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H.A.L.担当 川又利明


No.278 小編『音の細道』特別寄稿 *第26弾*
    「H.A.L.が採用を決定した第三のケーブルとは!!」
1.ケーブルに求める情報量とは!?

オーディオシステムの中で機能的に考えると最も受動的なものは何か?
フロントエンドのコンポーネントは出力を発し、アンプはそれを伝送増幅して
スピーカーを駆動する。オーディオ信号を受け取るだけのスピーカーは一見し
て受動的であると考えられるのだが、多くのユーザーが経験しているように
実はセッティングや各種のチューニングによって再生音をコントロールする
ことができるのも事実である。その意味では積極的に使い手の技術と感性に
よってスピーカーの音質を調整していくということは能動的な要素を含んで
いると考えられないだろうか。

さて、それでは私の着目点は何かというと、オーディオシステムの中で
それ自身が信号を伝送するという局面において、ケーブルの存在をどのよう
に理解したものだろうか? ということを改めて考えさせられるケーブルが
登場したのである。

各種のケーブルは信号伝達という意味では完全に受動態であり、それ自身が
他のコンポーネントに働きかけるということはないものだ。

しかし、このケーブルという存在でシステム全体の音質がここまで左右され
るという事実を既知のものとすると、一部のケーブルメーカーがスピーカー
ケーブルを床に這わせる際に使用する置き台のサポートなどを別にすれば、
ケーブル自体に音質を調整する要素もなく、ただただ両端に接続されたコン
ポーネント間の伝送を忠実に行うという極めて受動的な仕事をしているもの
ということになるのではないだろうか。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

ケーブルの使命としては忠実に信号を伝送するということが唯一無二のこと
である。ただ、そのような理解の中でケーブルが何かを付け足す…、という
ことがあるだろうか? というシンプルな問いかけを自分自身にしてみた。

仮に「低域が良く出るケーブル」または「高域が良く出るケーブル」などと
いうものがあったとしよう。しかし、それは本当だろうか? 皆様も常識的に
お解りのことであろうが、特定のボリュームにおいて信号の中で、ある部分
の周波数が強調されるようなL、C、R、の素子が内蔵されているようなイコラ
イザー的な回路が組み込まれたケーブルなどは存在していない。

相対的に高域が抑制されるような傾向では低域に強調感があり、逆に高域が
印象に残ると低域に物足りなさを感じるというように、伝送系においてどこ
かの帯域が抑え込まれてしまう事によって他の帯域が強調されたように感じ
るという“特定帯域の減衰による聴感上の印象”ということが正解ではない
かと私は考えている。

つまり信号の中の情報量に関して“加算する”という考え方ではなく“減算
する”という引き算の理屈で結果的には聴感上の周波数特性の変化を印象と
して感じてしまっているのではないかと考えているものだ。もちろん、これ
らは測定器での計測ではスペックとしては表れてこない領域のことである。

そして、なぜこのような考え方を私がするようになったかというと、私が最も
ケーブルの評価で重きを置いているチェックポイントが「余韻感、エコー感の
存続性」というものであるからだ。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

前述のような周波数特性における聴感上の印象ということでは、巷で語ら
れているような複数の要因から各社の理論がぶつかる局面があり、それを
実際に聴いてみると各々にうなずけるところもあり個性の選択として使い手
の感性で楽しみながら選んでいくという面白さがあるだろう。

しかし、私がここで使用してきたケーブルは聴感上の周波数特性と言える
高低のバランス感覚のようなレベルは既に通り越しているものばかりであり、
特異な性質を初歩的なバランス感覚の欠如で許容するものはまずない。

そして、近代のハイエンドオーディオにおけるコンポーネントが大勢とし
て目指しているのはノイズフロアーの低下であり、言い換えれば残響成分
の微小な信号を再生することで得られる音場感の再現性という論点にこだ
わって設計されているというポイントである。システムの成功例として
それらで聴く楽音とその背景描写の忠実さは、毎度私が随筆なとで表現し
ようとしている実在感につながるものであり、微小信号が余韻感を司って
いるという事実をぜひ皆様にもご理解頂ければと思い舞う。

ケーブルにおける微妙なキャパシター、インダクター、絶縁体の質、各
構成パーツの組み合わせ方、コネクターのこだわり、そしてもちろん線材
の素材における吟味において、この十数年でケーブルというアイテムの開
発にも大きな進歩があった。そして、エコー感や余韻感としての情報を
ケーブルにリヴァーブ・マシンを仕込んで強調するというようなことは
ありえないものであり、その微細な情報をロスしているものとそうでない
ものに私はケーブルの評価方法として単純な優劣を付けてきたのである。

つまり、エコー感を付け足すようなケーブルは存在しない。エコー感と
いう情報をロスしているものとそうでないものの二種類しかないのである。

録音に封じ込められた余韻成分がどれほど正確に再現できるかということ
で、ケーブルの持ちえる情報量、いや情報の存続性があるかないかという
解釈で私はPAD DOMINUSシリーズ、最近ではESOTERIC“MEXCEL Cable”と
いうケーブルをリファレンスとして採用してきた。

さあ、ここでそれらに匹敵する余韻感、エコー感を上記の二者と同レベル
で再現するまったく新しいケーブルが登場したことをお知らせしたい。


2.ケーブルと同様な高速レスポンスとは?

そて、ここで先ずそのブランド名をご紹介しておこう。
http://www.highend.jp/

米国のInterlink House Inc.社は1998年以来人物理学者セルゲイ・
ティマチェフが主宰するハイエンドケーブルブランドである STEALTH
Audio Cablesがそれである。既にwebには下記のように紹介されている
のだが、その実物がやっと手元に届き試聴の結果で皆様にご紹介したく
なるような意欲がふつふつと湧き上がってきたのである。

http://ongen.econ-net.or.jp/news/audio/200402/17/4941.html

http://ongen.econ-net.or.jp/news/audio/200402/18/4945.html

http://ongen.econ-net.or.jp/news/audio/200402/19/4954.html

http://ongen.econ-net.or.jp/news/audio/200402/20/4961.html

http://ongen.econ-net.or.jp/news/audio/200402/23/4967.html

http://ongen.econ-net.or.jp/news/audio/200402/24/4974.html

http://ongen.econ-net.or.jp/news/audio/200402/25/4978.html

このケーブルの特徴は上記のwebサイトで詳細に述べられているので重複
する解説は省くことにするが、どうしてもこれだけは述べておきたいとい
うポイントをいくつか取り上げてみた。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

まず素材の面では人間の髪よりも細い 0.025mmの素線を採用し、さらに
これを1本1本テフロンで絶縁することで表皮効果を回避させていること。

これは表皮効果への対応として下記のESOTERIC“MEXCEL Cable”でも
その原理を解説しているので参考として頂ければと思う。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/pdf/040224/esocable-ja.pdf

STEALTHの場合にはテフロンで絶縁しているのに対してMEXCEL Cableの
場合にはエマルジョン(水分散)型電着ワニスという樹脂微粒子で素線の
一本一本を絶縁している。また、PAD に関してはマルチゲージストランド
構成となっており、素線の一本一本は絶縁はさせておらず、それを撚り合
わせたバンドルとしての導体全部に絶縁を施すという手法をとっている。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto47.html
その辺の詳細はこの随筆の第二章「合金−alloy」でも述べているので
時間があればご再読頂ければと思う。

また、この第二章でも述べているがDOMINUSのインターコネクトに使用され
ている素線の太さは最も細いものでAWG規格の32GAというもので、ミリに
換算すると断面が丸の場合には直径が0.2mm、面積では0.032平方mmという
ものであり、いかにSTEALTHの導体が細いかということが思い知れるものだ。
ちなみにSTEALTHの導体の断面は丸型である。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

次に一本一本が絶縁された素線をどのようにして撚って編み上げていくのか
ということも、上記のファイルで語られているが…、同社では「ディストリ
ビューテッド・リッツ」という無共振多層構造を採用することでリンギング
を排除することに成功したと言う。

それに対してMEXCEL Cableでは上記のリンクで画像として見られるように、
90度に直交する角度に編み込まれ、一本の導体の断面は長方形であり2mm
×0.1mmという太さになっている。またPADの場合にはDOMINUSでは多い場合
には13種類の太さの素線を束ねているが、その個々の太さと撚り合わせ方に
ついては公開されていない。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

次に私が目を留めたのは、72時間に及ぶ“エクステンデッド・オーディオ
ファイル・サイクル”クライオジェニックス処理を施しているとことだった。
一般的にはクライオジェニックス処理を24時間しているメーカーは他にも
あるらしいのだが、STEALTHの場合には自社の設備において72時間という
長時間の処理を行っていると言う。ちなみにDOMINUSはダブル・クライオと
いうことで日本向けのSignatureシリーズは96時間のクライオジェニクス処理
をしている。

それを私はSTEALTHの輸入元であるハイエンドにメールでいくつかの質問を
送ったところ速攻での返信があり驚かされた。海外のメーカーに対して質問
を送り回答がくるまでの時間は私の経験からすると二日以上が普通だったの
で、この高速反応には感激したものだった。

そして、何とこのSTEALTHのクライオジェニックス処理については次のような
温度管理のパターンまで教えてくれたのである。

・+25°〜 -192°まで移行するのに12時間
        ↓
・-192°の状態で12時間保持        
        ↓
・-192°〜+25°まで移行するのに48時間

そして、私が試聴して感激した最初のSTEALTHのケーブルはトップモデルの
Indraであるが、最大の特徴としているこのケーブルの導体がアモルファス
であると言うことなのだが、原子、分子、イオンなどの配列が規則性のない
アモルファスであることはわかったが、素材自体は何かということも質問
してみた。すると、回答としてはプラチナ、モリブデン、銀、金などが配合
されているという。そして、それらの原料を+ 2620°で液化して合金を作り
それを一瞬のうちにマイナス192°まで冷却してアモルファス状態を作りだ
すというのだ。一言で言えば、テフロンで一本一本を絶縁しているアモル
ファス状態で直径0.025mmの素線を9本をコアに仕込んでいるのがIndraと
言うことになる。

最後にプラグに関わるこだわりだが、Indraではタイプによって下記の二種類
のプラグを採用している。

Indraインターコネクトアンバランスコネクター:WBT-0110Ag RCA
http://www.teac.co.jp/av/import/wbt/nextgen.html

Indraインターコネクトバランスコネクター:Furutech FP-600 XLR
http://www.furutech.com/new1/index.asp

もちろん、これらの情報も輸入元であるハイエンドより敏速な回答が
あったのだが、どうやらFurutech FP-600 XLRの採用は日本側から働き
かけて決定したのではないかと推測しているものだが、このFurutechの
コネクターは精度といい感触といい素晴らしいものであり、ESOTERICが
自社開発したコネクターといい勝負であった。


3.美しいという言葉がピッタリの音

このSTEALTHに期待したいポイントが更にもう一つある。輸入元のハイ
エンドが日頃の私の活動を評価してくださり、それを同社のセルゲイ氏
に熱心に伝えてくださった結果、何と世界中で私しか販売しないという
オリジナルケーブルを設計し提供してくれると言うのである。

上記のようにIndraインターコネクト・アンバランスケーブルには前述
の0.025mmの導体を9本を使用しているのだが、バランスケーブルでは
二倍の18本を使用しているのがスタンダードなものである。
しかし、ここでのシステム構成とパフォーマンスを考慮して何と更に
二倍の36本の導体を組み込んだ特別製のバランスケーブルにH.A.L.の
レタリングを刷り込んで仕上げてくれると言うのである。近日中に
到着予定ということで、入荷次第にレポートをお送りできることを
期待しているものだ。

このように海外ハイエンドメーカーと独自の商品作りが実現できるの
もハルズサークルの皆様のお陰であると感謝の念が絶えないものだ。

さて、今回到着したばかりのIndraを組み込んだのはこのシステムだ。

     -*-*-*-*-今回のリファレンスシステム-*-*-*-*-

ESOTERIC G-0s(AC DOMINUS) →ESOTERIC X-01(AC DOMINUS) →
PAD RCA DOMINUS 1.0m or Indra RCA/XLR 1.0m → Brumester
Pre-Amp 808 MK5(AC DOMINUS)→PAD BALANCE DOMINUS 7.0m→
Nautilus付属Channel Divider(AC DOMINUS & BALANCE DOMINUS 1m×4)→
ESOTERIC A-70×8(AC DOMINUS×8)→B&W Nautilus→
murata ES103B With PAD ALTEUS 6.0m

ちなみにMoebius“10000952”はNo.0881でも述べている新しい【電気
用品安全法】に適合させるためにアメリカのPADに返却しており、現地
でPSE規格を取得する作業を進行させているところである。胸を張って
販売できるようになるまで、しばらくお待ち頂きたいと思っている。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さあ、使い込んできたBrumester 808 MK5のAUX入力1番にIndra RCAをつ
なぐ。しかし、この新しいWBT-0110Agのフィーリングは大変素晴らしい。
詳細は輸入元である上記のティアックのwebサイトに図解入りで解説され
ているが、チャッキングするときの締め付けにムラがなく、コールド側
の接触もワンポイントとし、ハウジングも濃いブルーのカラーで上品で
あると共にイルンゴ・オーディオが目を付けたハウジングの共振の影響
からも回避する素材を採用している。

最近はケーブルの試聴では必ず使用するようになった押尾コータロー
『STARTING POINT』の6.Merry Christmas Mr.Lawrence をかけた。
http://www.toshiba-emi.co.jp/oshio/

「あ〜、美しい!!」

冒頭のギターのエコー感がNautilusの周辺にほとばしり、その拡散する
空間は私の想像を上回る範囲まで拡大している。しかし、ここでフォー
カスは決して甘くなることはなく、ガットが弾かれる瞬間のエネルギー
も十分に蓄えられている。この瞬間に只者ではないという期待感が背筋
を這い上がり、直ちに同じギターでの検証をしなくてはとSACDのこれを
セットした!!

fidelioaudio FA-FACD010 HAMADRYADEの8.I STILL HAVEN'T FOUND
WHAT I'M LOOKING FORでのMARC VALLEE のアコースティックギターが
どのように再現されるのか!?
http://www.fidelioaudio.com/prod/production_show.php?id=25

「あ〜、美しい!!」

たった0.025mmの導体がなぜこんなにインパクトのあるギターを響かせる
のだろうか? その透明感は私が体験したケーブルの中でもトップクラス
であり、たった1本のIndraがここまでシステムに影響力を持っていると
いうことが信じられないほどの衝撃となって私の頭脳に浸透してくる。
さあ、次だ!!

「Muse」からフィリッパ・ジョルダーノ 1.ハバネラ
http://www.universal-music.co.jp/classics/healing_menu.html

毎度お馴染みの曲なのだが、冒頭のフィリッパのヴォーカルとバック
コーラスの滑らかな表現はESOTERIC“MEXCEL Cable”とある意味で対
照的な質感の違いを見せる。

MEXCELは高い解像度を確保しながら楽音のディティールを克明に描き
その輪郭の表現力は色と色の境目にきっちりと黒い線で境界線を描く。
Indraを聴くまでは感じなかったことなのだが、同じ透明感と言えども
クリスタルを思わせるクールな響きの美しさを思わせるものだろう。

それに対してIndraはバーンインの時間がほとんどないに等しい接続
直後から、絹のローブが何の抵抗もなく女性の肩からするりと滑って
落ちていくようなしなやかな素材感をイメージさせるのである。同じ
透明感と言えども、このIndraの質感は春先の朝霧を通して景観を愛で
るような安らぎが印象に残る。そんなIndraを聴き進むのだが私の中に
広がっていく感動はやはりこの一言で足りてしまう。

「あ〜、美しい!!」

この見事な音楽の景色をNautilusを通じて表現してくれる要因は何かと
考えると、その応えは私の胸のうちから即答で言葉になってきた。

「余韻だ!! これほど美しい余韻感とエコー感は他にはない!!」

オーディオシステムの再生系の中で、ディスクに含まれる微細な残響
成分は、ケーブルによる保存性がいいかどうかで判断するしかない。

エコー感を追加してくれるケーブルは存在しない。もともと録音に
含まれているものを、どれほど完璧に伝送するかという“楽音の鮮度
維持”という大命題にかかわるケーブルの貢献という一言に尽きる。

実は、Indraに関してのこの私の印象は、インターコネクトでは価格的
にお安くなるPGS-3D、GS-50-50、などでも同様な傾向が存在している。

また、スピーカーケーブル、デジタルケーブルなどの種類別によっても、
STEALTHの特徴として“楽音の鮮度維持”ということが余韻感の存続性
というキーワードで理解することが出来るのである。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

STEALTHというネーミングでは、レーダーに補足されない航空機として
ステルス戦闘機/爆撃機という単語が私はすぐに連想されてしまうのだが、
もしも同社のセルゲイ氏がそのような意味で命名したと言うのなら…!?

それはあたかもケーブルなどは存在せずにコンポーネントたちを結び
付けるものとして、目に見えないようなケーブルの存在という含みを
持たせた命名なのだろうか?

また、更にオーディオシステムというマシンがリスナーの視界から消え
去って音楽だけが浮かび上がるという意味で、ステルスのケーブルが
素晴らしい貢献をするという願いがあったのだろうか?

上記に引用したステルス爆撃機はstealth bomberとなり、stealth〜の
この〜のようにステルスの後に続く一語によって「こっそりと忍び寄る〜」
という表現になるという。リスナーにこっそりと忍び寄るケーブル?
というのもロマンチックで面白いかも知れないが…。

いやいや、実は…

http://www.stealthaudiocables.com/index.htm によると…

Sound Technology Enabling Audibly Lucid Transcomponent Harmony

各単語の意味はわかったのだが、文章としては直訳は難しいだろう。
しかし、セルゲイ氏の言わんとしていることを理解するのは実は大変に
簡単なことだと今はわかった!!

「皆さん、STEALTHを聴けばいいんですよ!!」(*^_^*)


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
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