第十六話 「ガルネリの夢を見た男が語る正夢」





 連日猛暑が続く平成6年7月12日、新宿区早稲田に車が到着する頃にはちょうど正
午になっていた。昼食時ということで界隈の道々には学生が溢れ折からの酷暑をものと
もせずに闊歩する若者達のエネルギーに圧倒されてか、日頃見馴れている秋葉原の商売
の熱気とは異質の学問と文学の街であることを強く印象づけられる。現在は私立総合大
学として、都心の学園都市を形成している早稲田大学の前身は明治15年に大隈重信が
創設した東京専門学校である。その20年後に早稲田大学と改称され、大正9年の大学
令によって大学となり現在に至っている。この地名は、明治文学の成立する前後に渡っ
て東京専門学校文学部の機関誌として創刊された「早稲田文学」によって日本文学史に
も登場している。言文一致体の確立によって実現された明治文学は二葉亭四迷の「浮雲
」(明治二十四年)が代表作であり、「早稲田文学」は二葉亭の先輩として助言を行っ
た坪内逍遙が主宰し断続的ながら昭和2年まで自然主義を標榜しながら刊行された。こ
の自然主義は19世紀の末頃にフランスを中心として起こり、我が国には明治後期に伝
わり島崎藤村、田山花袋らが代表者とされている。文学においての自然主義は理想化を
行わずに現実をあるがままに唯写し取るという立場を基調としている。これら明治の華
やかな舞台となったこの地に5年前に新社屋を建築し、欧米文化の産物を輸入販売して
いるのが株式会社ノアである。地の利としての早稲田の選択に如何なる思惑があったか
はさだかではないが、明治後期における日本的な自然主義の解釈と、現在の株式会社ノ
アが評価し判断するビジネス面での自然主義に些かの共通点が見受けられるような気が
してならない。今回の訪問先である株式会社ノアにたどりつく道すがら、他の輸入商社
には感じたことのない印象を受けたのは、早稲田という町並みのせいであろうか。

 さて、同社はカウンターポイント、ハーベス、JMラボ、プライマー、そしてソナー
ス・ファベール等を販売する輸入商社である。これらのブランドが日本に紹介された当
初から一貫して、そのメーカーの商品を手懸け育成してきた。いわば海外のオーディオ
メーカーにとってパートナーシップを大いに発揮する経営方針が魅力となっているディ
ストリビューターである。そして、この訪問の目的こそが待ちに待ったガルネリ・オマ
ージュとのご対面である。国内のオーディオ販売にたずさわる人間としては初めての試
聴の機会であり、また各雑誌社への取材がとり行われる前にお招き頂いた理由としては
、今年2月この随筆で取り上げた「ガルネリの夢」での一早い情報提供に呼応して頂い
たものと感謝している。さて、決して大きいとはいえないが趣向を凝らした外観が印象
的なビルの一階にはガラス張りのショールームがある。その脇のドアを入ると、受付は
4階という案内がある。エレベーターで4階に上がりオフィスに立ち入ると、デスクか
ら目を上げられた同社々長の野田頴克氏が気さくに出迎えてくれた。海外を仕事で飛び
廻っている野田氏は当然の事ながら堪能な英語をお話しになり、来日された海外メーカ
ーの首脳人とのやり取りを目にしたことがあるが、紳士的な起居振舞にはいつも敬服の
念を感じさせて下さるお人柄である。試聴室は3階にありサービス部門と同じフロアー
である。壁には整然とパーツストッカーの引出しが天井まで並び、顔なじみの技術者で
ある高木氏に声をかけた。「ソナースの6dB/OCTのネットワークコイルは何処に
あるの」すると、「ソナースのネットワークはエンクロージャーに樹脂で封入固定され
ているからコイルだけというのはパーツとして持ってないんですょ。それにコイルが故
障するということは殆ど皆無だから。」なるほどと思いながら礼を言って試聴室のドア
を開けると、営業担当の堀内昭夫氏が「お待ちしてました。」と迎えてくれた。この試
聴室を訪れたのは確か2度目である。決して大きな部屋ではなくおおよその広さは十畳
程度であろうか、逆に言えば一般的な住宅環境に近く親しみの持てる空間だ。

 さて、いよいよガルネリ・オマージュとの対面である。「あぁ、きれいだ」何とも単
純であるがこれが私の第一声であった。しかし、これから先ガルネリ・オマージュを初
めて見た人は総て同じ台詞を口にするであろう事を私は断言したい。それほどの溜息が
出るほど美しいのである。原石も磨かなければ宝石として光輝かないのと同様に、木材
も磨けばこれだけ美しくなるという驚きがしてならない。写真で見ると黒い線で区切ら
れている木材の仕切り部分は触れても境目が感じられず、透明感のある光沢によって見
事な造形美を具現化している。自分の顔が鏡のように鮮やかに映しだされる表面は、触
れてみると一切の細かい起伏が感じられず滑らかそのものだ。フロントバッフルを縦方
向に渡された黒い糸はゴム製で、上下のエナメル塗装されたステンレス・フレームに対
してテンションがかかっており引っ張りながら取り付けられるようになっている。それ
を外すとユニットが露出するが、触ってみて初めてわかったことがある。シルクを芯材
とした28mmソフトドーム・トゥイーターは他の同社の製品と同じくデンマークのダ
イナオーディオ社のカスタムメードで、表面を特殊な塗布剤によってダンプされており
、無垢のカエデ材によるリアチェンバーによって後方からしっかりと支持されている。
さてミッド/バス・ユニットについては、どうもダイナオーディオ社の創始者であり腕
利きエンジニアであるスコーニン氏が独立し、同国内においてオーディオテクノロジー
社(スキャンテック社という呼び方もされている)という新会社を作られたようだ。前
作のエクストリーマのウーファー製作から提携が始まり、このミッド/バス・ユニット
もスコーニン氏の手になるものだ。140mmミッド/バス・ユニットは大変軽量なポ
リプロピレンを中心素材としており、このコーンダイヤフラムは軽く触れてみると、ビ
ロードの様なウォームな感触のマイルドサーフェスとなっている。一辺が165mmの
正方形ダイキャストフレームによって構成されたこのミッド/バス・ユニットは、小口
径の割に54mm径のボイスコイル・ボビンを搭載しており45Hzまで低域の再生帯
域を拡張している。この低域再生のためにリアのレフレックス・ポートは口径が約4c
m、ダクトの長さは10cmの深さを持っており、その共振点は52Hzにチューニン
グされている。一般的に言ってユニットをバッフル板に取り付ける場合はユニットのフ
レームを固定することが多い。ダイナオーディオ社のようなユニットメーカーからOE
M供給を受ける場合、トゥイーターのフレームは1から2ミリ程度の厚みを持つ丸や四
角の金属製プレートで、エレクタ・アマトールやエクストリーマもトゥイーターダイヤ
フラムの周辺に黒いプレートがある。OEM製造元からこのプレートがついた形で納入
されてくるのであろう。

 しかし、ガルネリ・オマージュではミッド/バス・ユニットにおいては165mm四
方の厚みが14mm、トゥイーターでは110mm四方で厚みが5mmもあるダイキャ
ストフレームに取り付けられていることに驚いてしまう。これらのフレームがマウント
される、なだらかな起伏のあるドライバーバッフルは15層に積層されたバーチ(樺)
材が用いられており粒状の模様を残した黒い皮で覆われている。そして、ハードワイヤ
ー・クロスオーバーネットワークはソリッドMDFのトレイ上に固定され、厳選された
マルチストラッドOFCワイヤーによって構成される各パーツは更にレジンを使って封
入固定され機械的振動から保護されている。クロスオーバー周波数は2.5キロHzに
設定され、スロープ特性は6デシベル/オクターブ、インピーダンスは最小で6Ωだが
標準では8Ωとみなしても良いだろう。ハイパス・フィルターは二個のフィルムコンデ
ンサーと空芯コイルの3個のパーツで構成され、ローパス・フィルターは最初に大きな
空芯コイルを通過させフィルムコンデンサーを付加したRC Zobelネットワーク
からなっている。これらはリアの金属性マルチウェイ・ターミナルによってバイ・ワイ
ヤリングとバイ・アンプに対応可能となっている。このネットワークはリアのバスレフ
ポートを装着している無垢のシナノキのデッキ部分に固定されているわけだが、エンク
ロージャー内部に突出した形となるこの部分はアルミニウム合金によって補強を加えら
れている。そして、この様なフロントとリアの構造に対して優雅なカーブを見せるサイ
ドのウッドブロックは、ウォールナット、カエデ、シナノキ等から手で削られた42個
の木片によって構成され、本編第十一話で解説したような仕上げが施される。これには
1インチから4分の3インチの厚みがあり、トップとボトムプレートは1インチの厚み
ウォールナットを使い実質の内容積はわずか10リットル程度しかない。さて、ここで
2年前にソナース・ファベール社々長のフランコ・セルブリン氏が、私のフロアーに来
訪された時のやり取りが思い出される。ソナースの作るスピーカーには共通した素材で
構成されるスタンドが標準装備として付属されている。天然大理石のベースに木製の柱
を取付け、その上に鉄板のトッププレートが乗っている。大理石ベースの下で床と接す
る部分にはフェルトが、トッププレート上でスピーカーが乗せられる接点には小さい板
チョコの様なゴムブッシュが取り付けられている。今回のガルネリに付属されてくるス
タンドは高さが89cmで、本体を乗せると1m27cmの高さとなる。この大理石ベ
ース下のポイントには今回はごく小さな脚部が取り付けられている。スピーカーと接す
る部分には全面にフェルトが貼られており、ガルネリ本体下部のスタンドと接する部分
も同様である。「現在、多くのスピーカー・マニュファクチャラーがスパイクを多用し
ているが、ソナースは何故スパイクを使わないのか?」こんな私の質問に対して、返っ
てきた答えの何と明快なことか。「金属のスパイクは我々が求めるデザインに合わない
。そして何よりも、スパイクは響きが良くない!」ウィルソンオーディオやアヴァロン
に代表されるような、アメリカン・ハイエンドのスピーカーエンジニアに同じ質問をす
れば、どんな答えが返ってくるか、わかり過ぎるほどわかっているだけに大変印象に残
るコメントとして記憶に残っている。

 技術的な質問に対して感性で回答する、つまりフランコ・セルブリン氏はこの時代に
して既に他のメーカーと違う方向を見詰めていたのだ。スペックで性能を追求すること
によって失われてしまった、近代オーディオの何かに問題を感じておられたのであろう
。さて、感動的な出会いから一週間たった7月18日、私の手元にもガルネリ・オマー
ジュが届いた。シリアルナンバーは141番である。白い木箱に納められたガルネリ・
オマージュはワインレッドのシルク製バッグに包まれており、同色でシルク貼りのオー
ナーズ・マニュアルが保証書とともに付属されている。一般的にマニュアルと言えば「
このスイッチをこうするとこうなる。」とか「接続はプラスがこっちでマイナスはあち
ら」のような手解きが書かれているわけだが、ガルネリのマニュアルにはそれらの初歩
的な解説は一切ない。ソナース・ファベールがなぜこれを作ったか、ガルネリのネーミ
ングについての歴史的な解説、ガルネリのデザインスケッチ、最初の四セットの寄贈先
、クレモナのバイオリンサロンに展示されたガルネリの写真、等々ガルネリについての
背景描写と思い入れが書かれているのだ。それでは、ガルネリ・オマージュのリスニン
グルームにおけるセッティングはどう考えたら良いのか。これについては、輸入元の株
式会社ノアがソナース・ファベール社から口頭で伝え聞いているメッセージがヒントに
なる。「スピーカーの音軸(スピースーの正面方向に延ばした直線の事)がリスナーの
約一メートル手前で交差するように左右のスピーカーを内側に向けて角度を付ける。」
ただし、これにはこんな条件が付いてくる。スピーカーの背面が十分な吸音拡散面であ
ることと、リスナーの後方には比較的ライブで十分な空間があること。これらの条件を
基本として、後は個々のケースに応じて一般的なセッティングを試みることになる。

 はて、このセッティングの考え方は一度経験したことがあるぞ。昨年の十月に聴いた
B&Wノーチラスの九十度セッティングと同じではないか。(詳しくは『音の細道』第
九話「鸚鵡貝の惑」をご覧下さい。)私のフロアーの何処に置くかは既に決めていた。
幅2.4m、高さ1.8mに渡り、QRDシステムのアブフューザーを設置した壁面に
背中を向けて、ユニットの位置で約60cm程前方で2台のガルネリの間隔は約2m程
度。リスニングポイントはQRD設置の壁面から四m程度の距離をとった。これで一応
はソナース・ファベールの指定するところの基本条件が整ったことと思われる。ひねく
れ者の私は、最初は2台のガルネリを全く平行に置いてみた。従って、左右のガルネリ
の音軸からは目測で内側に30度位の位置で聴くことから始めた。使用した機材は、プ
ライマーのCDプレーヤー204、ラインプリアンプ201H、モノラルパワーアンプ
202、といったワンブランドのシステムである。インターコネクトケーブルはオーデ
ィオクエストのエメラルドとラピスを使用し、スピーカーケーブルとガルネリのバイワ
イヤリングターミナルのジャンパーケーブルにはカルダスのゴールデン5Cを使ってい
る。以前から、このシステムでエクストリーマを長らく鳴らしてきたもので、ソナース
のスピーカーとの相性については熟知しているものだ。これからの角度の調整で起きる
であろう変化に期待しつつ、第一声を聴いてみた。やはり弦楽器の曲を最初に選んだ。
イタリア合奏団の「ロッシーニ・弦楽のためのソナタ」(DENON CO−1846
・47)も私の試聴には欠かせないディスクである。これは、丁度7年前の今頃イタリ
アのピアッツォーラ・スル・ブレンタにあるコンタリーニ宮という古城の一室で演奏さ
れたものだ。写真を見ると、円陣を組むようにして並び楽器を手にしている9人の演奏
者は皆半袖の軽装である。7年前のイタリヤもさぞ暑かったのであろう。ロッシーニが
12歳の時、1804年に作曲したこのソナタは事実上ロッシーニの最初のまとまった
作曲であったらしい。そのソナタ第一番ト長調、第三部のアレグロをかけた。音場感が
どうこうと言うよりも、まず弦楽器の温度感と温もりのある質感、潤いのある響きに強
烈な印象を受けた。

 種々様々なスピーカーでこの曲を聴いてきたが、あるスピーカーでは高域にジェラル
ミンの粉末をふりかけたようなメタリックな色彩感が加味されたり、逆にバイオリンと
対比してチェロやコントラバスの質感が肥大してしまう様な事例が見受けられたが、ガ
ルネリ・オマージュはさすがにしなやかで均整のとれたバランスを実現している。残念
ながらシワはあるが、最上級の絹の生地にスチームを当てアイロンが通った後の、まさ
にシルキートーンという表現がぴったりくるような見事な光沢と艶を連想させてくれる
。同じ曲を今まで聴いていてわからなかったことが露呈してしまった。何と例えたらよ
いのか難しいのだが、今までのスピーカーでは弦楽器やヴォーカルといった通奏楽音の
再生には、楽音と空気の間に幾許かの摩擦感があったのではないかと気がついたのだ。
ところが、ガルネリ・オマージュの再生音にはそれがない。大変スムースにフーッ、と
空間に溶け込んでしまう余韻がふんだんに感じられる。スピーカーを楽器として捕らえ
、エンクロージャーへのこだわりが何を求めての事なのかがこの段階ではっきりと認識
できた。この辺でガルネリの向きを少しづつ内側に振り向けていく。音軸がほぼ正面を
向いた。円陣型の演奏者の配置が空間で結び付いてくる。しかし、音源の位置はユニッ
ト上にあることがまだわかってしまう。更にもう少し、まだだな、もう少し。聴いては
向きを変え、向きを変えては聴きなおしてを繰り返す。ガルネリの側面が殆どこちらを
向いてしまうような角度になったその時、今までユニット上、正確にはユニットの少し
手前から感じられた楽器の群れが、まるで玩具の楽団をポーンと向こうへ放り投げたか
のようにガルネリの後方へ展開するようになった。スピーカーが消えてしまったのであ
る。「このポイントがそうだ。こういうことだったのか!」これまでの過程を忘れない
うちにと、これも私の試聴では欠かすことのできない大貫妙子の「ピュア・アコーステ
ィック」を聴いてみた。エクストリーマの様にウッドベースが重くはじける量感はない
が、彼女の声にはひとクラス上のリアリティーがプラスされる。それはヴォーカルの核
になる部分の明確さに対して、響きと余韻の分離感として聴き取ることができる点だ。
ピントが合っていない被写体がフォーカスを合わせていくに従って、もうこれ以上は望
めないというレベルで口元が鮮明になって息継ぎのために上下する胸元の起伏まで見え
てきそうだ。彼女の声のする方に近づいていっても、各帯域バランスに変化は見られな
い。ノーチラスで感じられた現象と同じくガルネリ・オマージュは音のフォログラフ(
立体映像)を作り出してしまったのだ。ガルネリ・オマージュは、上から見ると楽器の
リュートの様なティアドロップ(涙適形状)形をしている。球形が尾を引いたような形
の球形の先端(ティアドロップの下側)に、音源であるスピーカーユニットを取り付け
て音を出した場合にどのように拡散されていくか。答えとしてはノーチラスと同様に、
球面拡散形状をもって音波は拡散していくのである。カーボンファイバー製のエンクロ
ージャーとアルミニュウムを芯材とする振動板をもつノーチラスと、様々な堅さと質の
違う天然木材を結合させシルクの芯材の振動板をもつガルネリ・オマージュは全くの対
照的な構成素材でありながら、ここにエンクロージャー・デザインの大きな共通点を発
見できた。「楽器と同様な音波の放射パターンである球面波の再生」が両者の目指した
ものではなかと推察することができる。さらに微妙ではあるが意外な発見もあった。フ
ロントバッフルを縦方向に張られたストリングス状のグリルである。一般的にはグリル
を取り付けた状態でチューニングされ事が多いのだが、ガルネリの場合には大変装飾的
な目的が感じられ、しかもゴムを素材とした糸状の物だけに音質には殆ど関係がない、
と思っていたが聴き込んでみるやはり例外ではなかった。しかし、その効果が逆なので
ある。グリルは一種の緩衝材として、透過する高域を幾分やわらげたり拡散したりする
のが一般的な効果である。理由は憶測の領域を脱しえない仮説しか思い当たらないが、
ガルネリの場合には逆にグリルを装着した方がフォーカスの絞り込みがより鮮明になる
傾向が感じられた。あくまでも私のフロアーの、ある状況下における個人的な観察と考
察なので、実際のオーナーの方々総てに共通するものとして断定は出来ない事をご理解
頂きたい。最後に、私は世界中の様々なオーディオコンポーネントを聴いて分析し、私
の頭脳の中にある膨大な記憶の引出しに見出しを付けてファイリングすることが重要な
仕事だと考えている。お相手をするお客様の好みを推測し、その方のタイプによって開
ける引出しが違い検索するファイルが違うのである。この日、ガルネリ・オマージュは
、赤い二重丸を付けてトップランクの引出しにファイルされたのであった。
                                    【完】

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