【東京都小平市 Y I 様】

 川又様

 あけましておめでとうございます。

 今回はMorel Octaveの試聴の機会をいただき、ありがとうございました。
 年末が迫っていたこともあり、実質3日程度の限られた演奏時間では
 ありましたが、私なりの感想をレポートさせていただきます。

 私はSonusFaberのSignumというスピーカを使用しています。同社スピーカー
 独特の響きの中に高解像度な面を併せ持つ製品であると私なりには
 評価しておりますが、15cmウーファの低音は、サイズの割には良く伸びて
 いるものの重量感や制動感ではどうしても限界があり、ボサノバの低音がカブる、
 オーケストラが箱庭的にまとまってしまう不満があります。

 これは物理的限界と諦め、30cmクラスの3ウェイへのステップアップを勘案
 するものの、スピーカそのものとそれが要求するアンプ等へかかるコストを考え
 ると、今の私には分不相応であると考えていたのです。

 今回Morelのご紹介を拝見し、川又様のレベルを満たす小型スピーカ、しかも
 Signumとほぼ同じサイズということで、もしかすると私のイメージを満たす小型
 スピーカが存在するのかもしれないという期待から、今回試聴エントリーをさせ
 ていただきました。

 届けられたものは白のコーリアンモデル、まさに石そのものの冷たい手触り
 に墓石(失礼)のような直線的造形。同クラスのサイズでありながら、
 SonusFaberとはまさに対極の構造に、「いったいどんな音がでるんだろう」
 という期待と不安(?)を抱きました。

 セットアップもそこそこに早速音出しです。さあどうだと身構える私に対し、
 Octave5.2は拍子抜けするほどに、自然な音場をふわっと左右に広げました。

 「これはセットアップが楽なスピーカだ」というのが第一印象でした。

 やや狭めの距離をとり、内振り0の設置状態でもきちんと鳴ってくれます。
 これは設置環境の制約が大きい我が家のオーディオにとっては大きなメリットです。

 見た目に反し、実に自然な鳴り方をします。ユニットの性能が素直に音に出ている
 印象を受けました。私にとって少々悔しかったのが、女声を18番とするはずの私の
 SonusFaberを上回る魅力的な声を聞かせてくれたことです。

 中央定位が非常に正確なこと、またおそらくツイータの再生帯域とマッチしているか
 らだと思いますが、潤いがありかつ説得力のある肉声の表現力には驚かされました。

 ツイーターの性能はかなりのものと思われます。ただし香辛料的味付けは全く感じ
 られず、素材そのもので勝負という鳴りかたに感じました。

 問題の低音ですが、これも少々驚かされるものでした。強力なユニットと、強靭な
 人工大理石がなせる技でしょうか、確かに、本当に低音が出ていました。

 スケールが出ないためお蔵入りになっていたクラシックを何枚か効きましたが、
 小型スピーカにありがちな、下に伸ばしたような出方ではなく、しっかりとした
 構築感のある低音が無理なく出てきます。

 「やっぱりこういう製品があったのか」

 システムのスケールを変えずに、現状の問題を解決できる製品があることを
 知ったのは大きな収穫でした。MDFモデルではどうなるのかが気になりますが、
 決して割安には見えないコーリアンモデルをこのような形で成立させたモレル
 の実力恐るべしというのが正直な感想です。

 調子に乗って次々に演奏を進め、ラックの前にはCDケースの山が出来ました。

 どんな音だという報告をすべきなのでしょうが、特記すべき特徴がないというか、
 とにかく、自然に演奏音場が広がり、音楽に引き込まれる音です。私のレベル
 では、特に教会音楽の女声、ジャズの静かなソロピアノなどでは、これ以上
 望むもののないパーフェクトな音楽を聴かせてくれました。あえて分析的表現
 をしますと、

  ・コーリアンの剛性により共振が少ないことから、音の純度が高く、音場の
   透明感が優れていると思われる。

  ・ツイータの中間音域の再生能力が非常に高く、またユニットの取り付け構造
   とあいまって、シビアな設置をしなくても優れた音場を構成する。

  ・ツイータは香辛料的な音は出さず特定のキャラクタを持たない。

  ・ウーファの駆動力とそれを支えるコーリアンの剛性によりサイズの割には
   異様なほどにしっかりした低音が出る。

 おいしい部分としてはツイータの中央音域とウーファの低音再生能力でしょうか。
 これにはまる音楽においては私のレベルではこれ以上望むものはないような
 音楽を聴かせてくれました。

 ただ相性が悪いと思われるソースがない訳ではなく、例えばラッセルマローン
 などのCDでは、主な音域がツイータとウーファの中間になり、またツイータの
 キャラクタの無さのせいかどこかエッジの効かない閉塞感のある音になってしまう
 ものもありました。ただこれが録音によるものなのかは確認できていません。

 トータルで6時間程聴かせていただいたでしょうか。最初は大いに違和感を
 感じたデザインも、音楽を聴くにつれて我が家のインテリアとして不思議に
 馴染んで来て、あたかもこのスピーカを自分のものにしたような錯覚を覚え
 ました。返却の梱包作業は実に憂鬱なものでした。(笑)

 68万という価格はサイズからみれば高価ですが、それを納得させる音を聴か
 せてくれることに驚きました。またシステムのスケールを変えずにこれだけの
 レベルの音が得られる製品があることをじっくりと確認できたことは私にとって
 非常に良い経験になりました。このまま購入しますと申し上げられないのが残念
 ですが、今後の機器のグレードアップの最有力候補になることは間違いありません。

 今回はありがとうございました。今後も世界からすばらしい製品を発掘される
 ことを期待致しております。



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