発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナ5555 TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556 H.A.L.担当 川又利明 |
No.937 「H.A.L.'s One point impression!!-驚きの低域ESOTERIC G-01の音!!」 | |
今年はH.A.L.を設立して20周年となった。その当時は随筆を印刷して郵送し、 月に一度のペースで執筆と試聴会を行っていたものでした。今と比べると何と 良いペースだったことだろう…と思ってしまう。 お陰様でH.A.L.に持ち込まれる新製品の数とグレードは20年の間に大きく変化 して、一つの商品に一ヶ月間という時間をかけて聴き、分析して随筆として まとめていくいうことなど到底できないあり様になってきた。嬉しい悲鳴(^^ゞ 本来ならばいの一番でかじりつきたい新製品ESOTERIC G-01も大型スピーカーと 高級アナログプレーヤーなどの導入に押し流される形で、展示してから三日目 にしてやっと試聴する事が出来た。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20120701/G-01.jpg 2012年5月23日「ESOTERIC新世代Master Clock Generator G-01本日発表!!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/922.html そもそも五年前にG-0Rbが発売になった際に、実は試作品が当フロアーに持ち込まれ、 前作のG-0sとの比較試聴を行って私は二回ダメだしをしたものだった。 当時と比べて現在のH.A.L.のリファレンスシステムのグレードは数ランク高く なっているものだが、今回は下記のシステム構成で五年前と同様に前作のG-0Rb との比較を行うために、わざわざESOTERICにG-0Rbも同時にお持ち頂いた。 G-01の実物を見て先ず驚き意外に思ったのは、何とMaster Clock Generatorと いう製品で底部に輸送用ロックネジがあるということ。ずっと以前の同社の CDプレーヤーやPhilips製メカのCDプレーヤーなどでは同様な輸送用ロックネジ があったが、何でMaster Clock Generatorに必要だったのか? 皆様もお気付きかもしれないが、G-01はG-0Rbの18Kgに対して、何と13Kgと 軽量化されている。シャーシー構造が一新され高さが低くなっていることが 一因なのだが、ボトムプレートの厚さが5mmから2mmに変更されている。 この部分で約3kg軽くなっているという。 そして、輸送用ロックネジを外すということはどういうことなのか? つまりは 固定していた部分を緩めたり開放したりということで、ルビジウムモジュール をフローティングさせたのではないかと推測されるだろうが、そこが違う! つまり、いわゆるクッション材は一切使っていないというのだ。ESOTERIC開発 では色々と試した結果、緩衝材を入れたとして、それぞれのキャラクターが あり、最終的には輸送用ロックネジがねじ込まれる鉄製のシャフトでボトム プレートに接地させたという。その状態で、ルビジウムは高さ方向で約0.5mm 程上下できるような構造で、ルビジウムモジュールは自重+ヒートシンクの 重さで自然に置かれているような状態を作りだしたというのだ。 前作ではそのようなknow-howはなかった。世代交代にふさわしいカタログでは 語られない秘密の一端を紹介しておく。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- そして、今回使用したスピーカーSonus faber“Aida”が活躍した!! http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/899.html http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/903.html システム構成は次の通り。 ■Speaker system:Sonusfaber“Aida” (税別 1ペア \10,000,000.) http://www.noahcorporation.com/sonusfaber/SONUSFABER.html ■Power amp:soulution Mono amplifier 700 (税別 1ペア \12,000,000.) http://www.noahcorporation.com/soulution/700.html ■Pre amp:soulution Line amplifier 721 (税別 \3,250,000.) http://www.noahcorporation.com/soulution/720.html ■ESOTERIC P-01+VUK-P01 & D-01+VUK-D01(税別 1セット \5,000,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/index.html ES Link用AESデジタルケーブルとしては下記を使用 7N-DA6300 MEXCEL XLR (1.0m×2本:生産完了)(税別 \560,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7nda6300/index.html ■Master Clock Generator からのクロック用BNCケーブルは下記を使用 7N-DA6100 MEXCEL BNC(1.0m×1本:生産完了)(税別 \240,000.) ×3本 http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7nda6000/index.html#7nda6100 ■ESOTERIC G-01 vs G-0Rb http://www.esoteric.jp/products/esoteric/masterclock/index.html -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 以上のシステム構成でクロック用BNCケーブル3本を一曲ごとにG-01とG-0Rbに つなぎ換えるという地道な繰り返し。また、ここでのMaster Clock Generator からのワードシンク出力周波数はG-0Rbの最大値でもあり176.4KHzとしている。 この設定で三本のケーブルをいちいちつなぎ換えしていく。 骨が折れるがそれしか方法はない!! 選曲は私の課題曲として通常CD二枚とSACD二枚の下記のディスクを使用した。 最初にG-0Rbを聴いて音質を記憶して、G-01に切り替えるという順番。 ただし、合計四枚のディスクを確認のために反復して聴き直すので全部で10回 以上のつなぎ換えを自分一人でやりながらの試聴だから時間がかかる。 しかし、得るものは大きかった!!最初の選曲はこれから… ■Michael Buble のCrazy Love(Hollywood Edition) 1.Cry Me A River。 http://wmg.jp/artist/michaelbuble/WPCR000013987.html そもそも今までずっとG-0Rbで聴いてきたので何の不満もない。 “Aida”のネーミングにはふさわしくない男性的なイントロが始まる。 低音階のブラスセクションとドラムが強烈なリズムを刻みながら、スタジオ ワークで付加されたリヴァーヴが広大な音場感を展開する。いいねー!! “Aida”のチャームポイントである中空に浮かせるようなヴォーカルの定位感 が素晴らしく、この先に何があるのか…と聴き馴染んだ音質をさらっと記憶に 刷り込んでから席を立つ。BNCケーブル3本のつなぎ換え…、良い屈伸運動だ… と思っていたのは最初だけ(笑)さあ、三日間バーンインしておいたG-01だ!! 「ちょっと待てよ!! これ違うかも!!」 先ほどの音の残像は左右“Aida”の音源位置から周辺に向けて拡散していく リヴァーヴの在り方と各楽音の音像、そしてヴォーカルのフォーカスと多様な 再生音をビジュアル化して記憶していた私のファイルにG-01の音が重ねられた。 違う、確かに違う!! まずイントロで発せられた低音階のホーンセクションの余韻感が長い!! ドラムの瞬発力がアップしていて立ち上がりが高速化しているぞ!! Michael Buble のヴォーカルが入って来ると数秒間の私の観察が分析結果と なって頭の中のプリンターから弾き出されてくる!!やはりそうか!! 「いや〜、参ったね! マウスサイズがちっちゃくなっているよ!!」 ビックバンドの伴奏における相違点を引き継ぐ形でヴォーカルの質感も同様に 変化していることが確認された。マニュアルでカメラのレンズを回して被写体 のフォーカスを合わせる。G-0Rbで聴いてきた時は、こうこれでジャストだろう と思っていたのに、手首を固定しておいて指先にちょっとした指令を送って ごく僅かにレンズを調整すると更に被写体の鮮度が上がったと実感される!! そうそう、そもそもクロックの精度が高まると示す変化の方向性はこれだった。 いや、精度は同じルビジウム発振器なのだからPLLの精度が高まったのか!! G-01は出力周波数を変えてからロッキングインジケーターが点滅から点灯へと 安定するまでに1分もかけている。これだな! G-0Rbとの対比で明らかな音像の収束化、余韻感の向上。 そうそう、Master Clock Generatorの使用で得られる音質変化の基礎項目が ずんと数ランク向上しているのが一曲目で確認された。続いては… ■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章 小澤征爾/ボストン交響楽団 スタジオ録音で施されたリヴァーヴの拡散領域が拡大されるという美的変化を 確認したら次はオーケストラだ。またまた椅子とラックの裏を往復する作業を 繰り返し、私の定番のテスト曲を聴き始める。 音像の縮小は解像度の向上と同意語であるのだが、それは余韻感の増加という 連鎖を伴わないと痩せた再生音となって魅力を欠いてしまう。先ずはG-0Rbで 聴いて比較のための土台を“Aida”のある空間に設定し、ステージに並ぶ 各パートの位置関係と質感を念入りに記憶に刻みつける。さて、切り替えだ…。 「お〜! これはいい!! オーケストラの全員が黒い正装から着替えたようだ!」 弦楽器が発する音色の種類が増加している。これを説明するのに再度の引用と なるが、下記のイメージほど伝えやすい例えはないだろう。 「Everything You Can Imagine Is Real」-想像することができるものはすべて真実- かのPablo Picassoの言葉です。そしてこれをご覧下さい。 http://www.facebook.com/photo.php?fbid=383009438423910 facebook「Shaman Medicine Womanさんの写真」より G-01はオーディオ信号の伝送には直接携わっていないにも関わず、結果的に D-01から出力されるアナログ信号に多彩な表現力を与えるという意外性!! 弦楽器群における色彩感の増加という情報量の拡大は当然管楽器にも通じる。 スタジオ録音でも感じたピンポイントの音源から発する管楽器の余韻感は 左右“Aida”の両翼から更に外へ、そして高みへと管楽器の響きを広げた!! これまでに体験してきたMaster Clock Generatorの追加、または更新という ワードシンクのクォリティーアップ、いや基準信号の精度を伝達するPLLの 質的向上が再生音にもたらすものは音楽の鮮度を高めるという言葉で締めくくり が出来るだろう。これは聴いて頂くしかない。そして、何よりも嬉しいのは ESOTERICのフラッグシップであるP-01+VUK-P01 & D-01+VUK-D01の音質を更に もう一段階向上させることが出来たという事だ!! VUK-P01とVUK-D01を搭載してから4年が経過し、これで成長はストップして しまったのかと諦めていたP-01とD-01を更に磨き上げることが出来るとは!! これは私も嬉しい!! しかし、これで終わりではなかった!! ■山岡未樹「I'm a woman,Now-MIKI-」3.It Could Happen To You http://mikiyamaoka.maiougi.com/page6.html SACDでも比較しようと、高音質でありシンプルな演奏、そして素晴らしい ヴォーカルということで、この曲をかけることに。またまた配線変更…、 しかも一曲ごとに確認の意味で聴き直ししているので回数も多い。 もはや屈伸運動が心地いいとは言えなくなってくる回数となってきた。 イントロは荒川康男のベースとデュオ、前田憲男のピアノが間奏にはいり 山岡さんのヴォーカルが生き生きと響き渡ります。さあ、聴き馴染んだ曲を しっかりと記憶に刻んで、再度配線を切り替えて椅子に戻ってきました。 でも、そんな苦労はあっという間に報われたのです!! 「おいおいおい!!そんなはずないだろう〜これは常識からかけ離れてるよ!!」 何を一人で騒いでいるのか、というとイントロのウッドベース、どうして こんなに引き締まってしまうのか!! Master Clock Generatorによって音場感が拡大することは何度も述べてきたが、 それは高域の微細な信号、そんな浮遊感とも言えそうな漂う余韻をイメージ しているのが普通だが、なんとなんとベースの音像をきりりと引き締め、その 音像の中身というべき質感に濃厚な重量感をもたらすなど誰が予想したこと だろうか!? いやはや、私は呆れてしまいました。 こんな低域をG-01という存在がもたらすとは!! 正直なところ同じ発振精度のルビジウムモジュールを搭載しているのだから、 G-0Rbと同価格にしたG-01で…何が、どこまで出来るのかという予想に関しては、 五年前の経験から半信半疑だったというとお叱りを受けるかもしれませんが、 こんな低域に大きな変化をもたらすということは私の経験でもなかった!! 更に、山岡さんのヴォーカルのマウスサイズはMichael Buble の時のように きゅっと引き締まってくる。SACD特有のなだらかに拡散し消滅していくまでの 余韻の時間軸が延長されるという特徴が鮮明に聴きとれるようになる!! 78歳とは思えない前田憲男の軽快なピアノはヴォーカル同様のフォーカスの 鮮明さを加味し、絶妙な指先が鍵盤の上を転がるように展開する快感がいい!! 時折ペダルを踏まずにロングトーンをすーっと引き延ばす余韻は先ほどよりも 増量し、ピアノだけで創造する音場感が心地良く広がっていくのに見とれる!! 今までの大編成の録音とは違い小編成のピアノトリオとヴォーカルというSACD の魅力がMaster Clock Generatorの変更によって数ランク引き上げられると いう事実を目の当たりにして、H.A.L.のリファレンスはこれだという確信が 私の頭を占領してしまったようだ。それでは、最後に上記とは全く異なる ジャンルのSACDでダメ押しの確認をしよう!! ■「image:イマージュ」SRCR-2561/SACD/2000.8.23 http://www.sonymusic.co.jp/Music/Arch/SR/image/index.html もう12年前のものですが、今聴いても素晴らしい!!情熱大陸を見ていて ナレーションは城達也かと思ってしまう人は多いと思います。 http://www.mbs.jp/jounetsu/ 私もそう思っていたのですが、実はこの人、窪田 等⇒ http://goo.gl/Rcp6N 他にも実に多くのナレーションをしているのには驚きます。このディスクの 2トラック目、葉加瀬太郎の「Etupirka」をSACDで比較することにした。 三本のBNCケーブルの差し替えで席を立ち、G-0Rbで先ずは間違い探しの一枚目 の絵のように、今まで何回となく聴いてきた「Etupirka」のイントロから最後 まで忠実に頭の中のトレーシングペーパーに書きとめていく作業を済ませる。 さて、またまたケーブルの差し替え…。途中で聴き直した曲もあり、一体何回 やってきたか覚えがなくなってきた。さあ、今度はG-01だ!! 「おー!!やっぱりそうだよなー!もう予測出来るようになったしまった!!」 “Aida”が放つ余韻の芳香が心地良く空間を満たし、その中にイントロの男女 コーラスが先ず私の目に留まった。間違い探しの第一のポイント。 コーラスの個々の口許の位置から広がっていくリヴァーヴは直前よりも長く 広がるという変化を真っ先に検知した私の耳は、その声の質感そのものも ふくよかに微妙な違いがあることを聴きとっていた。 センターの奥行き方向から“Aida”のサブウーファーがここぞという活躍を 見せてベースを響かせるのだが、音階は同じでも比較すると音色が異なる。 G-01で先ほど感じたウッドベースの変化はエレキベースでも同傾向の変化と してあるのだが、今度は音像の輪郭ではなく音色の濃厚さ重厚さとなって 第二の間違い探しの回答をストンと見つけることが出来る。いや、参った! 葉加瀬太郎のヴァイオリン、ヴォーカルのマウスサイズと同様な変化があり、 演奏者のプロポーションをスマートに見せる。間違い探し第三の答えだった。 「おいおい、葉加瀬太郎がダイエットしちゃったよ!!」 お馴染のメロディーを左右“Aida”のジャストセンターの中空に浮かび上がらせ、 オーケストラの弦楽器で感じた色彩感の増加をヴァイオリンソロで見せつける。 これには思わず唸ってしまった!!この変化の在り方を述べると、どうしても 上記と同じ引用になってしまうが、弦楽器とはここまで多彩な音色を出すもの かと脱帽の思いで大好きな「Etupirka」を最後まで聴き続けてしまった。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- もう配線の切り替え作業でそろそろ膝がしびれてきた。しかし、想像以上の 進化を見せつけるG-01だが、残念ながら以前のG-0シリーズのようにバージョン アップは出来ない設計になってしまったようだ。だが、それにも増して同社の 歴代プレーヤーシステムの愛用者を喜ばせてくれる進歩が実はあったのだ! 価格は据え置きと言えども135万円である。当然、この価格のMaster Clock Generatorを選択しているユーザーが使用しているのはP-01&D-01などの セパレート型CD/SACDプレーヤーのオーナーたちだろう。 そして、P-01&D-01に対して入力できるワードシンクは176.4KHzまでが限界で あり、最近話題となっている10MHzや22.5MHzなどはESOTERICの最新モデルで ないと対応していないのであった。しかし…、ここから重大発表です!! ★webサイトや雑誌、また取説にも書いてありませんが、実はP-01は10MHzが入ります!! これを私は今まで語る事はありませんでした。なぜか…!? 「ESOTERIC G-0 / G-0d / G-0sから10MHz出力を取り出す方法!!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/876.html このように私は色々な取り組みの可能性を研究してきたものですが、10MHzの 出力は1系統のみで専用となり、設定変更後は44.1KHz〜176.4KHzの通常の ワードシンク出力は出来なくなりますのでご注意下さい。と述べています。 つまり、P-01に対して10MHzの入力が出来ても、D-01に対するマスタークロック の供給が出来なくなってしまい意味がありません。 ESOTERICのフラッグシップであるP-01&D-01に対して、これまでの同社Master Clock Generatorでは176.4KHzまでしか供給できなかったのです!! しかし、G-01ではA.B.Cの各々二系統で合計六系統の出力周波数を単独で選択 出来るようになり、そこに10MHzと22.5MHzも設定されたのです。また最新機能 として、六系統をA1/A2.B1/B2.C1/C2として完全に独立して出力周波数を選択 出来るようにもなりました。 つまり、P-01に対してA出力で10MHzを、D-01に対してはBとCから176.4KHzを 出力するという芸当が出来るようになったのです!! P-01&D-01オーナーの皆様に対しては何とも素晴らしい拡張性ではないですか!! ■P-01のディスプレーには燦然と「WORD 10M」と表示されるようになります!! そうです、今度はケーブルのつなぎ換えなしで比較試聴が出来るのです!! 凝り性なのか物好きなのか!? 私はP-01に対して176.4KHzと10MHzの比較試聴を 最後にやらなければG-01の真価を極められないと思っています!!では… -*-*-*-*-*-*-*-*-*- P-01に10MHz(TTLレベル)を入力する場合はG-01のA/B/Cからの出力を使用 してください。10MHz専用出力からの信号は出力レベルが小さいのでP-01で ロックできません。とのこと。 さて、それではG-01のA出力のスイッチを押すと、OFF/44.1/88.2/176.4/22.5MHz/ 100KHz/10MHzと順番に変わっていきます。先ずは前例のように176.4KHzで 課題曲を聴き、次に10MHzに切り替えて比較するという試聴を開始しました。 ただし、私は音質優先でP-01&D-01のディスプレーを全て消灯しているため、 G-01の出力周波数を切り替える度にP-01のみディマーを切り替えてディスプレー を表示させ、P-01のロッキングインジケーターが点滅から点灯へと変わり、 「WORD 176.4」と「WORD 10M」がしっかりと表示されてから再度ディスプレー を消灯するという手間暇をかけて切り替えていきます。 最初に176.4KHz、次に10MHzで課題曲はどのように変化するだろうか!? ■Michael Buble のCrazy Love(Hollywood Edition) 1.Cry Me A River。 http://wmg.jp/artist/michaelbuble/WPCR000013987.html 冒頭のタンギングをしっかり利かせて炸裂するような低い音階のホーンセクション の合奏と、それに同期したドラムは圧縮された空気が瞬間的に噴き出すような 勢いで奏でる瞬発力と飛び散るような余韻感が印象的な数秒間。 しかし、P-01というトランスポートだけにも関わらず10MHzに切り替えた時に 起こった事は、このスタートダッシュの立ち上がりの高速化だった!! A4コピー用紙を五枚左手でつまみ、それを右手の人差指で弾くと「パン」と いう音がするだろう。五枚重ねの厚みと五枚の紙がバラバラに弾かれた音。 ところが、10MHzに切り替えた瞬間から、弾く紙は一枚だけという状況に変化する。 人差し指を親指で押さえてちょっぴり力を蓄えて、白い紙の中心部を狙って 指の爪が「パシン!!」と紙を叩く瞬間をイメージして下さい!! 切れ味鋭く響くブラスセクションとドラムは中空に解放された喜びを残響で 表すかのように、1725mmという高さにある“Aida”のLyre shapeガラストップ に反射しているかのように天井へと余韻感が駆け上がっていくではないか!! 楽音の鮮度が向上したという証なのだろうか、イントロで格差を見せつけて 更にヴォーカルが入って来ると音像サイズが引き絞られているのがわかる!! 今までの再生音は薄いラップで覆われていたのではないかと錯覚されるような 鮮明な描写が数分前の音の記憶を上書きしていく快感!!いやー実にいい!! 高速反応のリズムセクションと、微細な響きの襞を積層化されるストリングス も10MHzの威力をまざまざと見せつけるかのようだ!! 微妙な違いとして片付けるのか、新たな真価としてときめきながら聴くのか? その選択は皆様にお任せするとしても、ESOTERICのフラッグシップモデルに 新たな血を注入してくれた喜びは大きい!! 何と言ってもH.A.L.のリファレンスプレーヤーなのだから!! ■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章 小澤征爾/ボストン交響楽団 比較試聴は間違い探しの二枚の絵を見較べるようだと前述したが、この時の マーラーは瞬間的に176.4KHzと10MHzの違いを見抜くというよりも慎重さを 私に要求してくるような比較だった。なぜか、もともとの176.4KHzでも素晴 らしいのだから。 二枚の絵画を見較べて、こことここの色と形が違うとポンと指摘できるような 低レベルの音質比較ではない。私は四回聴き直して納得した! 先ず冒頭の弦楽器群の合奏では連なる演奏者の個々が発する楽音を更に細かく 細分化するような弦楽器奏者一人ずつの音色の違いを聴き手に知らせてくる。 これは前述の例えで絵筆の多彩な絵の具の色彩感というイメージで表現したが、 その絵筆を布地のキャンパスに当てて色を乗せるというよりも、この時の印象は プリンターの写真用光沢紙のような極めて滑らかな紙面に筆を当てたような ビジュアルをイメージしたものです!! 多彩な幾種類もの絵具はあるところでは混じり合い、あるところでは原色を そのままに残し、一色を演奏者一人に例えるように、ハーモニーの融合と 演奏者個々の微妙な音色の違いを、“Aida”のボディーの繊細で美しい木目 仕上げのように調和させながら空間に放って行くのである!! ため息が出るほどの艶やかな弦楽器の中に、これほど多くの情報が含まれて いたということを聴かせてくれるソースコンポーネントの使命として、10MHz を受け入れたP-01が生き生きと描くオーケストラに聴き入ってしまう。 その弦楽器に埋もれることなく個々の音源位置を中空にしっかりと描きとめた 管楽器のディティールの鮮明さは比較するのが容易だった。同時にトライアン グルの打音という光点の輝きを強め、音場感の中に発生した光のホットスポット を見てしまった私の網膜に、数瞬の残像を気持ちよく残す解像度に舌を巻く!! “Aida”で聴くオーケストラに新しい可能性を提供するP-01+10MHzを、他の スピーカーとシステム構成で聴いたらどんな展開が待っているのか…!! ぞくっとする感動を私は記憶にたたみ込んでファイリングしていった。 ■山岡未樹「I'm a woman,Now-MIKI-」3.It Could Happen To You http://mikiyamaoka.maiougi.com/page6.html またまたP-01のディスプレーを点灯させ「WORD 10M」とロックしたことを しっかりと確認して聴き始める。どうしてもイントロのウッドベースの違いに 先ずは私の耳のセンサーがピンと反応してくる。「うん、間違いない!!」 上記におけるG-0RbとG-01との比較でウッドベースの音像の引き締まり方が 変化したという驚きがあったが、今回はイントロのベースのソロが始まった 時に演奏空間のスケールが倍化しているということに気が付く。 どういう事かというと、ウッドベースの弦をピッチカートしてからの開放弦の 唸るような響きは引き締まって重量感を増しているという傾向はそのままで、 ベース指板に指が当たり弦も触れるという個体感のある音が発する残響が長く 空間にとどまっており、それが消滅するまでの時間軸が延長される事で“Aida”が 放出した楽音が見せてくれる仮想音響空間が実に広く感じられるのである!! 山岡さんのヴォーカルが入って来る。「うん、間違いない!!」やはりそうだ!! 10MHzを入力してからというもの、低域だけでなくジャストセンターの空間に 浮かぶミニマムサイズの唇から周辺に広がる声量が実に鮮明になり、同時に… そう、他の曲でも感じたことなのだが、10MHzに換えてからアンプのボリューム を1dB、あるいは1クリックと微妙に音量が上がったかのような錯覚が何度となく 感じられていた。その正体はボリュームアップではなく空間のスケールアップ だったのかとはたと気が付く!! 前田憲男のピアノが入ってきた。おー!!やっぱりそうだ!! 軽快な指先の動きをクローズアップしたカメラアングルから次第に引いて、 ステージの様子までが視野に入って来るように、ピアノの余韻感も長い…、 そして広がっていく!! これはいい!! ■「image:イマージュ」SRCR-2561/SACD/2000.8.23 http://www.sonymusic.co.jp/Music/Arch/SR/image/index.html これまでの三曲は各々一回ずつではなく、実は冒頭の一分程度をリピートして 聴き直すという作業を何回も繰り返しながら私の頭の中に新しいファイルを 作り記憶してきた。それを繰り返していくうちに変化を予測出来るようになる。 イントロのコーラスはどうだ…、ベースはどうだ…、パーカッションはギターは!! 大編成の演奏によるCD二枚、小編成ジャズのSACD一枚、そしてスタジオワーク でじっくりと多様な楽器を空間にちりばめたこの曲。でも、予測できなかった ものが葉加瀬太郎のヴァイオリンだった!! 音像の縮小化ということは何回も述べてきたが、この時は既に当たり前のこと として予測した音像の輪郭表現と解像度の素晴らしは解っていた。しかし… まあ、何とヴァイオリンの質感と音色がチャーミングなことか! いや、これは楽音の甘さ、甘露というべきかもしれない心地良い摩擦音が出て くるようになったのだから堪らない!! 音楽を磨く…、ふとそんな言葉が頭に浮かびながら聴き入ってしまいました!! 普段何気なく聴いている音楽、あるいは精魂込めた再生システムでハイファイ を追求して聴いてきた音楽。新鮮だと思っていた音なのに実は数ミクロンという 極めて薄い透明なラップで包まれていたものを聴いていたのではないかと思う。 いや、P-01+10MHzで聴き始めたら、そう思い始めてしまった!! 私が未だにディスクプレーヤーに重きを置いているという理由は何か!? まだまだ絞り出していない感動のエッセンスが、今私が手にしているディスク の中に含まれているというロマンがあるからに他ならない。 P-01のメカVRDS-NEOは下記のように誕生してきました。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto52-01.html その最終項をぜひもう一度ご覧下さい。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto52-04.html そこには次の一節があります。 「数年先にこれを読まれた皆様へ VRDS-NEOは2003年にこのように誕生したものでした。 そして、今でも現役として○年間もトップの座をキープしているものです。 どうぞESOTERICの中から安心して気に入られたプレーヤーを選択してください。 何年たっても、多分同じことをしているであろう私から、未来のお客様に メッセージをお届けして今回の随筆の締めくくりとさせていただきます!! ありがとうございました。 」 9年前の私の言葉でした。本当に相変わらず同じことをやっています。 そして…、8年前に発売されたのがP-01です。 http://www.dynamicaudio.jp/file/060906/oto-no-hosomichi_no53.pdf この随筆の35Pに下記の一節があります。お時間がありましたら再度お読み 頂けると何よりかと思います。 「柔軟な発想をする有能な若手のエンジニアとチームワークによって、彼らの 技術力と感性による判断に妥協を許さず嘘をつかせず、これまで世界中に 存在していなかった素晴らしいものを作り出そうという執念があったから こその結果である。だからこそ、ここに「挑戦への勇気」があったと言えるのだ。」 ゴールが解っているものを作り上げるのではなく、存在しない未知のものを 作り上げていく「挑戦への勇気」というのはロマンではありませんか!! またまたESOTERICがやってくれました。そして、私の使命とは… 「そして、次は私にも同様な挑戦をするという順番が求められてくる。 ESOTERICが情熱と執念で作り出したP-01 & D-01を開発した彼らが知らなかった 素晴らしいパフォーマンスを引き出し実演し証明するということだ。」 そうです、私の役目は素晴らしい食材を使って素晴らしい味を調理して皆様に 味わって頂く事なのです!! さあ、忙しくなってきます!! |
担当:川又利明 |
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556 kawamata@dynamicaudio.jp お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!! |