CDって、結構・・・優柔不断で音が変わる!?
確か、私の記憶ではCDが世に登場したのは1982年であったと思う。
デジタルなんだから“1”と“0”を読み取るだけなので、各社が作る製品もどれも同じような音になるだろう・・・、などと発売前には語られていた時代が今は嘘のようだ。
思えば、CDが登場してから、その音質を向上させるためのアクセサリーも多種多様なものがあった。 もっとも単純な実験としては、わざとCDを二枚重ねでCDプレーヤーに入れ再生してみると一枚を通常のように再生するのに比べて不思議と音質が落ち着いて聴かれたものであった。
これに類似するものとして、CDに同じ直径のゴムシートを乗せて一緒にCDプレーヤーにローディングさせるものやら、ディスクに薄いフィルムを貼り付けるものなど、 色々なことでCDの再生音に変化をつけることが出来た。
当時は「何でこんなことで音質が変わるんだろう? 」と首をかしげていたものだが、今となってはピックアップ・レンズを駆動するサーボシステムの影響であることが明らかにされているものだ。
その辺の基礎知識はぜひ私の下記の随筆を読み返して頂ければと思う。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto44-1.html

簡単におさらいすると、収束された直径1ミクロン程度のレーザー光線を照射する対象のピットが、幅0.5ミクロン、深さ0.1ミクロン、ピットの長さと間隔が0.3ミクロンステップで 0.9から3.3ミクロンという蒸着されたアルミのミクロの突起であるピットをサーボシステムが追随していくという想像を絶するミクロのテクニックなのである。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/pho/zu-44-1.gif

このミクロン精度のトレースを可能にしたサーボシステムは毎秒8.3から3.3回転という高速回転するディスクを非接触でトラッキングしている。
前述のディスクに何らかのスタビライザー効果のあるシート状のものを貼り付けるなどして、 ディスクの上下動のブレを緩和するということでサーボの働きを軽減しているので音質も変わったということなのだ。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/pho/zu-44-2.gif

つまり、機械的な操作によるCDの音質変化という事になる。これを製品にズバリ取り込んだのがTEACの“VRDS”であり、 それを水平方向の偏芯制御まで制御範囲を広めたのが『P-0s』ということになる。

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さて、機械的な仕組みによってCDの再生音に変化を起こすということはサーボシステムとの因果関係ということで理解できるのだが、もう一つCDの再生音に関わってくる要素がある。 これも『P-0s』を使用しておられるユーザーは簡単に実験が出来る。
『P-0s』のトップには丸いクリスタルガラスがはめ込まれているのだが、この丸い窓に何かでフタをしてしまったらどうなるか? ぜひお試し頂きたい。 つまりディスクを読み取るメカニズムの内部に外部からの光の侵入があったらどうなるか? 実はこれも音質を変化させる一要因なのである。

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/pho/zu-44-3-1.gif

この図解にあるように、ディスク上のピットはレーザースポットの反射光を拡散させてしまい、フォトダイオードに光が当たらない状態を作ることでピットの有無の判断を行い、 信号としての“1”と“0”を検出するのである。 そして、現行のCDフォーマットは毎秒30万個以上のピットをトレースして必要なデータをディスク上からピックアップするのだが、 当然その30万個以上のピットの検出の何パーセントかはエラーが発生し明確な“1”と“0”を検出できない場合もある。しかし、音は出る。
これはCDフォーマットの規格決定の中で採用された、Cross-InterleaveReed-Solomon Codeというエラー補正機能の大きな貢献なのである。 だが、音は途切れなくともエラー補正を使いすぎれば当然音質には変化が現れてくる。
ミクロンの仕事をしているピックアップ機構の内部に外乱光が侵入すると、 上記の図解で示している対物レンズの前後に波長の異なる光が影響を与えてエラー補正システムに余分な負荷を与えてしまうのであろう。
ただ、『P-0s』の場合には最終的な音質決定の際に、このような微小な変異があることを設計陣は承知している上で、クリスタルガラスをはめ込んだ音質を選択しており、 それは土台となるクォリティーを損なうレベルのものでないことからも、Esotericの音質決定として同社のアイデンティティーとして私は認めているものである。でも、音質は変わるが。
このように、機械的な要素と外乱光による音質変化の二つに加えて、実はCDには第三の音質変化要素があるのだ。

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これまでの解説でCDの内部にあるピットに対して、保護層の役目を果たすポリカーボネイトを通してレーザー光線を照射することはご理解頂けたと思う。
そして、実はCDの内部ではアルミの反射層とピットが乱反射して拡散してしまうレーザー光線が、 ディスク内部で数え切れないくらいの反射を繰り返しながら適当な入射角になった時にだけ外界に逃れていくという目に見えない過程がある。
つまり、ディスク内部ではレーザー光線が外界に出て行くまでは無数の反射光として内部を駆け巡り、そのうちの何パーセントかは外乱光と同様にピックアップの光学系に影響を与えているのである。
それに注目したメーカーがグリーンのマジックでディスクの内周と外周を塗りつぶしたり、ポリカーボネイトの表面に特殊なフィルムを貼り付けたりすることによって、 CDの音質を向上させようとするアクセサリーで注目を集めたりしていたものだ。
これらはディスクの末端で、ディスク内部で反射を繰り返していたレーザー光線に対して、 同様な波長の色彩で余分な反射光を外界に放出したり、吸収させたりという原理でピックアップの光学系の精度を高め、エラー補正の頻度を軽減させているという原理なのである。

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このようにCDの音質変化要素として大きく分けて三つのノウハウがあると言えるのだが、機械的な要素は『P-0s』に代表されるような高精度なメカの開発で解決できた。 そして、外乱光による音質変化については、設計者の感性で許容し個性のひとつとして商品化する傾向もある。しかし…。
どんなプレーヤーの設計者・メーカーでも完全に駆逐することが出来ない要素として、 ディスク内部における残響成分とも言えるレーザー光線の拡散された不要な光をどうしたらよいのか、これが難問であった。
ピックアップに影響を与えないように、サーボシステムに注ぎ込むサーボ電流のように、レーザー光線を弱めようとすればトレースに問題が起きる可能性もある。 逆にレーザー光線の出力を大きくしてトラッキングの安定化を図ろうとすれば、前述の“内乱光”が悪さをする…。
このプレーヤー設計者にとって、さじを投げたくなるような問題に対して、私は画期的な手段を発見したのである!!



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