川又
サイズは何と17.5x31.5x32.5 (cm)というOCTAVEシリーズ全機種をここH.A.L.のリファレンス・システムにて私はすべて試聴しました。
いつものような長文のレポートは控えますが、ポイントを解説させて頂きます。

最初にOCTWIN5.2を聴くことにしました。なぜいきなりスタックモデルを試聴したかというと時間を節約したかったからです。 同社のトップモデルを一番に聴いて、これでだめだったらさっさと片付けよう(^^ゞと思っていたのですが・・・!? まず私はわずか13センチという小口径のウーファーがどのような低域を再現するのか、まずそこがチェックポイントでした。
そこで選曲したのがViolaの検証で使用したこの曲です。
David Sanbornの新作「TIMEAGAIN」の1曲目COMIN' HOME BABYです。
「なんでこんなに低域が出るの!!」
日頃B&WのS800で多数のシステムで試聴してきたCOMIN' HOME BABYですが、これをスタートさせた瞬間には驚きました。
スティーヴ・ガッドのドラムとクリスチャン・マクブライドのベースというリズムセクションが予想以上のプレッシャーで飛び出してきたからです。
13センチのウーファー4個、これが非常に引き締まった低域を聴かせながら、小口径のバスレフポートであってもスムーズにエアを抜いてくれるので良好なトランジェントが維持されています。これには驚きました。 いや、小口径であるからこそ引きずるような低域の余分な響きが付きまとわないのでしょう!!
定番の「くるみ割り人形」も当然かけてみました。
スタックしているので二個のトゥイーターが近距離で向かい合い、上下のOCTAVE5.2にはさまれた空間で余分な反射波があるのでは? という疑念を持っていたのだが、 これは序曲の導入部が始まった瞬間に忘れてしまった。
「なんでこんなに広がるんだろう!? このトゥイーターの情報量は凄い!!」
この時の驚きは後の実験に直結するものでした。
さて、第三の選曲としては押尾コータロー『STARTING POINT』の一曲目「Fantasy!」です。
なぜギターソロを選んだのか? それは小口径のウーファーが低域のエネルギーを音圧として求めると当然ストロークが大きくなり、トゥイーターとの連係で混変調歪みの要因にもなり、 かつ2ウェイというシンプルなシステムであるからこそユニットふたつの“つながり”をチェックしたかったからである。さて、どうか・・・?
「えっ、嘘!! まるでフルレンジみたい!! しかも、こんなに広がる!!」
押尾コータローのギターは鋭い立ち上がりと豊富な余韻感がポイントだが、のっけから両者を手玉に取ったようなテンションが爽快だ!! これはもしかしたらノーチラスシリーズよりもいけるかも!! それを思い浮かべるほど音場感が広いのである。
これはお聞かせしたい!!

さて、私もまったく未知のメーカーであったMORELの第一印象が予想以上に素晴らしかったので、次のテストに進みたくて仕方ない思いが高まる。
実を言えば、それは単純であり簡単に出来るのである。上のスピーカーを取り外せば、そのままOCTAVE5.2になってしまうからだ(笑)
さて、曲順は逆に進めていくことにする。最初は先ほどの押尾コータローでまず比較しよう!!
「あれ、一台でもレンジ感は同じだよ!! これいいじゃない!!」
そうです、この曲での低域の質感は保たれており、高域での余韻感も申し分ない。
しかし、私は違うポイントを直ちに注目していた。それを証明するには一曲戻して「くるみ割り人形」を聴けばいい!!すると・・・?
「あ〜、やっぱりそうだ!! ウーファーの個数が半分になったからといって低域が半分なんていうことは感じられない。しかし、音場感の広がりがさっきのOCTWIN5.2の方がぐっと上手だぞ!! うまく出来てるな〜」
そうなのです。
一台にしたからといって上下のレンジ感が狭まったという印象はないのです。
これは考えようによっては素晴らしいことです!! しいて違いをデフォルメすると音場感の広がり方ということになる。 しかし、この55畳もある空間の真ん中でポツンと置いた状態なのだから一般的なルームアコースティックではもっと響きがでるものだ。
それだったら一台でもまったく問題ない!!

待てよ!? 響きをルームアコースティックという大局から考えるのも間違いではないが、このOCTAVE5.2のかっちりしたコーリアンという素材感も影響があるはずだ。
この素材あっての低域へのエクステンションがあるのだから。
であれば、直ちにOCTAVE5.2Mで比較してみなければ・・・。と今度はかたわらに置いておいたOCTAVE5.2Mをひょいと持ち上げてスタンドにセットした!!
「あら〜、当然だけど軽い!! コーリアンと素材感はやっぱり音に効いてるね」
と口に出さない独り言をつぶやきながらセッティングを済ませる。
着目点が低域の質感の変化と音場感との相対的なバランスを確認したかったので選曲は押尾コータローに戻したみた。さあ〜、スタートするぞ〜!?
「あー!! これいい、この広がりはOCTWINなみじゃないか!!」
スタートして直ちに前後左右に広がったギターのエコー感が周囲に拡散し、スピーカーの大きさなど忘れさせてくれる。 う〜ん、一台にしてOCTWINに比較して減少した音場感が何と軽い? OCTAVE5.2Mの爽快な鳴りっぷりで戻ってきた感じた!!
MDF素材ではコーリアンに制振特性に及ばないということは承知しているが、逆にエンクロージャーの質感が音場感に貢献するのであれば十分なセールスポイントになる。 このエコー感の拡散はぜひ推奨したいものだ!!

文章量としては抑えているが、実はこれらの試聴には二時間以上かかっており、私の耳と感性でMORELを扱うための根拠、自信を築きあげるために納得したかったのである。それでなくても小型スピーカーの愛用者が多い日本であり、車の分野での事例ではないが“高性能でコンパクト”という価値観を確立している日本のオーディオファイルに通用するかどうか、私はそれを確認したかったのである。
今から10年前に私が執筆した下記の随筆では、あのガルネリ・オマージュを紹介しているのだが、奇しくもガルネリ・オマージュのウーファーもわずか14センチ口径のものであった。ここで一部を引用させて頂く。


ガルネリ・オマージュの周辺に音楽が湧きあがり本物のステージ感に驚かされ、そしてスピーカーが消滅してしまうのである。
これはリスニングルームの大小によって引き起こされるものとは違い、克明な描写力は真の音楽に対するレプリカを意味するものである。
しかし、低音の軽い質感はリスナーに再教育を必要とするであろう。
特にリスナーがベースジャンキーだったとしたら、なおさらのことである。
ヘビーな低音部が出ないからといって音楽を聴く喜びが損なわれるとは思わない。むしろ、ガルネリ・オマージュは、その美しいデザインから使い手の警戒心を解きほぐすような優しい話しかけをしてくる。
ガルネリ・オマージュの持つスピリットの真実は、これまでに出会ったことのない特徴であり、私がこのスピーカーから受けた影響と同じくらい鮮明なものだ。

ここでベースジャンキーという単語が出てくるが、これは海外の評論家が低音の量感に無類の執念を発揮するユーザーを称してのものである。
そうです、低域に何を求めるかということに量的なものをお望みであれば、私もそのような方にはMORELを推奨しないでしよう。
音楽のどこを聴くのか!? このテーマに関してバランス感覚をちゃんと持ち合わせている皆様にこそ、このMORELが新しい一ページを開いてくれるはずです。最後に一言・・・!!
「10年ぶりに私が推奨する美的な小型スピーカーの登場です!!」



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