できるなら、31.5Lも安いと云えるでしょうか。

(5)ホールの広さはどの位?
 さて、少し趣向を変えて、今度はロッシーニの弦楽ソナタ(試聴CD4)。 これは 非常に透明感の高い秀逸な録音のもの。バイオリンは爽やかでチェロが低域を 支える。響きの良い広々とした宮殿で録音したような気配がたっぷりと堪能できる。 DP-90で聴いた時に比べると透明感に対する意識は多少下がる反面、ホールの 広さが良く分かるような気分になる。このCDも音楽としての臨場感が高くなる ようです。

(6)ソプラノの色気にダウン?
 お待ちかね、サンサーンスのクリスマスオラトリオ(試聴CD5)よりオーケストラ +オルガンのプレリュード、ソプラノを中心としたトラック、フィナーレの オーケストラと合唱の爆発をを聴く。 プレリュードは静かな弦の響きが心地よく、 ほの暗いオルガンの音と絶妙のマッチング。ソプラノは輸入盤のためかクレジット がなく、名前が分からないが、ものすごく美しい声をしている。美しくて (顔はもちろん知らないが)、優しくて色気がある。ああ、幸せ、もう何も いらない。 ずっと聴いていたい、という誘惑に駆られる。フィナーレはごく短い 楽章であるが、勢い良く歓喜を歌う。音像は肥大せず、トランジェントも全く 失われない。う〜ん、欲しい!

(注)同じソプラノの他のCDを入手したいと思っているのですが、名前が分から ないので買うことができず、未だに実現できていない。ああ残念。

(7)最後は子守り歌で眠れない?
 締めくくりはリンダロンシュタットのブラームスの子守り歌(試聴CD6)。出だし のオーケストラ部分のホール感が実に魅力的。惚れぼれとするような子守り歌。 だがら逆に眠れない。気持ちがメロディーに集中して目が冴えてしまう。これが 良いことなのか、悪いことか判らないけれど、あー、聴いたなぁ、という充実した 気持ちになれる。

(8)まとめ
 正直申上げて、31.5Lの音楽表現に脱帽いたしました。ある程度できることは やってきたつもりでしたが、まだまだ余地があった訳です。特にCDトランスポート については以前の機種からDP-90に変えた段階で、当分はこれで決まり、という 感覚が強く、今までこのような驚きには遭遇していませんでした。多少注意が 行き届いていなかったかもしれません。今は完全に参ってしまい弱っています。 我が家のシステム全体との相性も良くマッチしているようです。CDでこれだけの 音楽が聴ける、音楽に集中できる、ということは非常に素晴らしいことです。 次のステップが明確になってきました。うれしくもあり、価格を考えると憂鬱 にもなり、、、何はともあれ川又さんに再度感謝、です。

2.雑感

(1)外観や作り
 非常にカチッとした作りで高級感にあふれています。特にアナログディスク プレーヤーの上部キャビネット同様の感覚で筐体の上部のフタが斜めに開く (それも電動で)仕組は秀逸です。「さあ、音楽を聴くぞ」という儀式ができます。 旧製品ではこのフタの開閉ノイズが大きく、不評のようでしたが現行製品では改善 され、全くと云って良いほど開閉ノイズはでません。このフタの裏にもきちんと 防振処理?がされている点は流石です。  また、ピックアップ及び回転系全体がフローティングされており、この フローティング部分に水準器が附属しており、完全に水平を出せる仕掛になって います。これには正直申上げて、精神衛生上は非常に良い!と唸ってしまいました。  なお、表示パネルの文字が非常に大きく(年寄りには見やすい?)、赤い色 なのは好みの問題ですが、ちょっと疑問でした。もちろん輝度の調整は可能です。

(2)操作性
 CDの出し入れは上記からトレイ方式ほど楽ではありません。 特にカーボン ファイバー製のディスクスタビライザーの磁力が強いため、しっかりCDを押さえ ないとスタビライザーがはずせません。 スタビライザーだけ引っ張ると フローティング部分全体が浮き上がってしまい、冷や汗をかきます。 CDの操作はリモコンで行うのが一般的でしょうが、この製品はほとんどの操作を 本体で操作することができます。この操作ボタン(灰色)が外観上のアクセント にもなっているようです。

(3)気になった点
 ただし、(特に)曲順を送るボタンの感触があまり良くありません。ストロークが 多少大きい点と押した感じがグニュっとしています。 また、本体は通常電源を 入れ放しで、スタンバイスイッチにより光学系とパネル系のみ電源を落とせるの ですが、このスタンバイ状態にした時にスタンバイランプ(赤いインディケータ) がゆっくりと点滅しつづけます。暗闇で光っていると、これはどうしたの?という 感じになります。

3.試聴CD

試聴CD1:コレッリ、バイオリンと通奏低音のためのソナタ、第10番 
         寺神戸 亮                            COCO-78820
試聴CD2:モールアルト、ピアノソナタ16番
         イングリッド・ヘブラー               COCO-85087
試聴CD3:モーツアルト、バイオリンソナタ第34番
         アルテュール・グリュミオー           PHCP-9764
試聴CD4:ロッシーニ、弦楽ソナタ ト長調
         カメラータベルン                     グラモフォン 413-310-2
試聴CD5:サンサーンス、クリスマスオラトリオ
         ドレスデンフィルハーモニー          CAPRICCIO 10216
試聴CD6: 「Dedicated to the one I love」よりBrahms's Lullaby
         リンダロンシュタット                

4.自己紹介及び我が家のシステム構成(時間と興味のある方どうぞ)

(1)自己紹介、音楽ジャンル
 千葉県在住47才です。中学生の頃よりオーディオに目覚め、既に30年以上。 飽きずにオーディオを趣味としています。音楽ジャンルは何でも聴きますが、 メインはクラシック。特にモーツアルトです。バイオリンやピアノソナタ、 弦楽四重奏などリクライニングチェアーに深々と座り(寝そべり?)、ほとんど 居眠りをしながら聴くのが一日の疲れを癒す「天上の気分」で最高だと思って います。また、女性ボーカルものも結構好きで良く聴きます。システム構成 などから音量は多少大き目で聴く方だと思います。

(2)システム構成(CDトランスポートのモニター記なのでアナログ系は省略しました)

  CD TRANSPORT   : Accuphase DP-90
  GRAPHIC EQUALIZER: Accuphase DG-28  
  D/A CONVERTER  : Accuphase DC-91
  PRE AMPLIFIER  : Accuphase C-290V
  CHANNEL DEVIDER: Accuphase F-20 X 2 (650Hz,7KHz,-18dB/OCT)
  POWER AMPLIFIER: Accuphase P-360(Low + Mid) X 2 + P-102(High)
  SPEAKER SYSTEM : 自作3WAY(JBL 2402H+JBL 2450J+EV EVX-150A)
  SPEAKER CABLE  : Monitor PC; Cobra 6S
  DIGITAL CABLE  : Wadia ST Link Cable
  INTERCON CABLE : Accuphase SLC-10,15
  Listening Room  :  洋間14畳

(3)システムの紹介、コメント
 システムは3WAYのマルチアンプシステムで音をまとめるために図らずも アキュフェーズ一色になってしまいました。飽きの来ないデザインや問題が あってもすぐ対応してもらえる安心感もあり、長い付き合いになっています。 パワーアンプ1台が片チャネルの低域、中域をドライブするような変則的な構成 となっています。スピーカーについては、クラシック音楽や音場表現には不向きでは と思われる方がいるかもしれませんが、弦楽器が非常に繊細かつハートウォームに 鳴るようになりました。ここまで来るのは本当に紆余曲折あり結構大変でしたが、 ピアノやバイオリンの楽器としての音色には結構こだわってやってきた成果が 多少は出ていると思います。
 スピーカー回りでは15インチウーファーのために箱には相当こだわりました。 左右及び上面、背面は二重構造とし、この隙間(約2.5センチ)には砂を充填し 徹底的な防振対策を施しています。このお陰で低域が軽やかに、かつ肥大せずに 気持ち良く鳴ります。また、中域用ドライバー及びホーンと高域ドライバーは リスニングポイントに向けて個別に角度を付けています。さらに、高域ドライバーは 時間軸を揃えるため、ウーファー及びホーンのバッフル面より若干後退した位置に 幅の狭い専用のバッフル板用意して取り付けています。これにより、定位感が良く、 広がりの十分ある中高域を実現できました。
 マルチアンプシステムではチャネルデバイダーにて各ユニットのレベル調整を 行うのが一般的ですが、中域、高域のドライバーユニットが高能率の場合は、この 方法ではどうしても若干の残留ノイズからは逃れることができません。 この対策 として中域(111dB/W)、高域(110dB/W)のそれぞれのユニットにトランス型の アッテネッターを使用し、こちらでレベル調整を行っています。従って、アンプ、 チャネルデバイダーは基本的に全開状態ですが、ホーンからはほとんど残留ノイズが 出ませんので、透明感の向上つながっていると思います。リスニングルームは 重量対策などを行った以外は建築時には特別な音響対策は施していませんので、 スピーカ後部の左右のコーナーにはかなりの吸音対策を行いました。


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