《HAL's Hearing Report》


No.0143 - 2003/9/30

埼玉県川口市在住 N・S(LUX FAN)様より

                 「諸君、帽子を脱ぎたまえ、天才だ!」

         −avantgarde TRIO+6BASSホーン試聴記―

1.ホーンスピーカー
2.avantgarde TRIOヒアリングレポート

FULLEPILOGUE試聴以来の2ヶ月ぶりのHAL訪問です。

前回のFULLEPILOGUE試聴後、「フルエピローグを超える規模のアバンギャルド
TRIOをまた聴きに来ます。」と川又さんにお約束して帰りましたが、その
システムをどんなふうに料理をしているのか、もちろん聴く機会のないシステ
ムの音を聞くためにも訪問しました。

その前に、お約束の前置きを…
急ぎの方は「avantgarde TRIOヒアリングレポート」へ

1.ホーンスピーカー
ホーンスピーカーのはじまりは・・・言葉を記録できるようになった当初の装置
(開発者はエジソンかベルか微妙)から記録した音を聞くためにホーン状のもの
が付いていたと何かで読んだことがあります。

これは、当初音を増幅する装置がなかったため、小さな音を耳で聞こえる程度に
大きくするためだったようです。そう、もともとスピーカーはホーンだったので
すね。それも、小さい音を効率良く大きくできる点がその後の小出力の真空管式
のアンプの開発に影響をあたえてきたと思います。

その後、映画の発展に伴い現在もあるようなスピーカーメーカーが誕生する、
一方、映画館で使われている大きなスピーカーを部屋に入れようとする一般の
人達が出てきます。しかし、高域は小規模ですが、低域を出すためには大きな
ロードをかける必要があるため巨大にならざるを得ませんでした。

この中には、壁をぶち抜いて専用の部屋や専用の家まで造る人達まででてきました。
このようなことから、部屋に入る大きさにするためには低域だけ別な方式として
ダイレクトラジエーション型スピーカー(現在の一般的なスピーカー)が使われる
ようになって来ました。

しかし、ここでも問題が発生しました。高域のホーン型と低域のダイレクトラジ
エーション型のスピード感、音色が合わないのです。しかたなく、電気的に調整
できるようにアットネーターやチャンネル・ディバイダー、イコライザーを付け
調整できるようにしました。

その後、ホーン特有の音色であるとか、大出力のアンプの開発がなされたことか
ら、世界的に見るとホーンスピーカーのシェアは徐々に減少していきました。

1997年突如、ホーンスピーカーにあこがれていたイギリス青年がアメリカに
渡り家庭にも入る超ど級のオールホーンスピーカーを開発しました。その人の名
は『フィル・ジョーンズ』、スピーカーの名は『Air Pulse 3.1(PLATINUM)』
(写真1)
http://www.dynamicaudio.co.jp/audio/5555/7f/op-pho/photo1.jpg


その構造をみるにつけ、そのアイディアと発想はまさにシューマンがショパンを
友人に紹介したときに使ったといわれる『諸君、帽子を脱ぎたまえ、天才だ!』
との言葉どおりのものを感じざるを得ませんでした。

その構造はオリジナルノーチラスを横に寝かせて真ん中にウーハーを上向きに付
け、バックロードホーンにより低域を出す一方、中高域ユニットは上向きに付け
られ円盤のようなホーンを挟んで360度方向に音を放射するようになっており、
さらにその上に先ほどと同じ低域用のホーンを下向きに中・高ユニットをサンド
イッチする形で載せている。

その音を聞いたのは、「輸入オーディオショー」改め「東京インターナショナル
オーディオショー」となった1997年9月、会場も東京国際フォーラムとなり
音響的にも改善があったが、『Air Pulse』の置かれていた部屋は幅122cm、
高さ183cm、重量400Kgが小さく見えるような大きな会場が災いしてか、
スピーカーの周りに音が漂っているような焦点のはっきりしない音であったよう
に記憶しています。

しかし、その構造、性能、当時ペア2000万円という価格等はオーディオ史上
に残るものであったと思います。
(以上は、過去の事実を個人的に解釈したものでご異論もあろうかと思いますが、
お許しくださいませ。)


2.avantgarde TRIOヒアリングレポート

『avantgarde TRIO+6BASSホーン』は『Air Pulse』以来の超ど級のオールホーン
システムであると思います。設計された構造、性能を見るにつけ、まさに、設計
者に敬意を表して「帽子を脱がざるを得ない」システムです。

実際に、試聴室にある『avantgarde TRIO+6BASSホーン』を見ると言葉を失いますね
(写真2)。
http://www.dynamicaudio.co.jp/audio/5555/7f/op-pho/photo2.jpg

『ど!でかい!』。
特に、『6BASSホーン』と称するアクティブウーハーの大きさと形状は。

前回のFULLEPILOGUEはもとより、先ほど登場した『Air Pulse 3.1(PLATINUM)』を
も上回る規模、見るだけでこれがどんな音を聞かせるのやら期待が膨らみます。

○演奏するシステム
Esoteric G−Os→Esoteric P−Os + VUK-PO→ Esoteric D−70→ HALCRO dm10→
HALCRO dm68
EsotericトリオにHALCROペアですか、日々進化しているようですね。
どんな音を奏でるのでしょうか。

○試聴ディスク
・The Best of CAROL KIDO/CAROL KIDより「AUTUMN IN NEW YORK他」
・シシリエンヌ/高木綾子より「ポンセ;エストレリータ」
・ザ・ラスト・レコーディング/ギュンター・ヴァントより「ブルックナー交響曲
 第4番・変ホ長調『ロマンティック』」
・プログレッシブ・デュオ/デュオ・ディ・バッソから「ロンド」
・アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクションから「you’d be so nice
 to come home to」
・Waltz for Debby/Bill Evans Trioより「Waltz for Debby」
・harem/SARAH BRIGHTMANより「harem」
・チャイコフスキーくるみ割り人形/ゲルギエフ指揮キーロフ歌劇場管弦楽団より
 「くるみ割り人形」
・LIVE IN PARIS/ DIANA KRALLより「A Case of You」
・ていだ/夏川りみより「涙そうそう」
・シベリウスヴァイオリン協奏曲/諏訪内晶子より「ヴァイオリン協奏曲ニ短調」
(ハイブリッドCD)
・メロディー/諏訪内晶子より「チャイコフスキー『なつかしの土地の思い出』」
と12曲もかけまくりました。疲れた(-_-;)

全体の印象は、良いも悪いもホーンスピーカーであることを実感しました。
ただし、写真を見ていただくとお分かりのように目の前1m程度のところに交差する
ようにavantgarde TRIOのホーンの向きを整えているためにボーカルはピンポイント
にそこに定位し、伴奏はその後ろに位置します。

オーケストラはその交差点からスピーカーの間に像を作り決してスピーカーの後ろに
像を作ることはありませんでした。

この特徴がダイレクトラジエーション型の従来のスピーカーと違って違和感を感じる
部分ですし、中央にある200Hz以下を再生する『6BASSホーン』とavantgarde TRIO
の設置方法を再調整したくなるようなディスクもありました。

これは、このような装置で再生されることを想定していないミキシングのあらを露呈
させたということだと思います。音質面から言いますとボーカルとジャズ系が気持ち
よく再生するように聞こえました。

ボーカルは今まで聞いたことがないようなピンポイント感、実態感、立体感、これは
ダイレクトラジエーション型では出ないだろう違う種類の生々しいものでした。

また、平成のケーブル王の寺島さんのジャズ喫茶「メグ」にavantgarde DUOを入れた
ように、ジャズの演奏は最高の実在感を示します。
今回聞いた中では特にアート・ペッパーのサックスはその楽器の構造上スピーカーと
合うのでしょうか実在感がもう最高でした。しかし、Waltz for Debbyのような
ライブレコーディングのものは直接音が気持ち良く出てくる一方、背景の間接音
は控えめでライブ会場にいるような雰囲気にはなりませんでした。

同様に、クラシックでも近接して録音された楽器の直接音は広大に迫力をもってすば
らしい再生をしますが、間接音は控えめな再生です。したがって、間接音の多い
ライブ録音のオーケストラでは思うような演奏ではなかったように聞こえました。

このように、良いところをとれば今までに聞いたことがないようなこのうえない生々
しい実在感が得られ、従来のスピーカーと違和感があるところをとれば気に入らない
ということになるのでしょうか。

川又さんは不在で確認が取れなかったのですが、わたしにはどうもボーカルとジャズ
またはポピュラーにこのシステムを合わせていたのではないかと思います。

(川又より:現在執筆中の随筆にてご説明いたしますので、ご期待下さい。)

再生するジャンルにより再調整すれば、新たな可能性も見えてきそうな感じが十分
する試聴結果でした。

最後に、Esoteric G−Osがせっかくあったので、健究所長に教えていただいてクリス
タルとルビジュームの差、同期信号の周波数の切り替えをしてみました。

その結果は、Esoteric G−Osを何で最初からルビジューム・176.4KHzのみの
商品として設計しなかったのか明らかな差のあるものでした。それ以外の条件は、
『この条件のすばらしさを知らしめるために付けてあるの?』と思えるほどすばら
しいものでした。

どのようにすばらしいかというと、クリスタルとルビジュームの差はルビジュームの
方が分解能があがり、塊であったものが分離して聞こえ、付帯音がすっきり消えて
一音一音が明確になるような質の変化があります。

しかし、高域や低域のバランスが変わるというものではないものでした。同期周波数
の切り替えでは高い周波数の方がクリスタルとルビジュームの差のような変化が聞こ
えますが、変化の度合いは比較して少ないように思えました。

あとは、確かにこのシステムの延長線上での変化とお金を天秤にかけることになるの
でしょうか。一度聞かれてみることをお勧めします。

最後まで、読んでいただきありがとうございました。
また、今回の写真は、ホーンがきれいに光を反射するためフラッシュを使ってみま
した。わたしは、引き伸ばして部屋に飾っています。
このようなご利用はいかがでしょうか。

by LUX FAN


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