《ESOTERIC 論文コンクール応募作品 Vol.3》


No.0120 - 2002/1/24

横浜市栄区在住 H・F 様より

「プロローグ」

僕はエグルストンワークス ANDRAというスピーカーを使っています。

ANDRAと聞いて、「ああーアレね」という方はかなりのマニアです。
そのマニアックなスピーカーに興味をもった僕は、秋葉原のどこのSHOPに
も置いていないANDRAを求めて川又さんのところへたどり着いたのでした。

そこで、私の持っていったマイスキー&アルゲリッチのJ.S.BACH チェロ
ソナタ第3番を聞いたのですが、出だしのマイスキーのチェロが出るや否や、
私の背中に”ゾゾッー”と寒気が走るくらいリアルで熱気ある、マイスキー
がそこにいるような感動をおぼえたのを記憶しています。

その3年後、ローンも終わり、そろそろ次の1手として、CDプレーヤーを
替えることを思い立ちました。 川又さんにメールで相談したところトラン
スポートはP-0sがおすすめとのこと。

うーん、あれって高っいしねー、DACもあるし...と最初は思ったものの、
だんだん心が傾倒していきます。

メールでやり取りした後、P-0s買おうっかなと思ったところ、もう売り切
れでないとのこと。うーん、こう言われるとますます欲しくなるのが人の常、
とりあえず音だけでも聞かせてもらおうと、3年ぶりに川又さんのところへ
向かったのでした。


「出会い 2000年10月」

川又さんの部屋に入ると、KRELL LAT-1がどーんとセッティングしてあり
ノーチラスは完全に真横を向いていました。

その日は自分のCDを持っていくのをうっかり忘れ、まぁ、とりあえず聞き
おぼえのあるCDを聞かせてもらおうと、小澤征爾&サイトウキネンオーケ
ストラのブラームス4番をえらんだのです。

第1楽章の最初の小節をオーケストラが奏でると、おおおっー、とうなる
ほどの迫力と解像度。

う〜ん、この盤はうちでも結構聴いているし、2ヶ月ほど前もコンサート
で聞いた曲なのですが、これほどのダイナミックレンジと解像度はコンサ
ートホールの客席では体験できないのではないか?

指揮者のみが体験できる音ではないかと思ってしまいました。

ここまでは、トランスポートにP-0s、DAC&プリアンプはKRELL KPS25sc
(3百数十万はするCDプレーヤーとプリアンプが一体になったやつ)で
聞いていたのですが、次に川又さんの提案で、KRELL KPS25scのDAC、プリ
アンプ部はそのままで、トランスポート部とP0-sとのトランスポート聞き
比べを行いました。

CDはお得意のヨーヨー・マのシンプリーバロックの1曲目、J.S.BACHのカ
ンタータからです。まずはKPS25scのトランスポート部から。

前奏がおわってヨーヨー・マのバロック・チェロがでてきます。さっきの
ブラームスとくらべ音色がウォーム(まぁ、BACHのカンタータですから)
小編成のバロックオーケストラですし解像度も特に不満もなくなごみます。

次に、トランスポート部のみP-0sにかえて、同じ曲。

ヨーヨ・マがでてくるまでもなく、前奏から解像度が全然違います。
ヨーヨー・マのチェロはといえば、やや枯れた音色のうーんこれがバロッ
クチェロかという、きりりと引き締まった音像が中央にしっかり浮かび、
このリアルさに3年ぶりに背中に”ゾゾッー”と寒気をおぼえました。

これはいったい何が起きてるんだろう?これが率直な感想です。

「不思議ですねー」と言うと、川又さんに「常識です」と言われました。

これでびっくりしてしまった僕は、勢いでP0sの購入予約をしてしまった
のでした...。

その日は1時間ほど川又さんのところにおじゃまをして帰宅をしたのです
が、うちに帰って早速、件のサイトウキネンオーケストラのブラームス4
番をかけてみました。

第1楽章の最初の小節をオーケストラが奏でると、なんじゃこれは?
というほどの解像度とダイナミックレンジのなさ。

昨日までは、まぁ不満はあるけどそこそこ気に入っていたので、これには
愕然としてしまいます。 1時間ほど川又さんのところにいただけで耳が
川又グレードに慣れてしまったようで、これはやばい!

う〜む...これは先が長そうです。


「再会 2001年3月」

P-0sを購入予約したもののいつ出来るかわからないとのこと、まあ1〜2
年は待つのか、それともだめかもという気持ちでしたが、以外と早く6ヶ月
待ちで我が家にP-0sがやってくることになりました。

箱を開けP-0sを取り出そうとすると、これが重い!

「パワーアンプじゃないんだから」というほどの重量です。

さっそくゾウセカスのラックにセッティングし音を出してみます。

1.シモネッティ マドリガル 古澤巌(vl)小林道夫(p)

 バイオリンの小品です。古澤巌のバイオリンはきりっとした佇まいで、
高音が気持ちよく伸びます。エッジの彫りが深くバイオリンの音像はぎゅっ
と凝縮されます。音場はステージの奥行が出てきます。

いままではデンオンのCDプレーヤーDCD-S1を使用していましたが、像の
周りにあった付帯音やバックグランドのノイズ成分がきれいに取り払われて、
CDを聞いているという感じがしないくらい自然です。

2.ベートーベン ピアノ協奏曲第3番 ポリーニ(p)ベーム&ウィーンフィル

残念なことにリファレンス・モード(サーボ量を最小にした音質重視の
セッティング)では音飛びが出てノーマル・モード(安定演奏優先のサーボ
自動セッティング)にして聞きました。
オーケストラがしなやか、コンサートホールでオーケストラを聴いたことの
ある人ならわかると思いますが、我が家でチェロ、コントラバスのふぁぁっと
した空気感のある低音を聴くことができました。

3.バッハ マタイ受難曲 小澤征爾 サイトウキネンオーケストラ

第1曲目の合唱で児童合唱団のリアルな声に背筋がゾクッとします。
それと東京オペラシンガーズの合唱はソプラノ、アルト、テノール、バスの
パートがどこにいるのかわかるようで、しかも部屋を包み込みます、これに
はまいりました。ソロ歌手も口元がしまり、上方にくっきりと定位します。

4.綾戸智絵 「life」よりYOZORA NO MUKOU

もうおんなじことをいいますが、バックグランドノイズや付帯音がなくなり、
CDを聴いているというより小さなライブハウスにいるようです。

5.浜崎あゆみ 「Duty」よりDuty

もうこれ以上、クラシックやジャズでは同じことを言ってしまうので、毛色
の違ったところからです。打ち込みのドラムの切れがよく、低音の制動が気
持ちいい。アコースティックギターが宙に浮かびます。よくこんなたくさん
の音を詰め込んだものだと感心。

いったいどれほどの人がこのCDにこんなに凝縮された音が入っていると気が
付くのでしょうか?アレンジャーやレコーディングエンジニアの手の内がさ
らけ出されます。

 まとめると、
・音像は小さくしまり、とっても繊細
・音場は見通しが良くなりSN比が上がる
・ダイナミックレンジが大きくなり、ピアノとフォルテの差をきっちり出す
 という感じで、DACはCDプレーヤーDCD-S1をそのまま使ってるというのに、
 この変化にはビックリです。

今まで使ってきたDCD-S1のトランスポートで聴くと、なんか懐かしい音、
ちょっと大げさに言えば古いアナログ録音を聴いてるような感じです。

しかし、こういう音の作り方は、こじんまりとまとまりがよく「なるほどぉー」
とかえって感心してしまいます。

こういう自己完結してしまう世界はきっと突き詰めると、LINNのCD12あたり
に行き着くんでしょうね。片やP-0sだけでは完結しない世界に足を踏み入れ
た僕は、怖いようなうれしいような、いやぁーヤバイですねー...


「聴きました!Esoteric D-70、そして...2002年3月」

2月13日-☆-H.A.L.'s Circle Review-☆-No.0278-で「じっくり聴きま
した!!Esoteric  P-70 & D-70 のパフォーマンス!!」と題したメールが川又
さんから送付されてきました。

ステレオサウンド誌では絶賛されていたP-70/D-70ですが、価格的に
言ってHALIIクラスなので、川又さんは興味ないのだろうと思っていましたが、
送られてきたレビューは結構好印象のようです。

P-0sの音に感激して勢いで買ってしまったのですが、さすがにDACまでは手が
回らず手持ちのDenon DCD―S1/CD PlayerをDACとして使ってきました。

しかし件のレビューを見て、これは一つD-70の実力というものを体験して
みなくちゃ、ということで、P-0sとD-70の組み合わせで聴かせて頂きました。

試聴のリファレンスはdCS−Purcell1394(130万円)'Elgar1394(260万円)
で、DSDにコンバートされています。ほかにクロックとしてクロノス+992II
が入っていますが、これは同期の仕方に差がありますがトランスポートのP-0s
は常に入っているので比較の上では相殺ということで対象からはずします。

ということでdCS390万円 対 Esoteric80万円の対決です。

最初はdCSからです。一聴してサウンドステージの広さ、奥行で圧倒されます。
オーケストラの分離、透明度ともにさすがで文句なしです。

次にEsotericですが...ほぉっー、なかなかいいです!!

さすがにdCSと比べるとサウンドステージは狭くなりますが、大きな差って
いうのはそのくらいでしょうか。他にも細かいところはありますが、それは
何回も聴き比べているうちに段々わからなくなってくる感じで、ブラインド
でやったら的確に指摘できるか自信がないくらいです。

片や390万円に対しEsotericは80万円なのですから、これは買いでしょ!

.....ということで買ってしまったのです...

普段はBESTBUY的なものには反応しない川又さんですら好印象を持ってしま
うのもうなずけます。


「さらなる飛躍に向けて2002年12月〜2003年1月」

P-0s〜D-70というフロントエンドになってから約8ヶ月、この時点でのライン
アップはトランスポート・P-0s⇒DAC・D-70⇒プリ・C290V⇒
パワー・MLNo.436L⇒SP・ANDRAということになり、気分はもう
HIGH END。

ふむふむと聴いてはいたのですが、なにかものたりない。

これだけお金をかけている割には?という気持ちが頭をもたげてきます。

これは10年来使っている自作スピーカーケーブルのせいでは?ということで
PAD ISTARUスピーカーケーブルとそのままでは少し音が薄いので、熱い音がす
ると評判のILUNGO AUDIOのインターコネクトanimato12sを導入したところ、
でたのです!

出てしまったというほうが正しいでしょうか?バッハの無伴奏バイオリンソナ
タで思い描いていたようなバイオリンの音がスピーカーのANDRAの上方にくっき
りと現れたのです。

もうこれでオーディオ趣味も上がりで音楽趣味一本でよいかと、一瞬思ってし
まいます。こういうのを「ハイエンド=はい終わり」というのでしょうか、
どこかのホームページで見たことがあります。

しかし、人間の欲望には限りがないものです。オーケストラなどまだまだ、と
いうよりこれ以上は部屋の問題でもありますが、更なる欲望が...

PAD,ILUNGOそしてzoethecusに脇を固められたESOTERICのフロントエンドは現在
最高のパーフォーマンスを発揮しています。

しかしまだまだ、これからP-0sバージョンアップさらには、もしD-70が外部
同期できれば2台でMONO仕様もできますよね、これってD-0コンセプトに一歩
近づくのでしょうか?

またHAL Iで聴いたdCSのフロントエンドで聴けるDSDアップコンバージョンの
音はまだ僕の心を捉えています。これをESOTERICのフロントエンドでも!
と思っている方もたくさんいらっしゃることでしょう。

そんなこんなでESOTERICのフロントエンドの無限の飛躍を夢見る2003年正月
なのでした。



HAL's Hearing Report