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「H.A.L.オリジナル商品“BRASS SHELL”をB&Wはどう評価したのか!?」
● ● Vol.1 素材の選択 ● ●
ここH.A.L.で演奏しているS800それ自体の音質は、通常の製品とは違うものになっている。 この写真を見てお解かりのようにNautilus800シリーズのミッドレンジ(N805はウーファー)には必ずこのフェイズプラグが装着されている。 その重要性は、取り外して音を出してみれば誰にもわかるところなのだが、これまでの標準付属品はプラスチック製のものであり、 それに着目したアイデア商品として 私も過去に何セットも販売してきたものがCOPPERHEADであった。 当時COPPERHEADが登場した頃はNautilus800シリーズに標準で装備されているプラスチックのフェイズプラグとの比較しか出来ずにいたものであり、 当然のごとく付属品に対してその優位性を評価して相当の販売もしてきたものだった。 そして、前作「音の細道」の第49話「45×65に棲む鸚鵡貝」では、このフェイズプラグに関して次のように述べている。 |
「さて、S800のミッドレンジユニットに話しを戻すことにする。 このコーン型ドライバーには振動板の動きをエアーダンプするセンターキャップは排除され、ボイスコイルボビン内部の空洞共振を防止し、 更にコーンネックでの音圧集中を拡散させる砲弾型フェイズプラグがN801の時代から取り付けられていた。 B&Wではこのフェイズプラグも様々な材質のものを試作しテストしていたが、従来のプラスチック製のものから、 キャラクターが少なく聴感上のノイズフロアーも低減しているアルミブロック削り出しのものに変更しているのである。」 |
私が信頼するB&Wの設計陣が判断したことに口を差し挟む根拠も理由もなく、S800の開発に当たっての彼らの判断を信じるしかないではないか。
いずれにせよ、私には各種素材による試聴などはできないのであるから・・・。ところが、ある関係者の尽力により、それが実現したのである!! 写真の左側から順に材質を述べていくと、
Timelord Chronos>dcs 992>Esoteric P-0s>dcs purcell1394>dcs Elgar plus1394> 出だしから数十秒でその特徴を引き出すための選曲が求められる。 そこで、このところテストには欠かすことの出来ない存在となったコンピレーションアルバム「Muse」UCCS-1002 の一曲目。 FILIPPA GIORDANOのカルメン「ハバネラ」を共通の課題曲として使用することにする。 試聴の順番については重量の軽い方から、そして白色系素材から黄銅色へという流れで進めていくことにした。画像の配置とは順番が違うのでご注意を。 まず、最初にウォームアップもかねて聴きなじんだ付属品のフェイズプラグを装着した状態で音を出し始める。 付属品とは言え他の800シリーズに付属しているプラスチック製とは比べ物にならないほどの密度感と重量があるフェイズプラグだが、計ってみると80g。 それをなぜ標準としてB&Wが採用したのか、その謎もこれから解き明かされることになる。 |
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そうだ!!これに真鍮と標準品とで決勝戦をやろう!! と、次なる選曲にいそしむ。 S800のミッドレンジにおける差異を確認したいということで、 シンプルでありトランジェント特性とその残響のあり方を確認したいということから、この曲を選択する。 「WIZARD OF OZONE〜小曽根 真ベスト・セレクション」UCCV-2003の11トラック「We're All Alone」をP-0sにスタンバイする。 そして、もう何度目か忘れてしまった作業を繰り返し標準品からスタートする。
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● ● Vol.2 仕上げの選択 ● ●
このフェイズプラグの商品化までには上記の試聴から四ヶ月がかかっており、その間に更なる完成度を目指して試行錯誤が繰り返されてきた。
しかし、前述のように真鍮という素材が特定され、その優位性を確認してからというもの、ずっと私のフロアーにあるS800は
試作品の「真鍮製フェイズプラグ」を装着したままで演奏を続けている。そんな中で体験することになったのがこのシステムであった。
Esoteric P-0s or GOLDMUND EIDOS38>GOLDMUND MM20 Millennium Evolution DAC>GOLDMUND MM22 Millennium Evolution pre amp>GOLDMUND Millennium mono power amp>B&W Signature 800 この超強力なエレクトロニクスに支えられてS800は見違えるほどの美貌を獲得したのだが、ちょうど、このラインアップが揃っていたときに「真鍮製フェイズプラグ」の次なる課題を試聴することになったのである。 それは、前回の試聴において素材選びに関する結論は十分に決着することが出来た。 しかし、商品化に当たっては類似品との差別化のために私は特殊な"光沢があるメタリックな紫色"という塗装を希望したのであった。 素材は決まったが、塗装というデリケートな比較をするのに、上記のフルGOLDMUND Millenniumシリーズの絶品とも言える解像度と木目の細かさ、 広大な空間表現とハイスピードの極みとも言うべきプレイバックシステムがまたしても予想外の結論をたちどころに提示してくれたのである。 課題曲と聴き方は前回同様であるが、塗装の厚みや手法などが異なるサンプルを複数試したのだが、音質の変化は意外な方向に展開していったのである。 前回は8種類の素材による違いを吟味したのだが、今はその結論は自信を持って「真鍮」を特定しており、 以来私のフロアーのS800にはこの「真鍮製フェイズプラグ」を取り付けて日々演奏していた。 私は素材の吟味であれだけ時間と神経を使って聴き込んでいたので、音質を左右するポイントは心得ている。 まず、明るい黄色のS800ミッドレンジになじんでいるクリア仕上げのフェイズプラグのままで、FILIPPA GIORDANOのカルメン「ハバネラ」を聴いてみる。 「うん、これだったら付属品に勝るぞ。さて、この音質を維持したままでメタリック・パープルというカラー・コーディネイトの真鍮製フェイズプラグが評価できれば、 商品化に向けて更に大きな前進だ!!」と、 正直に言って素材が優先されていれば塗装はさほど影響はないだろうと高をくくっていたのである。 そして、フルGOLDMUND Millenniumシリーズによって更に敏感になったS800に、惚れ惚れするような メタリック・パープルの試作品をいそいそと取り付けて席に戻った。 もうこの段階で大きな違いが現れてきたではないか。わずか数ミクロンという皮膜程度の塗装が、なぜにこんなにも音質を変貌させてしまうのか。 とにかく何らかの塗装を施したものは、「真鍮製フェイズプラグ」で最も"旨み"として評価したエコー感が減衰してしまうのである。 バックコーラスも含めて複数のFILIPPAの口元が確かに高解像度に再現されるのだが、 先ほどまでのこぼれ落ちるようなエコー感がふっつりと無くなってしまったではないか。 これでは付属品の方が断然いい。 同じ素材でも塗装によってこれほど情報量に違いがあるということは私にとっても驚きであった。 付属品のアルミのフェイズプラグは砂を高圧で吹き付けて磨くという手法によって濃いグレーに仕上げているが、 これほど敏感なシステムで鳴らすS800ではせいぜい真鍮に表面保護の皮膜を作る程度でクリア仕上げしたものが最上と判断された。 いやはや、いい勉強をさせてもらった。真鍮の素材感をそのままにしておくのがベストである。 |
● ● Vol.3 構造の選択から商品化へ ● ●
さて、フェイズプラグというキーパーツに構造的にどのような手を加えることが出来るというのか? 一部のマイナーメーカーが前述のCOPPERHEAD同様に、色々と違った素材を削りだしてフェイズプラグを商品化する動きがいくつか見受けられた。 果たして、それらは音質的な検証をどの程度、どのような環境とシステムで、 そして、どのような耳と感性の持ち主が行ってきたかという背景説明は聞いたことがない。 ただ、このような材質で同じ形に削って作りました・・・、というだけであろう。 従って、価格的にも二個で3万円程度のものがあることも承知している。 そのような状況で、いわば後発と言える私がプロデュースしたフェイズプラグに、一体どのような特徴と付加価値を加えることが出来るのか、 これはひとえにフェイズプラグというパーツの機能と働きを知り尽くし、B&WのNautilusシリーズを知り尽くしていなければ実現できないことだろう。 その最後の課題(この特殊な課題も私が考案したものなのだが・・・)を実際に検証するために、以下のシステムで三度目の徹底した試聴を行った。 Timelord Chronos>dcs 992>Esoteric P-0s>dcs purcell1394>dcs Elgar plus1394> Jeff Rowland Coherence2>Aria WT350XM>B&W Signature 800Digital & Ward clock cable by dcs & other cable PAD DOMINUS & RLS 試作品は数十個を作成し、試聴時間はこのシステムに至るまでで十数時間にもなり、 不確定要素を自ら発見し、次なる試作品をもって仮説を検証して確認を繰り返す。そんな数ヶ月間を経て、今完成したのがこれである。 |
さて、私がプロデュースしたNautilusシリーズのフェイズプラグ『BRASS SHELL』を、万全の自信を持ってここにご紹介する。 「ボイスコイルボビン内部の空洞共振を防止し、更にコーンネックでの音圧集中を拡散させる砲弾型フェイズプラグがN801の時代から取り付けられていた。」 と既に述べているが、ボイスコイルボビンの内部に入り込むフェイズプラグの砲弾形状の基部に下の写真のように音質を調整するために 三種類の交換可能なリングを採用した。 その次が「銅」の同じ形状のリング、その下が今回のデリケートな試聴によって追加された真鍮製で 凹型に削り込み外周のラインでボイスコイルボビン底部に圧着させるという構造だ。 削り出し工程のうっすらと“切削痕”を残しているような品物とはわけが違う。 この仕上げに関するこだわりは一人の経験豊かな担当者があたり、一点の曇りやムラも見逃さないほどの厳密なチェックを受けてから出荷される。 そして、注目して頂きたいのは、『BRASS SHELL』を納める黒い円筒形のケースだが、これは少し大きな直径のアルミの棒の内側を繰り抜き、 更に外周も削り出して作ったという大変に凝ったものだ。『BRASS SHELL』を装着した後には、 付属品のフェイズプラグをこれに入れて眺めてもよし!!という配慮である。 更に、このケースには一個一個にシリアルナンバーが刻印され、化粧箱には『BRASS SHELL』のロゴをエッチング加工して 真鍮製のシリアルプレートが貼り付けられ同じシリアルナンバーが記載される。それだけ一つ一つの仕上がりにこだわりと責任をもつという 徹底したハイエンド志向をここにも発揮している。 さて、気になる価格だが 2個1セット\98,000(税込み価格)。 5.1chなどのマルチチャンネルにも使用して頂きたいので1個\50,000(税込み価格)での単品販売も行う。 そして、これはH.A.L.オリジナル商品として私が流通を取り仕切ることになり、当面は当フロアーでの独占販売となる。 何と言ってもプロデュースしたのは私ですから・・・。 そして、音質的な責任も私にあるわけですから・・・。 |
『BRASS SHELL』のチューニングポイント
これまで『BRASS SHELL』を検討するのに使用してきた三種類の錚々たるコンポーネントのどれを組み合わせても、 見事な余韻感と質感の向上をニュートラルな視点から聴かせてくれるものである。 エコー感を美しく拡散し、楽音の質感も滑らかな方向へといざなってくれるものだ。 その状態でしばらく試聴されてから以下に述べるような感性の好みに応じて残る二種類のリングをお試し頂きたい。 まず、写真の上にある「銅製のチューニング・リング」にすると、エコー感はほんのわずかに減少するが、 蛍光灯よりは白熱電球へという色温度の調整にも似た演奏全体の輝度を微妙に減じる方向に質感が変化する。 これは「Vol.1 素材の選択」の“銅”の部分でも述べている素材の特徴が、表面の音波が反射する部位に発揮されたものではなく、 ボイスコイルボビン内部の空洞共振をコントロールしたいという私の発想が生かされているところでもある。 「真鍮製・両面フラット」を標準にすると“やや落ち着きがある方向へ・・・”“楽音の明るさを微妙に暗い感じに・・・”“余韻感を少々淡白に・・・” このような傾向を望まれる方にお試しいただきたいものだ。 さて、写真の左側が何と言っても面白い。同じ真鍮製なのだが、機械的な締め込みに対しては外周での"線接触"の方が圧着力は高くなる。 このように微妙に削りだした「凹面処理・真鍮チューニング・リング」は更に微妙であるが聴く人をうならせる変化をもたらす。 「真鍮製・両面フラット」を標準にすると“やや躍動感を付加する方向へ・・・”“楽音の明るさをより明るい感じに・・・”“余韻感を更にみずみずしく・・・” という変化を示すのである。 同じ素材で機械的な接合方法が違うということだけで、このような変化を発見したことも驚きだが、音楽全体にエネルギー感を求め、 かつ楽音の質感の変化は極力避けたいという方にお薦めしたいものである。 さあ、このような微妙な検証を果たしてB&Wが行ってきたかどうか。 あるいは、彼らの試聴室と使用システムでは判断できなかったのか。 それは敢えて問い正すべきことではない。B&Wの感性として不問に伏すべきものであろう。 しかし、私はこれまで懇意にして頂いた同社のSenior Product Manager MIKE GOUGH氏、また 日本マランツ株式会社の澤田龍一氏にもこの『BRASS SHELL』を贈呈して “私たち”の情熱を知って頂き、そして評価して頂ければと考えている。 車の世界では名だたる高級車のチューニングに数々のオプションが販売されているわけだが、 その車、そのブランドの価値観が大変に高いということから商品化されるものだろう。 S800をはじめとしたNautilusシリーズが同様に高い評価をされているからこその『BRASS SHELL』の開発ということの一言に尽きる。 そして、この『BRASS SHELL』は2002.7.26にファーストロットが入荷したのだが、 この入荷の数日前にまたまた驚きのエピソードがひとつ起こったのである。 『BRASS SHELL』の特徴の一つでもある入念なバフがけによる見事な光沢感と表面仕上げの美しさを保護するために、 これまではクリアー塗装を標準として最終的なツメを行ってきた。 しかし、製作者の求める仕上がりの基準が大変に高度なために、クリアー塗装の乾燥工程について今ひとつ納得できないところがあった。 そこで、クリアー塗装に関しては乾燥方法によるトライにも関わらず、思うような高いレベルでの光沢感が得られず、 製造元からの提案で天然素材の特殊な油性溶液によるコーティングではどうかという打診があり、 スプレーで吹き付けて乾燥を待つだけのクリアー塗装に対して、金属面の洗浄を金属加工製品専用の特殊溶剤で行い、 そこに特殊なコーティング液を塗ってから丹念に手で磨き上げるという手法に切り替えたのである。 さて、見た目は同じ透明皮膜の仕上げなのだが、コーティング仕上げのなんとも光沢感が素晴らしいことと、 クリアー塗装vsコーティング仕上げでの比較試聴を最後のチェックとして行った。 すると…不思議なことにコーティング仕上げの方が音の鮮度が高く、情報量も多くなっており、余韻感の保存性もクリアー塗装より素晴らしいのだ。 これには、驚いた。わずかな表面皮膜の違いによっても、このように敏感に音に影響する。 そして、そのデリケートな違いを表現できるシステムと環境がここにあったということで、 ますます『BRASS SHELL』は開発当時よりも自信が持てる音質になって完成を迎えることが出来たのである。 この仕上げ工程に関する詳細は下記の通りであり、更にこだわりの精神が伝わってくるものとして追記することにした。
※ おかげさまで完売致しました ※ この「BRASS SHELL」の販売には、ハルズサークル会員特典が設定されています。 どうぞご利用下さい。 こちらからお申し込み願います。 |