発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナ5555 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556 H.A.L.担当 川又利明 |
No.279 小編『音の細道』特別寄稿 *第27弾* 「想像以上のクォリティー!! ESOTERIC“MEXCEL Cable”の真価が今ここに!!」 |
1.ケーブルにおける音質評価方法の見直し 長年DOMINUSを主体にして構築されてきたH.A.L.の音質だが、今年になって から有力なケーブルがいくつか持ち込まれてきた。その中の一つが今回の ESOTERIC“MEXCEL Cable”そしてSTEALTHなのだが、それらの試聴評価を 行う際にはどうしても以前から使用しているDOMINUSを主流とするシステムの 中に組み込んで検証しなければならなかった。しかし、それでも各社の ケーブルによる変化を敏感に読み取ることが出来たものだった。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/273.html http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/278.html ケーブルをコンポーネントの一部として考える。これは以前から私の 常識として大切にしてきた方針であり、例えば異なるメーカーのプリ アンプとパワーアンプの組み合わせを安易に推奨しないという私の信条に も一致することなのだが、残念ながらほぼ同一ブランドで統一して実際に 演奏するという徹底は過去にはPADくらいしか実現できなかったものだ。 アンプの例もあげたが各社ケーブルが混在する中で、そのシステムに 一箇所だけ特定のケーブルをインストールして変化を探る…。これには 熟練の感性が必要になるが、ひとしおの能力を持っているケーブルで あれば一本だけの導入でもシステム全体のパフォーマンスを上向かせる ことはできるものだ。しかし、それはあくまでも変化の一旦であって ケーブル設計者の目指しているものがすべて感じ取られるものではない。 量産が開始され徐々にここにも“MEXCEL Cable”が浸透してきたのだが、 それはあくまでも途中経過であり部分的採用による変化の現れという ものに過ぎなかったようだ。そして、私が聴いたものは…!? 2.オーディオシステムにおけるケーブルの作用点 長年のリファレンスであるNautilusはこれまでにも多種多様な組み合わせ で、その時代ごとに新たな可能性を見せてくれる想像以上の潜在能力を 有するスピーカーであり、まさに一生モノとして取り組むレベルのもの として使い手を飽きさせることはない。日々接している私が発売以来9年 間という長きに渡り、Nautilusの成長と変貌を幾度となく体験してきたが “MEXCEL Cable”とのコラボレーションによって更に新世代のNautilus にめぐり合うとは誰が予想したことだろうか? これまでには部分採用だった“MEXCEL Cable”をクロックケーブルに至る すべてに投入したものが下記のシステムである。 -*-*-*-*-今回のリファレンスシステム-*-*-*-*- ESOTERIC G-0s(AC DOMINUS) ↓ ↓ ↓ 7N-DA6100 BNC(Wordsync) ↓ ↓ 7N-DA6100 BNC ESOTERIC P-0s+VUK-P0 (Wordsync) (AC/DC DOMINUS & RK-P0 & MEI Z-BOARD & PAD T.I.P) ↓ ↓ ↓ 7N-A2500 XLR ×2(Dual AES/EBU) ↓ ↓ dcs 974 D/D Converter(AC DOMINUS) ↓ ↓ 7N-DA6100 BNC×1 7N-DA6100 BNC ×2 (Wordsync) (SPDIF-2 DSD Audio Signal) ↓ ↓ dcs Elgar plus 1394(AC DOMINUS+SAP RELAXA3PLUS & PAD T.I.P) ↓ 7N-DA6100 RCA 1.0m(2ch Audio Signal) ↓ Brumester Pre-Amp 808 MK5(AC DOMINUS) ↓ 7N-DA6100 RCA 7.0m(2ch Audio Signal) ↓ Nautilus付属Channel Divider(AC DOMINUS) ↓ ↓ ↓ ↓ 7N-DA6100 RCA 1.0m ×4Pair(4Way Audio Signal) ↓ ↓ ↓ ↓ ESOTERIC A-70 ×8 (AC DOMINUS×8) Tweeter Section ↓ ↓ B&W Nautilus PAD ALTEUS 6.0m ↓ murata ES103B -*-*-*-*-*-*-*-*-*- このように注目すべきはインターコネクトのみならず、G-0sからの ワードシンク信号のリンク用ケーブルにも7N-DA6100を使用し、かつ dcs 974からのSPDIF-2にも三本の7N-DA6100を使用し、文字通りすべて のシグナルパスを“MEXCEL Cable”に統一したのである。更に二晩 システムエンハンサーをリピートさせ、十分なバーンインを行って 試聴に望んだ。 ケーブルのチェックでは、ギターの立ち上がりと余韻感のあり方でその ケーブルの情報量がすぐに確認できる押尾コータロー『STARTING POINT』 の6.Merry Christmas Mr.Lawrence をかけた。 http://www.toshiba-emi.co.jp/oshio/ 「え〜、この統一感はなんなんだ!!」 最近は耳にタコが出来るほど聴き込んでいる曲だが、先ずはエコー感と してNautilusの周辺に見ることが出来る音場感の大きさが各種混合での ケーブルで聴いていたときよりも整理され、同時に広範囲な展開を見せる ので“MEXCEL Cable”の情報量が只者ではないと言うことが直ちに認識 される。 しかし、ここで従来の経験と違うところがいくつか発見されてくる。 一本のギターから千変万化の音色を紡ぎ出す押尾の演奏だが、音階の 変化に伴う音場感の変化がないのである。これは私も始めてのことだ。 つまり、高域のエコー感は十分に広がるのだが、音階が下がるに連れて 余韻の広がり方が乏しくなってくるような。あるいは、高い音階では テンションが張り詰めているのに、音階が低くなってくるとふんわりと した質感に徐々に変化してしまうような、再生する周波数帯域の変動に ともなう質感の変調がまったく感じられないのである。 このポイントはかなり上級者向けの視点と言えるだろうが、恐らくは 微妙な変化を細大漏らさず克明に描写するNautilusを最も聴き込んで きた私から言わせると極めて均整のとれた演奏ということになる。 同じ大きさで描かれた様々な体型の人間のイラストを何枚も合わせて 綴じ込み、頭部、胴体、下半身の三つに分けて鋏を入れ、ぱらぱらと めくるとモンタージュ写真のように、あるいは着せ替え人形の本のよ うに、色々な体型の人間が組み合わせできる絵本があったとしよう。 あるケーブルでは下半身はふくよかな体型なのに上半身は痩せぎすで がりがり、頭部は丸顔でどう見てもチグハグ。また、顔の表情は頬骨 が強調されるほど鋭いのに上半身は筋骨隆々としているが下半身はす らりとして本来は細身の体型だと思われるようだ。 このような人間の体型を三分割したものを頭部は高域、胴体は中域、 そして下半身は低域と当てはめてイメージして頂きたいのである。 人の姿ということはわかるのだが、その組み合わせによって色々な 組み合わせのパターンがあり、複数のメーカーのケーブルを混在させた システムだと演奏する楽曲によって、またコンポーネント特にスピー カーのキャラクターによって演奏の全体像が不自然なプロポーションに 思われることがあるのだ。 各論において、この帯域はいい、でもこちらはだめ…、と言うように ソロという一つの楽器が発生する音に音階の高低によって質感が異なる ようでは根本的にまずいだろう。それが全てを“MEXCEL Cable”で統一 されたときに、音階がどう移行しようと演奏方法が変化しようと、また 演奏者のパッションで音量が上がろうと、見事に均整の取れた抜群の プロポーションで演奏が展開するのである。この体験は初めてだ!! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- オーケストラのように低音楽器と高音楽器が種々主様々にちりばめられ た録音では、一般的には浪々と鳴るゆったりしたバスに鮮明な中高域が 両立すればという期待感もあり、楽器の数が多くなればなるほど個々の 楽音が異なる質感であっても聴けてしまうものだろう。 しかし、一つの楽器が一つの環境で演奏されるということは、複雑な音 程の変化があったとしても同一な質感で再現されなければおかしいこと になるだろう。 それでは、ピアノのソロはどうなんだろう!? かなり左手で奥深く重厚な低音まで叩きながら、出来ればスタジオ録音 ではなくホールでの録音がいい!! と、ひらめいたのがこれ!! ヴァレリー・アファナシエフによるムソルグスキー「展覧会の絵」 私が使っているディスクは13年前の初版のものなのでディスクNoは COCO-9046だが、最近では下記のように再販売されているものだ。 http://columbia.jp/crest1000/list111-120.html#crest118 http://columbia.jp/classics/index.html 私が今回のテストで使ったのはいきなり16.キエフの大門である。 この曲も長い間に色々なシステムで聴いてきたが、フランクフルトに あるドイツ銀行ホールで録音されたものである。ピアノ・ソロであり ながら演奏している空間の大きさが見えて来なければいけないものだ。 言い換えれば、ピアノの残響が四方八方に広がっていき、その余韻が消滅 するまでにホールという空間に音響的な光をほのかに当ててステージの奥 行きと客席への広がりを感じさせて欲しいものなのだ。 しかし、今までに体験した演奏のいくつかは、このトラックで当時40歳前 後のアファナシエフがエネルギッシュに叩き出す左手の連打がスピーカー のキャビネットにエネルギーを溜め込んでしまい、もうもうと立ち込める 煙のように低域だけをデフォルメして聴かせるものもあった。 今回は事実上キャビネットを持たないNautilusと“MEXCEL Cable”で 統一したシステムで、過去に覚えのあるアファナシエフの左手のイメージ がどのように変わるのだろうかという期待をもとに13年前のディスクを P-0sにローディングしたのである。さあ、主題のメロディーパターンが 繰り返されて、いよいよだぞ〜!? 「お〜、そういうことか!!」 ペダルを踏まずに左手が叩き出した和音をずっと見守るように余韻と してたなびかせるアファナシエフの演奏が、Nautilusによって克明に 描写されて次の一音の登場を待つ。スピーカーが振幅の大きな低域を 溜め込むことがないので開放感が心地良く、ピアノの弦が幾重にも 共鳴しあって響きを伝えるが、アファナシエフの両手は全く同一の質感 で次々にハンマーを操るのである。 この時に余韻が描かれる空間は、ピアノのテンションが引き締められ、 打音の瞬間と残響とを見事にセパレートしているので楽音の輪郭がに じんでホールの空間を濁すことがない。これは見晴らしがいい!! ケーブルがシステムにもたらす影響は多角的な見方が出来るものだが、 使用するケーブルが一つの性格で統一されたときに何が見えてくるのか? 私は情報量としての余韻感ということで前回ケーブルのパフォーマンス を表現しようとしたが、そのハードルを既に越えてしまった優秀なもの には次にどのようなチェックポイントを設けたのか? その答えが今回の“MEXCEL Cable”で統一されたNautilusシステムで 検証することが出来た。そして、それは同様にケーブルを統一したと いうことで私が過去に経験したオールDOMINUSによる体験に続き二回目 のことであり、すべて“MEXCEL Cable”でアンバランス接続された 今回の演奏はNautilusの新時代を切り拓いたとも言えるのではない だろうか。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- それでは、多用な楽器が背景を埋めてヴォーカルも同時にチェックで きるものをと、「Muse」からフィリッパ・ジョルダーノ 1.ハバネラ http://www.universal-music.co.jp/classics/healing_menu.html 毎度お馴染みの曲なのだが、冒頭のフィリッパのヴォーカルとバック コーラスの表現は統一された“MEXCEL Cable”によって早々に旨みを 聴かせてくれた。このケーブルは極めてノイズフロアーが低いという 印象を持っていたものだが、その統一によって更に声が浮き上がって きたではないか!! 左右のNautilusの間に整然と並んだヴォーカルの輪郭には一切の混濁 がないので、個々のパートが見事に整列して気持ちよく展開する。 ケーブルの情報量を余韻感のあり方と私は述べてきたものの、その中 に解像度とも言える輪郭の鮮明さも新たな情報の表れであると考えさ せられる見事さである。 そして、この曲で印象深いずしりとしたドラムが響き始めた。お〜!! この重量感をたたえるドラムが何と鮮明なことか!! 全てをアンバランス で接続しているのだが、低域の量感はバランス伝送に一利ありという 通説を見事に覆す低域の充実ぶりが思わず口元に笑みを浮かべさせる。 フォルテの繰り返しでも背後の合唱と弦楽群の分離は素晴らしく、ソロ の演奏で確認してきた音階の高低差で生じるテンションの変化もなく、 全ての楽音が均一なスピード感で演奏されるということで個々の楽音 が残すエコー成分も平均化されるので音像の肥大化がない。大編成の バックとヴォーカルという主従関係が聴き手に理解されて好ましい。 ここに来て思うことは、“MEXCEL Cable”の統一によって新たに加 わったパフォーマンスの一項目として、エコー感の存続が楽器の性格 や音階の違い、また各々の楽音の音量感の違いによって誤差が生じ ないということだ。 アファナシエフのピアノでも薄々気が付いていたことなのだが、ピアノ の弦が個々に振動している様子がクローズアップされた画像のように 鮮明に認識できたということが、更に大編成の録音でも同様な解像度 の高まりとして、また質感の統一ということでコンポーネントの潜在 能力を更に掘り下げて表現するのである。 Nautilusオーナーの皆様に、あるいはここでNautilusを聴いたことが ある皆様に過去の記憶を一旦は削除して頂き、“MEXCEL Cable”の 統一によって新しいNautilusの可能性をメモリーし直して頂く事を お奨めしたい!! いや、情報量が豊かなスピーカーであればなんであっても、そして 空間表現を正攻法で再現するコンポーネントであればどれでも!! “MEXCEL Cable”の部分的採用、あるいは統一した結果によって 皆様の過去の投資が更なる価値観で蘇ることを保証するものです。 日本国中のどこよりも“MEXCEL Cable”の真価を確認できる試聴環境 として、今後のH.A.L.に新しい見出しが加わったことを宣言致します!! 3.敢えてアンバランス伝送のこだわり 【特別出演:Connoisseur 5.0】 「ESOTERIC“MEXCEL Cable”とConnoisseur 5.0が鳴らすNautilus!!」 昨日はシグナルパスにおけるケーブルを統一することで、ケーブルデザイナー の目指すところがどのように音質に表れるのかを検証した。質感と余韻感の 統一が聴感上で総合的な情報量を増加させることになり、ソロと大編成という 対比においても音階の移行に惑わされないディティールの表現が実現した。 さて、私が“MEXCEL Cable”の中で最も高く評価しているのが7N-DA6100なの だが、これは単芯シールドという構造からアンバランスタイプしか存在しない。 オーディオメーカーの設計者の思想的な判断で、バランス伝送を取るかアンバ ランスを取るかという選択があるだけだが、どちらの方が優れているのかとい うことは一長一短であり一概には言えないものだ。 アンバランス伝送を採用し、史上最強と異名をとったアナログプリアンプの 頂点にあったConnoisseur 3.0が姿を消してから久しい。当時の輝かしい思い 出は下記をご参照頂ければと思う。そして…!? http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/103.html http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/118.html http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/120.html 雑誌広告には顔を出しているが、そのパフォーマンスをまだ検証していな かったConnoisseur 5.0が何ともタイミングよくMEXCEL CableとNautilus の共演真っ只中に登場したのである。そして、このConnoisseur 5.0も 内部はアンパランス伝送であり、ケーブルを吟味しようとする過程で 重要な一役を担うことになった。いや、主役の座をいきなり奪い取って しまったようである。 -*-*-*-*--本日のリファレンスシステム-*-*-*-*- ESOTERIC G-0s(AC DOMINUS) ↓ ↓ ↓ 7N-DA6100 BNC(Wordsync) ↓ ↓ 7N-DA6100 BNC ESOTERIC P-0s+VUK-P0 (Wordsync) (AC/DC DOMINUS & RK-P0 & MEI Z-BOARD & PAD T.I.P) ↓ ↓ ↓ 7N-A2500 XLR ×2(Dual AES/EBU) ↓ ↓ dcs 974 D/D Converter(AC DOMINUS) ↓ ↓ 7N-DA6100 BNC×1 7N-DA6100 BNC ×2 (Wordsync) (SPDIF-2 DSD Audio Signal) ↓ ↓ dcs Elgar plus 1394(AC DOMINUS+SAP RELAXA3PLUS & PAD T.I.P) ↓ 7N-DA6100 RCA 1.0m(2ch Audio Signal) ↓ Connoisseur 5.0(AC DOMINUS) ↓ 7N-DA6100 RCA 7.0m(2ch Audio Signal) ↓ Nautilus付属Channel Divider(AC DOMINUS) ↓ ↓ ↓ ↓ 7N-DA6100 RCA 1.0m ×4Pair(4Way Audio Signal) ↓ ↓ ↓ ↓ ESOTERIC A-70 ×8 (AC DOMINUS×8) Tweeter Section ↓ ↓ B&W Nautilus PAD ALTEUS 6.0m ↓ murata ES103B -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 上記のシステムに切り替え、これも一晩のシステムエンハンサーによる バーンインをしてから試聴に望んだ。前作のConnoisseur 3.0はフォノ イコライザーを搭載するプリアンプとして最終価格が750万円まで値上げ されたものだが、今回の5.0は380万円という設定で完全なラインアンプ として前作を踏襲するコンセプトで設計されている。しかし…、 試聴に当たって、Brumester 808 MK5と時折比較することで新しいジェネ レーションを意識してコニサーの現在を聴き取ろうと努力したものだ。 当然課題曲はまずは前回と同じくして押尾コータロー6.Merry Christmas Mr.Lawrence から始めた。 「あれ…!?」 あまりにも軽々と押尾のギターが含む情報量が再現される。この第一印象 がどこまで延長されるのかに期待しつつ、早速二曲目として「Muse」から フィリッパ・ジョルダーノ 1.ハバネラをかけてみる。 「う〜む…、これは…!?」 Connoisseur 3.0は今にも折れるのではと思われるほどに弓を極限まで 引き絞り、ピンピンに張り詰めた弦を解き放った瞬間のようなエネルギー 感の瞬間的な放出が他者にない魅力であった。それは切れ味鋭い白刃に 指先を這わせるような緊張感とテンションの高まりをもたらし、演奏者 のエネルギーをプリアンプがここまで蘇らせるものかと驚嘆するほど 私の体内にアドレナリンを大量に流してくれたものだった。 しかし、今回の5.0はそのような一種挑戦的なテンションと緊張感は薄く、 良い意味でアダルトな演奏を聴かせるのである。この傾向を認知して 聴き進むうちに、瞬間的なフォルテを展開するオーケストラが聴きたく なって思いついたのがこれ。 セミヨン・ビシュコフ指揮、パリ管弦楽団によるビゼー「アルルの女」 「カルメン」の両組曲である。(PHCP-5276 廃盤) 1.前奏曲と同一の主題が登場する8.ファランドールを繰り返し、見事な ハーモニーでアルコを繰り返す弦楽器群に聴き入ってしまう。いきり立つ ような激しさを感じるようなことはなく、毛羽立った質感を上手くまとめ 刺激臭も抑えてまことに聴きやすい質感についついボリュームが上がって しまう。これも旨みの一種なのであろうか、弦楽器の解釈には他者にない 魅力があり、しなやかな展開に和んでしまった。 しかし、8.ファランドールでのパーカッションは生き生きとした描写が あり決してテンションを緩めすぎたという印象はなく、先ほどまでの 弦楽器の質感にごまかされない解像度が存在している。小刻みな木管楽 器の合間にリズムを重ねる打楽器の配置は十分な距離感を持ち、ステージ の広がりを感じさせるに十分な余韻感を含むので心地良い。 さあ、「カルメン」に入って10.アラゴネーズに注目したい。タクトの動き が上下に激しく見えるように展開する導入部に続き、ピッチカートの弦楽器 が木管楽器に鮮やかなステージを提供し、その奥にパーカッションが響いて いくとワクワクしてしまう。久し振りにオーケストラを楽しんで聴き進む。 15.のハバネラは違うアレンジでお馴染みのメロディーなのだが、独特の リズムが途絶えたときに一気に放射されるフォルテの爽快さは何と例えれ ば良いのだろうか。しかし、決して眩しくなく、ボリュームを上げても 下げても低下しない解像度と瞬発力には兄貴分譲りの魅力が聴こえてくる。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- Connoisseur 3.0の全盛期には打撃音やアタックの鋭いギターやピアノなどで、 エネルギーとパッションをNautilusに与えたものだが、新世代のコニサーで は熟成という言葉がふさわしいのかも知れない。 しっかりした情報量という土台は既にMEXCEL Cableの全面採用で証明された ものがあり、新しいコニサーの感性を上乗せした5.0はNautilusに新しい解釈 の調和という二文字を提供しているようだ。本当にオーケストラにおける各 パートの輝きを上手く制御しながら安心して聴かせるプリアンプとして私は 大きな期待を寄せることにした。 お披露目を済ませたConnoisseur 5.0は再度製作者の元に帰っていったが、 私はもっともっと“熱くなるアンプ”として再度ここで聴けることを願う と設計者に要請した。今回の特別出演は私にとって更なる希望を抱かせる 何ともタイムリーな共演として記憶に残った。 さあ、アンバランス伝送を最高レベルに実演できるMEXCEL Cableは準備が 出来た。Connoisseur 5.0を堪能したNautilusは再度の共演を楽しみにして いることだろう。そして、近い将来には私からの招待状をハルズサークル の皆様にお送りできることに期待したいものだ。続報にご期待あれ!! |
このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。 | |
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