発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナ5555 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556 H.A.L.担当 川又利明 |
No.218 小編『音の細道』特別寄稿 *第十二弾* 『遂に登場したP-0s with VUK-P0の潜在能力を検証する!!』 |
プロローグ----「最古参の展示品」 年々新しいコンポーネントが登場する中で、五年前からここにあったのは 数えるほどのものしかない。MarkLevinsonのNo.30.6L(以前のNo.30.5Lから) とNo.33L、JEFF ROWLAND COHERENCE B&W のNautilus、そしてP-0であろうか。 そのP-0について、Sタイプへのバージョンアップを経て今回更に近代化 されたVUK-P0の搭載については下記の通りである。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/216.html そして、遂にそのVUK-P0がインストールされたP-0sが2002年の9月18日に ここH.A.L.に戻ってきた。年度決算を終えたかと思うと、時同じくして 開催された「インターナショナルオーディオショー」からの来客が続き、 じっくりと検証する機会がなかなか得られないままに数日が経過したが、 やっとH.A.L.のリファレンス・システムでそのバージョンアップの真価 を少しずつ、そして確実に解明していくことが出来たのである。 -*-*-*-*-リファレンスシステム-*-*-*-*- Timelord chronos(AC DOMINUS) → dcs 992/2(AC DOMINUS) → Esoteric P-0s(AC/DC DOMINUS & RK-P0 & MEI Z-BOARD & PAD T.I.P) http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/112.html http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/121.html http://www.cs-field.co.jp/pad/products/dc.htm http://www.cs-field.co.jp/pad/products/ac/acdom.htm *ここからD/Aコンバーターを下記の二系統に切り替えて試聴 →GOLDMUND MIMESIS 20ME http://www.stellavox-japan.co.jp/goldmund/gmproduct/index.html#Anchor483709 →dcs MSC-BNC Digital Cable→dcs purcell 1394(AC DOMINUS) →dcs MSC-BNC Digital Cable→dcs Elgar plus 1394(AC DOMINUS) http://www.timelord.co.jp/consumer-audio/apdcsproducts.html *これらの出力を…PAD BALANCE DOMINUS 10mを使用してNautilus付属 Channel Divider(AC DOMINUS & BALANCE DOMINUS 1m×4)With SAP RELAXA2PLUS×2へと接続し… →marantz SC-7S1×4(AC DOMINUS×4 & BALANCE DOMINUS 1m×4) With SAP RELAXA2PLUS×4→marantz MA-9S1×8(AC DOMINUS×8) →PAD RLS for Nautilus Quad-Wire 3m→B&W Nautilus→murata ES103B With PAD ALTEUS 3m というシステム構成で試聴を進めていった。 1.「44.1KHz 16bit」 数々の昨日を新搭載したP-0s with VUK-P0であるが、それを紐解いて いくには、まずバージョンアップに出す前との比較をしなければならない。 つまり、伝送フォーマットは44.1KHz 16bitのままとし、バージョンアップ によって従来のP-0sは約50ppm精度、3ppm以内精度に何と一挙に10倍以上に 向上した内部クロックの変化を聴き取るということだ。実は、これが一番 難しいことだろう。 ここでは内部クロックだけの違いを聴こうとするものであり、P-0sには 外部からのクロック供給をしない。従って、上記のdcsのシステムでは クロック同期がとれないとDSD伝送が不完全になるため、シンプルに GOLDMUND MIMESIS 20MEにそのまま44.1KHz 16bitを入力して試聴を 開始した。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 「あ〜、なるほどね〜」と思わずうなずいてしまった。これはP-0sを 何の付加機能も持たないトランスポート単体として、従来との比較を しようとするものなのだが、数曲を聴き進んでいく上で楽音の上下端、 つまり最高音部、低域の質感に以前には見られなかった輪郭の形成の 仕方が発見されたのである。オーケストラにおけるトライアングルの 響き、スタジオ録音のドラムスにおけるシンバル、ハイハットの打音。 それらの打楽器において、その打撃の瞬間にピンと張り詰めたテンシ ョンがNautilusのトゥイーターとmurata ES103Bの共同作業で作り出し た中空に明滅する光点として印象に残る。その光点の光りが以前よりも 明るくなっていて、かつピントがぴしっと合っているので打音の立ち 上がりに新鮮な驚きがある。 そして、低域の輪郭の鮮やかさがP-0sの魅力でもあるのだが、オーケ ストラにおける弦楽器のフォルテの裏に隠れるようにしてティンパニ が音圧感を高め、一瞬にしてオーケストラの総員がエネルギーを放出 するような局面で実に爽快な立ち上がりと、それに続くホールエコー へのリレーションが余韻として明確にセパレートしてくれる。 スタジオ録音のウッドベースはピッチカートの瞬間にはきりりと引き 締まり、弾き終わった直後からの胴の響きが同様にセパレートして くれるのが実に爽快である。 微妙ではあるが、長年聴きつけて来たP-0sの素描として、内部クロック の精度向上は楽音の発生と、その消滅するまでの余韻への引継ぎに、 言い換えれば楽音の輪郭を形成する解像度の向上へと着実にP-0sの 能力を根底から支えてくれる投資効果が認められたものであった。 「そのままでもおいしくなったP-0sです!!」 2.「Word Sync 44.1KHz vs 88.2KHzの物凄さ!!」 内部クロックの精度が10倍も良くなった。これを喜んでいた矢先に もっと大きな衝撃がやって来た。これまではP-0sの“stop”ボタンの 左側にある“Word Sync”のインジケーターは消灯したまま、つまり 外部からのクロックの受け入れをしないで試聴してきたものだ。 実際にはその状態で使用されている方が大半だと思うのだが、実は この先にもっと驚くべき“進化の形態”が待っていたのである。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- P-0sが出力するデジタル出力は44.1KHz 16bitのままなのだが、今回の バージョンアップによってP-0sには更なる可能性が移植されたのである。 P-0s with VUK-P0のリアパネルには、このレビューのNo.0413でも紹介 しているように新たに四つの小さなトグルスイッチが設けられた。 リアパネルに向かって左から順番に見ていくと、まずCOAXIALのデジタル 出力がRCAとBNCと一系統ずつあり、それらの出力二系統を同時にオンオフ するスイッチがある。そのスイッチから右にガイドラインが記され、その 先にもスイッチがある。 このスイッチの左側には「44.1KHz 88.2KHz」と二種類の表示があり、 同じく右側には更に176.4KHzという表示がある。つまり、このスイッチ は上下に3ステップの切り替えが出来るのだが、COAXIALデジタル出力 では「44.1KHz 88.2KHz」の選択が可能になったということであり、 176.4KHzに関しては更に右側に延びるガイドラインの先をチェック する必要がある。 そこには「OFF/SINGLE/DUAL」と記された3ステップのスイッチがあり、 オフは言うまでもないがシングルとは、その下の二系統のXLRデジタル 出力から88.2KHz 24bitを並列に同時に出力するモードである。 つまり、出力するのは44.1KHz 88.2KHzのどちらであっても、二台の D/Aコンバーターに同時にステレオのデジタル信号を送れるということ なのである。そして、これをDUALにして前述のスイッチを176.4KHzに 切り替えると、AES-3によって左右独立で88.2KHzを出力し、ステレオ で176.4KHz 24bitのハイスペックなデジタル伝送を可能とするのである。 話しが逸れてしまったが、最後に一番右にもうひとつのスイッチがある。 Word Syncのオンオフ・スイッチであり、これによって従来のリモコンに よるシンクロのオンオフ操作は出来なくなったが、実はこのスイッチの 搭載に関してはdcs 992/2やChronosとの同期には必要不可欠とも言える 従来になかった付加機能が追加されることになった。これはどこの製品 の取り扱い説明書にも記載されていない情報である。 従来のP-0sではdcs 992/2やChronosからの外部クロックをもらい受けて リモコンでシンクロスイッチを押すと、ほぼ瞬間にインジケーターが 点灯し同期したことを示したものだった。しかし、この同期のタイミン グは特にコントロールされているわけではなく、リモコン操作の瞬間に P-0sが反応して、その瞬間の位相関係で同期してしまうものだった。 この同期の現状をデジタル・メーターで観察するとプラスマイナス360度 の位相ズレをカウンター表示してくれるのだが、そのマイナス側で同期 してしまった場合には外部クロックの恩恵が半減してしまう。そして、 プラス側でもゼロから180度までの範囲では数値が小さくなればなるほど 音質が研ぎ澄まされてくるという宿命があった。私も何度となく挑戦し たが、プラス側の100度以内の位相ズレで同期するのは本当にまぐれ当た りとも言える様な確立であり、ルーレットに落とされた玉が狙った数字 になってくれるのを祈るような気持ちでの操作であった。確か私が以前 に挑戦したときには数十回チャレンジして最高が70度くらいだっただろ うか…(^^ゞ さて、今回のバージョンアップで設けられたWord Syncのオンオフ・ スイッチだが、ここでの標準システムであるdcs 992/2とChronosを 接続してオンにしてみた。すると、どうだろうか…。以前だったら ポンと点灯したものだが、今回は1.2.3.…と点滅しながら数えていると 何と約7秒間も同期に時間がかかっているではないか!? これは、バージョンアップの副産物として外部クロックとの同期タイミ ングをP-0s自身が計算し最小の位相差で同期するように一種のサーボ的 な原理のチューニング操作を行うようになったということなのである。 実際の位相ズレを何度以内に納めているのかは調査中であるが、dcsなど は以前からクロックリンクの同期にはファイン・チューニング機能が 搭載されており、各々のユニットが最適な同期をとるようになって いたのだが、やっとP-0sも同様な高精度のクロック同期が出来るよ うになったものである。しかも、電源をオンオフしても従来のように 同期が解除されることなく、その最適値がメモリーされているという のだから、私は以前の苦労を思い起こすにつれ喜んでしまった。 さあ、ここでバージョンアップ後のP-0sにいよいよ外部クロックを 導き入れようという時がやってきたのである。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- GOLDMUND MIMESIS 20MEに対しては44.1KHz 16bitを接続したまま、 Chronosからマスタークロックを入力されたdcs 992/2から44.1KHz のWord Sync信号をP-0sに供給し、同期するまでしばしの間インジ ケーターのパッシングを眺めていた。そして、さあいよいよ同期 完了である。 このCDは導入してから中々ご紹介する機会に恵まれないままに大分時間 が経ってしまったが、今回のテストには思わぬ適性を発揮してくれた。 《小澤&ウィーン・フィル ニューイヤー・コンサート 2002》 http://www.universal-music.co.jp/classics/special/ozawa/f_uccp9413.htm この中で、今回のテストに正にぴったりというのがこれ。 「9. ヨ-ゼフ・ヘルメスベルガー:悪魔の踊り 」である。 当然、外部クロックを使わないでP-0sの高精度化されたクロックでも 前述のようにフルオーケストラのリアリティーを十分に捉えていたもの である。バージョンアップを行う前からも44.1KHzのWord Syncを標準 として使っていたのだが、その段階でもChronosと992/2の威力を目の 当たりにしていたものだった。オーケストラの総員が瞬間にして放つ 強烈なフォルテの冒頭部分はボリュームを意識しながらも、その後に 消滅していくホールエコーの美しさについつい引き付けられて雄大さ を感じるまでのボリュームに上がってしまうものだ。 ここで、Chronosと992/2を接続したときに起こることを端的に表現 すれば「楽音のフォーカスが一層研ぎ澄まされ、各楽器の音場における 投影面積がぎゅっと絞り込まれ、そして楽音の周辺に開けた空間には それまで見えていなかったホールの大きさを、余韻感の更なる継続と して滞空時間が更に長くなったエコーによって表現されてくる」と いうものである。この方向性へのシフトがChronosと992/2を追加した 時のホール録音における顕著な変化として感じられたものだ。 44.1KHzのWord Syncによる、ここまでの変化は私も承知しているので 特に驚きはしなかったのだが…。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- dcsの992/2はコンピューターを接続して内部のプログラムを書き換え れば様々なデフォルトを設定できる。そして、通常出荷するときの デフォルトとしては12個あるWord Sync出力端子の1〜5番、7〜11番 は44.1KHzのWord Sync信号を出力している。そして、6番と12番は 当初から88.2KHzのWord Sync信号を出力するように設定されている のだが、従来のP-0sではそれを受け入れることは出来なかった。 バージョンアップを終えたP-0sに対して、今初めてこの88.2KHzの Word Sync信号を与えるべく、接続をし直した。この時も前述のよう に同期タイミングは既に設定されており、労せずしてチューニング されボリュームが上がるのを待つばかりとなっていた。 そして、小澤征爾のタクトが振り上げられた!! いやはや…、この時の驚きをどのように言葉にするべきだろうか!? 弦楽器群、管楽器群、そして打楽器が蓄積していた情熱をいっせい に解き放ったように吹き荒れたエネルギーがムジークフェラインの 空間を駆け抜けていくのだが、その楽音が時間軸に対して立ち上が る角度がそれまでの倍の傾斜もあろうかと思うほど急角度に変化し、 今までの“楽音の吹け上がり”が緩慢なものに思えてしまうのだ。 しかも、それは馬力が大きくなったという単純なものではなく、 各々のパートにおける音響的な視野がやはり倍以上に遠くが見晴ら せるように解像度の向上が観察される。そして、音像そのものが 占める空間を縮小してくるので、周辺にはエコーが拡散していく ゆとりが一層大きくなっているではないか。Nautilusの空間表現 能力はこのためにあったんだ…、という無言のアピールが新時代 のデジタル再生にスピーカーがどれほどの対応力を持っていたのか を余裕を持って私に証明してくれた。P-0sのお陰である!! 44.1KHz 16bitでこの音…、私がSACDやDVD-Audioを平然と静観し H.A.L.に取り入れようという熱意が湧いてこない理由もこにある。 88.2KHzのWord Syncの威力はそれほど大きい!! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- GOLDMUND MIMESIS 20MEはMarkLevinsonのNo.30.6Lのような大きな ディスプレーで受け入れたサンプリング周波数を表示することは ないが、ちゃんと96KHz 24bitの処理能力を備えている。さて…、 それでは、今回のバージョンアップの目玉であるハイサンプリング の実態を聴きたくて我慢が出来なくなってきた。 既に述べているリアパネル中央のサンプリング周波数の切り替えを 88.2KHzの中段に切り替える。MIMESIS 20MEのリアパネルには動作 状況を知らせる小さな黄色いランプがあり、サンプリング周波数を 切り替えた瞬間に一度点滅し「カチ」という微妙な動作音をとも なって88.2KHzに自動追随したことを知らせてくれる。 さあ、サンプリング周波数とWord Syncともに88.2KHzとした。 再び、小澤征爾のタクトが振り上げられた!! 「おおっ、これは…。う〜ん、なるほどね…」と私はうなった。 Word Sync/88.2KHzでP-0sからは44.1KHz 16bitの出力。これとは趣の 違う高精細の世界があった。前述の“楽音の吹け上がり”と例えた楽 音のエネルギー感は若干影を潜めるのだが、それに代わって登場した のは楽音のグラデーションの階層表示が倍になったような緻密さなの である。オーケストラのすべての楽音の出始めと終焉の部分にぐっと くる魅力を提示してくれたWord Sync/88.2KHz + 44.1KHz 16bitに対し て、発散したエネルギーの上端で主張するのではなく、楽音が発せら れていく過程で、弦楽ひとつずつ、管楽器の一本ずつ、というような 解像度の向上がオーケストラ全体をsophisticateしてくれるのである。 これを何と例えたらよいのか…!? 「木を見て森を見ない」の例えがあるとしたら、Word Sync/88.2KHz + 44.1KHz 16bitでは森の樹木の濃厚な緑がまず印象に残り、それを 距離をとって眺めてみた情景と言えるかもしれない。日差しに照らし 出され輝くばかりの新緑を自然界の力強さとして受け入れた、色彩が 集合したことによるインパクトの強さだったかもしれない。 それがWord Sync/88.2KHz + 88.2KHz 24bitにおいては、森の中を 散策するがごとく、一本一本の他社多様な樹木を集合体ではなく 独立した存在として“音響的な視力の向上”として聴く者に自然な 解像度の高まりを提供してくれるのである。ひたすら美しい…。 44.1KHz 16bitのCDにこれほどの可能性が隠されていたとは誰が 想像しただろうか。著作権保護のためにコピーされないメディアと して新方式の普及が叫ばれているが、私たちは本当に44.1KHz 16bit の可能性を知り尽くしていたのだろうか…。バージョンアップの 投資効果はP-0sの出力だけではかり知るものではない。 P-0sが受け入れるWord Syncにこそ、この投資効果の本領が隠されて いたのである。Chronosと992/2の存在感、それはP-0sの進化に伴って 更に大きく開花することを私は保証する!! 3「dcs Elgar plus 1394への動脈」 さて、前述のようにWord Sync/88.2KHzの魅力をいやというほど 見せ付けられてしまった私は、これ以降の試聴においてWord Syncを 44.1KHzに戻すことは到底考えられないことであり、P-0sの真骨頂と して当面このポジションを変更することはないという前提で、いよ いよdcsのシステムへと切り替えていった。 まず、関心を持ったことはP-0sの出力は44.1KHz 16bitにして、 Purcell 1394に送り込み、ここで176.4KHz 24bitに変換し、そして Elgar plus 1394へDual AESで送り込むという経路。そして、P-0s から直接Dual AES/176.4KHz 24bitをElgar plus 1394へ送り込むと いうD/Dコンバーターの能力としての比較である。 さあ、今度も小澤征爾のタクトが振り上げられた!! Purcell 1394における176.4KHz 24bitへの変換を最初に聴く。 「う〜ん、先ほどまでのMIMESIS 20MEの個性とは違って、各帯域の 楽音の表現に違うテイストが発揮されているぞ! しかし、176.4KHz のあり方は数値だけは上回るが、先ほどのMIMESIS 20MEでの半数 でのサンプリングでの演奏がそれほど素晴らしかったということを 逆に思い知らされるな〜。解像度では互角と言っていいくらいだ」 これがデジタルのマジックなのだが、スペックが大きくなれば すべてに勝るというものではない。二倍のサンプリング数で あっても、更に上質なテイストに一度浸ったしまった私は数値の 変化も冷静に見てしまう。特に驚き…というところまではいかない。 そして、P-0sから直接Dual AESをElgar plus 1394につないで 再度同じ演奏を繰り返すと…。 「お〜、なるほど…」どちらが極めて良い、というレベルでも ないのだが、Purcell 1394における176.4KHz への変換にはやはり ケーブルの長さもあるのか、ちょっとスピード感が鈍ったような 感触を覚える。その他の楽音の質感に多大な変化はないのだが。 確認のために、再度Purcell 1394でDual AESに変換しElgar plus 1394に接続して聴き直す。「やっぱりそうだ!! P-0sから直接の 方が早い!!」これはP-0sとPurcell 1394各々のD/Dコンバーター の能力の違いというレベルではないだろうが、私の耳では微妙な 感触の違いとして記憶に値する変化を感じてしまった。 しかし、ここである思い付きが…。 P-0sの出力をシングルで88.2KHzとし、これをPurcell 1394で 176.4KHzへと変換する。これにはちょっと興奮して作業を急いだ。 またしても、小澤征爾のタクトが振り上げられた!! 「お〜、これいい!!」 先ほどのMIMESIS 20MEで感じ取っていた44.1KHzと88.2KHzの質感の 相違であるが、これと酷似する変化があるのだ。Purcell 1394に 44.1KHzを入力してDual AESに変換した場合には、各パートの瞬発力 がどうしても先に印象に残ってしまうのだが、Purcell 1394に入力 するのを88.2KHzにしてDual AESに変換しても、MIMESIS 20MEで感じ たようにエネルギーの瞬間的な発露の力感を抑制して解像度の向上 に結びつけるということにはならなかった。調子の良い表現だが、 楽音の時間軸に対しての立ち上がり角度を、そのままの傾斜として 急激なエネルギーの放出を見せながら、そこに解像度の高まりが 感じられるという一挙両得の見事なウィーン・フィルハーモニーが そこに現れたのである。静まり返った夜の試聴室に私のうなり声が ムジークフェラインの余韻に重複していく…。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- PCM伝送のほぼ究極と思われる二つのD/Aコンバーターと、そして Purcellの同居生活のスタートでは、何と言う好都合な相互リンク が実現したことか。結局は、P-0sを使用してPurcellとElgar plus の三者で織り成した演奏が最も好感を得たものである。しかし、 これはここでの環境と夜間という時間帯、そして私の耳という条件 が揃ってこそ聴き取れた微妙な相違点の検証であろう。 さて、私がバージョンアップ前に標準として演奏していたのは Purcell 1394によってDSD変換しElgar plus 1394へと導いて直接 Nautilusのチャンネルディバイダーへという流れであった。 このシステムのあり方に新しいP-0sがどう関わってくるのか、これを 確認しなければ残業している価値がない(^^ゞ というものだ!! まず、Word Sync/88.2KHzにサポートされた44.1KHzを従来通り Purcell 1394に送り込み、IEEE1394の頼りないケーブルを使って Elgar plus 1394へと接続する。これが従来の流れだった。 さあ、今度も小澤征爾のタクトが振り上げられた!! 「あ〜、この違いにははっきりと覚えがあるぞ!!」 そうだ、PCMとDSDの相違点をなんども検証し、結果的に私がDSDを 標準としてElgar plus 1394をここで演奏するようになったポイント が今回も記憶の坂道を駆け上ってきた!! 極めつけの解像度を実現したつもりのハイサンプリングPCMであった が、余韻感という楽音の残滓というか、ホールの空間での置き土産の ように、Nautilusの周辺を消滅寸前の最後の一滴ともいえる響きの 最終部分がDSDの方が美しいのである。それは、これほどの大編成の ような演奏に限らず、バロックや小編成のジャズ・バンドが織り成す アコースティックな余韻感の存続性にも現れている。 まず、従来の44.1KHzからDSDという図式にWord Sync/88.2KHzの 影響力が行使されて、以前の同じ形式による演奏とは二周りの消滅 直前の情報量の補足として好印象が先行した。これはいい!! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- さてさて、今夜のフィナーレはどこに落ち着くのか!? P-0s+Purcell 1394+Elgar plus 1394という以前から定着している システムラインにとって、更なる可能性はないのだろうか…。 バージョンアップしたP-0sを更に使いこなす上での手法とは…!? 先ず、P-0sのリアパネルに目をやって、AESの出力をシングルモード とする。次にPurcell 1394に88.2KHzを送り込み、そこからElgar plus 1394に接続してDSD変換を行う。三者の最高の技術的到達点を引き出し、 ここのNautilusに新たな可能性を付加してやりたい…。 さあ、フィナーレだ!! 小澤征爾のタクトが振り上げられた!! 「これだ、これですよ、これ!!」 私は、この数時間で掘り当てた宝物を胸に抱きしめたごとくの緊張と 興奮を覚え、演奏から耳と視線を振り切ることが出来ないくらいに 硬直してしまった。そう、フリーズしてしまったのである。 これまで、ワンステップずつP-0sの進化を現在でも最高レベルの D/Aコンバーターで引き出しながら、お粗末な文章で皆様にその 再生音の段階的な向上を述べてきたが、各々の段階で私が言葉に 置き換えてきた聴覚からwordへの変換という難儀な手段に対して、 ご都合主義と言われるだろうが、この時の演奏はこれまでのプロセス のすべての魅力を包み込んでしまったのである。 これまでの一言一句の感動の言葉に“更に…”という一言を追加して 読み返していただければ、いや、もうそれしか言葉に尽くせない充実 感が三者の共同作業によって、今この目の前で実現したのである。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 数時間に渡る検証で使用した曲はひとつだけであった。それだけ ハードウェアのセッティングのルーティーンに多数の選択肢があり、 曲数を増やすことでの比較試聴の煩雑さと誤認を避けたかった。 しかし、この一曲には…。 弦楽器から打楽器まで、多彩に発音原理の違う楽器群がある。 ムジークフェラインという天井を見上げるほどの空間情報がある。 スタジオ録音に勝るとも劣らない瞬発力とエネルギーが選曲にある。 これらの多種多様な比較対照の楽音で分析したものは、他の多様な 録音についての“高度な推測の根拠”となることを私は体験上で 自信を持って言えるものである。つまり、他の楽曲でも、今夜の 変化の方向性をかなり高い確率で予測できる自信が持てるという ことだ。 P-0sのバージョンアップは投資効果をどのように推し量るか。 それは一過性のものではなく、P-0sの前と後に皆様が使用されるコン ポーネントによって将来数倍の価値観で還元されてくるであろうと、 私は今回の検証で“音質的保証書”としてサインするものである。 今夜の体験を再現するには、相当な気配りと気力が必要になるだろう。 でも、それを実行したら皆様は喜んでくださるだろうか…。 既に、明日からの感動の種を、このメールから皆様の胸に振り撒く ことが出来たのであれば、今夜の私は本望である。 「将来の可能性をP-0sに託して後悔はしません!!」 |
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担当川又 |
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