発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明


2011年7月11日
No.840 「気になるBlack Ravioliの中身と特徴を解説!!」
 
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/834.html で初公開。
 
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/835.html その音質に感動。
 
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/837.html 輸入元サイト紹介。
 
その特徴を述べるものとし下記をご覧下さい。
http://www.andante-largo.com/br_2011/press_release.pdf
 
そして、下記の「圧縮許容量」という数値に注目して下さい。
http://www.andante-largo.com/br_2011/br_hint_chips_rev2.pdf
 
このようにインシュレーター自身がコンポーネントの接する面の形状に変化
してがっちりとホールドするという製品は私も初めてのものでした。だから
バーンインの時間が必要という事です。さて、以前私は次のように述べていました。
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
市販のインシュレーターの材質としては金属、木材、アクリル、合成または
天然皮革、水晶(人工の結晶体)、セラミックなどなど実に色々なものがあります。
 
そして、インシュレーターの機能性を示す効果のあり方は二種類あります。
スパイク構造に代表されるように機械的接点を点支持にすることで共振を防止、
または振動を伝搬する際に振動モードに歪を与えないでメカニカル・グラン
ディングをとるというもの。説明のためにこれを[A]とします。
 
もう一つは、点支持ではなく面接触させることでコンポーネントそのものの
振動を吸収する考え方で、既存のフットとラックの棚板の間で緩衝材として
機能するものです。説明のためにこれを[B]とします。
 
この二種類の機能性・効果には各々にメリットとデメリットがありますが、
その各論を私が述べてしまうと両方式の商品に対してイメージダウンになり
ますのでノーコメントとしておきます。もちろん両方の製品には特有の効果が
ありますので商品価値は認めた上での説明ですから、誤解なきようよろしく
お願い致します。
 
            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 
さて、上記の解説をしかけたところでしたが製品名を特定しなければ問題は
ないだろうと判断致しまして、Black Ravioliの特徴を述べるためにインシュ
レーター全体の総論として[A]と[B]の総論との比較を説明したいと思います。
 
先ず、上記のインシュレーターの機能性を[A]と[B]によって分類するという事
は製品そのものの硬度、つまり材質の硬さということに置き換えて説明出来ます。
 
[A]の分類による特徴としてはインシュレーターそのものが硬質で硬い材質で
あるということが言えます。この場合にはコンポーネントの振動そのものを
制御するということで、リジッドな材質で機械的な支点を明確にします。
 
その結果、フォーカスイメージが鮮明になり音像の輪郭がくっきりとして
そのために音場感や奥行き感の向上に寄与するという働きがあります。
 
また、同様な効果を狙ってコンポーネントに純正付属品として同梱されている
フットやスパイクなども設計者が意図した音質をユーザーに届けるという責任
を追求するものとして私も歓迎するものです。
 
しかし、この[A]の分類では弱点もあります。それはインシュレーターの下側、
つまりラックの棚板であったり床面であったり、インシュレーターをセット
する土台となるものの性質と環境に影響を受けるという事です。
 
インシュレーターの下側に接するものが木材かコンクリートや石か、または
ガラスかなどの材質の変化によって、その材質特有の響きというか傾向を音質
に含むようになってしまいます。つまり、インシュレーターの下側とのアイソ
レーション効果はあまり期待できないという事です。
 
では[B]はどうでしょうか?点支持ではなく面接触させることでコンポーネント
そのものの振動を吸収する考え方、という事は材質はある程度の柔らかさと
柔軟性が必要と言えます。指で押してみて形状が変化する程の柔らかさ、また
究極的にはエアーサスペンションのようにインシュレーターの上下にあるもの
を完全にアイソレーションするというものも[B]の範疇に含めても良いかもし
れません。
 
[B]のような性質のインシュレーターは余韻感が大変美しく、響きの要素が
一種の浮遊感として音場感を形成するという傾向もあり、同時にアナログ
プレーヤーのようにハウリング対策としてコンポーネントの設置場所からの
振動伝搬を遮断するという効果もあります。
 
言い換えれば設置場所の影響を受けないということが[A]と反対のメリットと
して述べることが出来ます。そして、響きの美しさという項目に貢献度が大きい
インシュレーターとして[B]の特徴を述べることが出来ます。
 
しかし、[B]の分類でも弱点もあります。残響成分がきれいに再現されると
いう楽音の消滅方向への時間軸の推移に関しては魅力的なわけですが、リズム
楽器のアタックの鋭さ立ち上がりという点では多少甘口になります。
 
そして、低域の楽音の音像もすこしゆったりとしたイメージになります。
この方が雰囲気があって好ましいというユーザーはそれで良いでしょう。
 
これを見方を変えて説明しますと、コンポーネントが発する固有の振動があった
場合に、その振動を制御し減衰させるという機械的な抑制効果は少ないと言えます。
 
極論を言いますと、振動しているものをフローティングさせるので害はなくな
りますが、その振動にブレーキをかける、あるいはがっちりと抑え込むという
働きは期待できないという事です。
 
材質として柔軟性あるものは振動を遮断するというアイソレーション効果は
ありますが、柔らかい材質であるが故にコンポーネントを機械的にホールド
する、がっちりと固定するということには不向きという傾向があるのです。
 
[A]と[B]の特徴をメリット・デメリットとして述べましたが、私が注目している
Black Ravioliとは一体どちらに属するのか? ここがポイントです!!
 
先ず、Black Ravioliの中身がどうなっているのかに私は関心を持ちました。
そこで↓この写真をご覧になって下さい。これがBlack Ravioliの構成素子です!!
 
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/20110707/P1010024.JPG
 
手前の黒いものは見本としてSticky Padを置いてみました。それに斜めに置い
てあるエレメント、数ミクロンという極めて薄いフィルムを積層化して厚みを
持たせているというのがBlack Ravioliの中身なのです。
 
Big Padの厚み23mmを事例に上げますと、表面のラバー層での肉厚の平均は
約1〜1.2mmというものであり、逆に言えば上記写真のごく薄のフィルムを
22mmも積み重ねて作られているというものなのです。
 
そして、Sticky Padは使用する場所において、下側と上側という区分があります。
これはBig Footにも同様な設計がされています。Big Footの黒い板は実は
コーリアン(メタクリル樹脂強化無機材)で出来ていて、その上下に接着されて
いるPadにも上下の方向性があるというものです。
 
このコンポーネントに当たる面と設置面の下側に当たる面では、Padの肉厚の
中で上記のフィルムの性質を変化させているということでした。
 
写真に写っているフィルムは既に何十枚もフィルムを積層化したものであり、
触れてみるとしなやかでありながら引っ張ってみても一切の伸縮性はありません。
これでもまだ厚みは1ミリもないのですから、Pad一個を構成するには数十枚を
重ねていくのでしょう。表面のラバー層がそんなに薄いという事は…
 
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/20110702/br07.jpg
 
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/20110702/br08.jpg
 
このように↑へこんでいるというのはラバー層のくぼみではなく、内部エレメ
ントの形状変化という事だったのです。硬さの異なるゴムを成形したのではと
いう私の想像はまったく違っていました。
 
このごく薄のフィルムの積層化ではフィルムの間にごく微量の空気層を含んで
積み重ねているというのですから、更に感心してしまいました。ナノテクです!!
 
このフィルムの材質は企業秘密ということで教えてくれませんが、振動を制御
しながらもアイソレーション効果を発揮する。また自身の変形によってコン
ポーネントとの密着性を高め、水平方向のベクトルで発生する振動までも制御
してしまうというのですからバーンインの時間が必要なのも納得できます。
 
私が過去に前例のないインシュレーターとBlack Ravioliを推奨する根拠は
[A]と[B]のメリットを両方とも有しており、両者のデメリットを排除したと
いう画期的なインシュレーターという事なのです!!
 
http://www.andante-largo.com/br_2011/br_hint_chips_rev2.pdf
 
再度↑これをご覧下さい。私が一週間前にセットしたBig Foot2には2〜3週間
のバーンインが必要としています。私は待ちきれなくなってきました(笑)
Black Ravioliの使用前・使用後(正確にはバーンイン完了)の比較をしたい!!
 
どうしたらいいか悩んでいる時間を使ってBlack Ravioliの特徴と中身を説明
致しました。一週間セットして外したらどうなるのか!?
熟すまで我慢しろという設計者の言葉を知りつつも誘惑と戦う私でした!!


川又利明
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