《HAL's Monitor Report》
No.0125 - 2002/9/7 東京都杉並区在住 I・S様より モニター対象製品 ESOTERIC P-70 / D-70 8月11日(私の40?回目の誕生日)に、P−70、 D−70は届きました。 前日、休暇旅行から帰ったばかりで、頭がぼーっとする中で、早速セッティン グを行いました。ラインナップは以下のとおりです。 スピーカー ウィルソンベネッシュ ARC プリメインアン プゴールドムンド SRI2 SACDプレイヤー ソニー SCD−1 オーディオケーブル PAD MIZUNOSEI スピーカーケーブル モニターオーディオ COBRA ラック クァドラスパーイヤー Q4D P−70、D−70間のディジタルケーブル及びワードシンクケーブルは、バ ンデンハル製のもので、いずれも、一緒にお借りしたものです。 最初の印象は、黒くて無骨なデザインが、どうもなじめない印象でしたが、 取りあえず、セッティングを終えて、CDを掛けっぱなしにしてウォーミング アップをしました。 P−70は、2倍、4倍のアップコンバートが選択でき、またD−70もデ ジタルフィルター、ワードシンクの有無、RAMバッファー仕様の有無が選択 できるため、非常に沢山の組み合わせが可能ですが、マニュアルに記載されて いた、最もお進めの組み合わせ(P−70は4倍アップコンバート、D−70 は、カスタムデジタルフィルター、RAM+ワードシンク)で試聴を進めまし た。 これまで使っていたSCD−1も奥行感の表現や定位については優れている と感じていましたが、試聴を始めた途端、「やられたー」という感じで、次か ら次へと、CDを取っ替えて長時間に渡り聞き入ってしまいました。 以下は、その中の幾つかのCDでの印象を記したものです。 スコラ カントルム[LILY118] 北欧のアカペラ合唱団による混声合唱のCDです。元々、残響成分の 多い録音ですが、SCD−1と比べて、ホールの奥行き感が段違いで、 しかも、一人一人のメンバーの位置関係がハッキリ分かるほどの定位の 良さを感じました。メンバーとメンバーの間の空間も感じられるような 印象です。一人一人の声が感じられるにもかかわらず、それが溶け合っ てホール一杯に広がる感じで、「音場感ていうのは、このことを言うの か」と改めて教えられる思いがしました。 バッハ ブランデンブルグコンチェルト カールリヒター[Archiv 4 63 657−2] 弦楽とハープシコードのみで演奏される3番を中心に聞きましたが、 SCD−1と比べて低域が締まり、低音弦の音程もよりハッキリ聞こえ るように感じました。また、この録音は、1960年代のもので、これ まであまり広がりを感じたことはありませんでしたが、スピーカーの左 右に音場が広がるように感じました。 キャスリーンバトル ザルツブルグリサイタル[GH 415361−2] 指揮者のジェームスレバインが伴奏をしたCDで、バトルの初録音と して15〜6年前に話題になったものです。比較的オフな録音ですが、 P−70、D−70の組み合わせでは、伴奏ピアノのタッチの違いが明 瞭に分かります。この組み合わせは、SCD−1に比べて、音像がより 絞られるようで、これまで少しファットに感じていたバトルが、ずいぶ んスリムになりました。 これは、どのCDを聞いたときにも感じたことですが、定位が明確に なる一方で、ボーカルの口が小さくなったり、バイオリンソロが小さく なるという効果も現れるようです。 シューベルト 水車小屋の娘 フィッシャーディスカウ イエルクデムス[G FD 463−502−2] フィシャーディスカウの40歳前後の録音ですが、最近になって初め てCD化されたものです。SCD−1と比べて、ピアノ伴奏とボーカル の前後関係がハッキリ分かり、このCDでもフィッシャーディスカウが 少しダイエットしたような印象を受けました。 シューマン アルペジオーネソナタ マイスキー アルゲリッチ[GH 49 524−2] SCD−1に比べてチェロがより引き締まった感じで、音に芯がある ように聞こえました。ピアノの左手のタッチがより堅くなり、音程がよ りはっきり感じられるようになりました。音場が広がって感じるにもか かわらず、音の実在感が希薄にならず、広いステージにピアノとチェロ がしっかりと定位している様子が、ハッキリと感じられました。 バッハ 無伴奏バイオリンソナタ3番2楽章 イダヘンデル[SBT2090] SCD−1では、重音、三重音のアタックがきつく、場合によっては、 がさついた耳障りな感じもする録音ですが、P−70、D−70では、 耳障りな印象は全くなく非常になめらかで、しかもそれぞれの音程がハ ッキリ聞き取れました。 実は、以前6階のHALIIで、このCDをP−70、D−70の組み 合わせで試聴さてもらって以来、是非自宅で試聴してみたいと思ってい たのですが、自宅でもやはり同じ印象でした。これを聞いた途端に、「返 却したくない」という思いが、むくむくと湧き起こってきたのです。 全体的な印象として、定位感、空間表現のいずれにおいてもSCD−1を凌 駕しており、音のなめらかさ、自然さでも格の違いを感じました。特に、感銘 を受けたのは、ピアノの再生で、ピアノのメカが弦にあたる瞬間の音が一つ一 つ聞き分けられるようで、本当にリアルです。そんな訳で、無骨な外観もあん まり気にならなくなり、返却日が近づく頃には、「これはこれで良いかな」と 思えるようになってきました。 実は、21日の返却日を過ぎても、我が家には、P−70、D−70が鎮座 しております。最初は、「試聴だけ」と固く誓って(?)借りたのですが、返却 しなければならない日が近づくにつれて、「お前は、これほどの音を聴いて、 SCD−1で我慢し続けることができるのか」という思いが強くなり、気が付 いたら、もう一人の私が、「川又さん、これ下さい」と言っていたのです。 その後、仕事が忙しくなり、以前ほど集中的に聴く時間がなくなっておりま すが、ほんの少し時間があるとCDをトレーに載せて、「にんまりする」とい う日々を過ごしております。SCD−1を下取りに出してしまったため、SA CDは聴けなくなってしまいましたが、そのうち、P−70でSACDが聴け るようなアップグレードサービスがあるのでは、と密かに期待してます(D− 70では、SACD対応のアップグレードが行われることがマニュアルにも書 かれているのですから、これに対応したトランスポートも必ずデリバーされる はずですよね!その際には、P−70のアップグレードも・・・)。 ということで、高価な機器を気前よくお貸しいただいたティアックさん、川 又さん、どうもありがとうございました。思い入れのある機器を自宅で試聴で きるというのは願ってもないことでしたが、「購入」への道を突っ走ってしま うことも、また予想できたことでありまして、「試聴」=「ローン残高の増加」 を意味することでもあります。でも、日々、幸せな思いができるのであれば、 欲望のままに任せた方が良いということを、正直に感じた良い機会でもありま した。今度はジェフローランドのプリとメインをお借りして見たいと思ってお りますが、それはお財布との相談ということになりそうです。 拙い試聴リポートでしたが、少しでも私の喜びを感じて頂ければ幸いです。 以上 |