発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナ5555 TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556 H.A.L.担当 川又利明 |
No.899 「H.A.L.'s One point impression!!-Sonus faber“Aida”- Vol.1」 | |
「音響的改装を行ったH.A.L.は音も景観もリニューアル!!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/890.html 上記の改装を行ったのはSonus faber“Aida”を迎え入れるためだった。 左右The Sonus faberの中間背後の壁面にDiffractalをセットしてあったが、 この正面に右チャンネルスピーカーの片側を配置すると左右均等にならない。 “Aida”の左右両方の背後の壁面もDigi-waveに統一すべき準備だった。 そして、2012年2月3日、遂に“Aida”がやってきた。 http://www.dynamicaudio.jp/file/120204/aida01.jpg http://www.dynamicaudio.jp/file/120204/aida02.jpg 左右スピーカー主軸つまりトゥイーターの間隔3.6m、センターポジションに 正面を向けリスニングポイントから“Aida”のフロントバッフルまで4.6mと、 セッティングはThe Sonus faberと同じトライアングルを構成する。 そのセッティングが完了し標準展示のスピーカーたちの配線を終わったところで 同社の主任技術者Paolo Tezonと株式会社ノアの代表取締役社長 野田頴克氏が やってきた。一曲聴いてはPaoloに質問し、また次の曲を聴き始める。 そんなひと時であったが、Paoloから引き出した情報は多岐にわたり、全てを 一度に紹介するのは困難というもの。私が“Aida”の第一印象から最も注目 すべきポイントを順を追って述べていくことにする。その第一弾はこれ!! http://www.dynamicaudio.jp/file/120204/aida03.jpg ミッドレンジドライバーはSonusfaberのオリジナルデザインだが、それよりも 私の目を引いたのはトゥイーターだった。正面から見ると垂直に直線だが、 斜めから見るとこのような↓構造物がダイヤフラムの前面に取り付けられている。 http://www.dynamicaudio.jp/file/120204/aida04.jpg 彼らはこれを「アロー・ポイントDAD」とネーミングした。なるほど弓矢の イメージだが、弓をつがえるところに小さな砲弾型の金属が取り付けられている。 ははぁ〜、これは他社でも良く見かけるフェイズプラグなんだろうかと思った。 20KHzの波長は17mm、“Aida”の高域特性は35,000Hzまで伸びているので、 最高域での波長は約9mmとなるので、その帯域の位相整合を狙うのであれば 頷けないサイズではない。しかし、それにしては小さい…。 これはフェイズプラグかと私はPaoloに尋ねると違うという。DADとはDamped Apex Domeの略だという。なに!?ダンピングしているだと…!? http://www.dynamicaudio.jp/file/120204/aida06.jpg 角度を変えてみてみると↑このようになっている。このトゥイーターは29mm 口径のSonusfaberが、というよりもPaoloのアイデアで開発した独自のもの。 シルクコアのソフトドーム・トゥイーターである事は見れば分かるが、この私 でも初めて見る独特のもの。 トゥイーターダイヤフラムの前にフェイズプラグを取り付けているものは JM LabつまりFocalのトゥイーターなどに良く見られるもの。しかし、Paoloに 言わせると砲弾型の金属の形は単なるデザインでありダンピングとは関係ない というのである。では真横から見るとどうか。これではっきりと分かる!! http://www.dynamicaudio.jp/file/120204/aida05.jpg Paoloは以前のスピーカーでソフトドームの頂点部分の厚みを増して強度と 質量を部分的に高めるということでDADのヒントとなる実例を作り出していた。 写真で分かるように中心の砲弾型金属とソフトドーム・ダイヤフラムの中間に グレーの発泡体が見えるが、これは特殊なスポンジのような素材だという。 このスポンジがドームの頂点にタッチしていることでダンピングしているのだ。 私は接着しているのかと聞くと、それではダンピングする事にならないという。 極めて精密な設計と工作精度によって触れているだけというのがポイントだ。 私がトゥイーターをダンピングするという目的は何だ、とPaoloはノートのペン を手にしてグラフを書き始める。私はこういう人好きです(笑) リングラジエーター方式のトゥイーターのオンアクシス(主軸正面)の周波数 特性はこうで、オフアクシスで角度がずれていくとこうなると書き始める。 そして、一般的なドーム型トゥイーターでは同様に指向特性はこうなる…と、 熱弁をふるいながらグラフを書き続ける。そして、自分が考え出したDADの トゥイーターでは両方式のデメリットを排除してこういう特性になるんだ!! と更にグラフのカーブを書き加えていった。 はは〜、そういうことか!!ダンピングという言葉からイメージするのは不要な 共振があるから、それを抑制するためにダンプするのかと思ってしまうが、 実はそうではない。DADの目的はトゥイーターのダイヤフラムの正確なピストン モーションに対してメカニカルな制約を加えることなく、超高域の指向特性を 改善することにあるというのだ。 ダイヤモンド・トゥイーターなど再生できる高域特性が高くなりワイドレンジ になるという再生帯域の拡大ではなく、オフアクシスの指向特性をいかに向上 させるかが主眼のテクノロジーというわけだ。 そして、Sonusfaber始まって以来初という機能性が装備された。これだ!! http://www.dynamicaudio.jp/file/120204/aida07.jpg “Aida”のリアパネルに三つのノブがあるが、0から4まで表示されている 一番下はThe Sonus faberにも搭載されている「SOUND FIELD SHAPER」のレベル、 つまりリアスピーカーの音量調整。真ん中でMINからMAXの表示はサブウーファー のレベル調整、そして同様にMINからMAXとなっているのは何と、フロント トゥイーターのレベル調整だという。 FrancoSerblinが創始したSonusfaberは制作者のセンスによって決められた バランスで音楽を聴くということが特徴であり自信の表れであり、そして ユーザーから見れば信頼感ということになる音質の特定というものだった。 ユーザーがトゥイーターレベルをいじることが出来るというのは両刃の剣で、 下手をすると楽音の自然さを失ってしまう危険性もあるだろう。だから私は Sonusfaberのスピーカーは一切のレベル調整機能を持たせないということを 肯定的に評価していたものだ。 しかし、Paoloは平然とルームアコースティックの状態とユーザーの好みに よって選択できるようにしたというのだ。さあ、このチューニングはいかに? 一晩バーンインCDをリピートさせてじっくりと聴き始めました。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- ■Speaker system:“Aida” (税別 1ペア \10,000,000.) http://www.noahcorporation.com/sonusfaber/SONUSFABER.html ■Power amp:soulution Mono amplifier 700 (税別 1ペア \12,000,000.) http://www.noahcorporation.com/soulution/700.html ■Pre amp:soulution Line amplifier 721 (税別 \3,250,000.) http://www.noahcorporation.com/soulution/720.html ■CD-Player:soulution 745 (税別 \6,000,000.) http://www.noahcorporation.com/soulution/740.html ■Tandem Reference RL02 に上記をセットしている。 http://www.tandem-audio.com/#/home http://www.dynamicaudio.jp/file/111122/11.22.02.jpg ■そして忘れてならないのがBlack Ravioli。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/893.html 現在ではコンポーネントだけでBF-3(1個5万円)を合計20個使用しています。 レベル変更が出来るというとは色々と好みによってチューニングできるという 事だが、実は近日中に公開するフルサイズの「音の細道」でThe Sonus faberの 詳細なチューニングを述べているが、この経験から私はリアスピーカーと サブウーファーのレベルはMAXで問題ないという結論を出していた。 もちろん、この試聴環境ということが前提なのだが、これには大いに自信がある。 ■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章 小澤征爾/ボストン交響楽団 この曲は私の頭の中に音のテンプレートとして実に多数のスピーカーとシステム で聴いてきた記憶がある。“Aida”が放った第一声は衝撃的だった!! 「おいおい…、こんな弦楽器の音は今までに聴いたことがないぞ!!」 芳しい芳香を含んだような弦楽器は実に滑らかであり、芳醇な響きは微細な ハーモニーを鮮明に描写する。このテイストはいったい何なんだ!! きめ細かなシルクの光沢、肌に触れれば滑るように指の隙間に快感を残し 摺り抜けていくような風合いをもった楽音の感触に思わずうっとりする。 「間違いない!!過去のSonusfaberにもこの質感はなかった!!」 美しい…、こんな弦楽器の質感をいとも簡単に聴かせてくれた“Aida”には 最初から既に他に望むものはないと私に直感させる程の魅力がある。 どんな音を聴いたら美しいと思うのか。人それぞれが生まれ持った感性で 初めて耳にする音に対しても本能的に心地良さを感じる事はあるだろう。 しかし、ここで聴く“Aida”は一言で言うと官能的な音と言えるだろう。 耳から入った楽音は私の脳内をひとめぐりしてからハートを捉え、鷲掴みに するのではなく優しく繊細に包み込んでしまったようだ。もう逃げられない!! フロント・トゥイーターのレベルは三段階全て試聴したが、実はこの変化は コントロールされた変化量であり、微妙なニュアンスの違いを聴かせるものの MINとMAXでもバランスを損なう事はなかった。いいセンスをしている!! 目的を持ったテクノロジーは人間の感性によって完成される!! Paolo…、君が目指したものが分かってきたよ!! 全国の皆様、“Aida”を聴くことで皆様が求めていたものと巡り合えることでしょう!! 一度聴いたら皆様も、もう逃げられなくなります!! |
担当:川又利明 |
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