発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナ5555 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556 H.A.L.担当 川又利明 |
No.180「11年前の回想から現在へと続く思い。芸術って何だろう!?」 |
1990年7月のある日。私は通勤の山手線の車内吊り広告の一枚に目が留まった。 「えっ!?スーパー・リアリズムの世界? リチャード・エステス?」何?それ? しかし、その広告の一枚の写真とも思えるような“絵”が瞬間的に私を魅了 してしまった。それはリチャード・エステス1987年の作品「ウィリアムズ バーグ橋」というタイトルで写真よりも現実的な作風に当時の私はしびれた!! まだ幼い長女と家内を連れて待ちきれずに東京は新宿の伊勢丹美術館へと その広告の一枚の絵に惹きつけられるように「リチャード・エステス展」 へと出かけていった。名だたる名画というものを何度か鑑賞したことは あったが、そのほとんどが抽象画として評価されてきたものだったのか 私にはまったくといってよいほど理解の圏外であり「芸術って難しいな〜」 とため息をつくのが関の山であった。 「人間は実際のものを見ようとはしない、見たいと思っているものを 見ているに過ぎない…」とは最近読んでいるアメリカの作家の一文。 あー、やっぱりそんなものかなー? しかし、このときの「リチャード・エステス展」で私が体験したものは、 まさに私が求めてきたものだったのである。一枚の絵に近づいては離れ 離れては近づく…。その場に引き止めて放さないエステスの絵は、当時 から手がけ始めたハイエンド・オーディオの思想に何とマッチすること だろうか…。と、ビジュアルな感動を音の世界にも比喩しようと思わず 書き連ねた随筆がこれであった。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto17.html しかし、当時はワープロを使って原稿を書いており、今のようなwebの 活用などは言外のものであり、ご覧のような活字だけの自己満足で 終わってしまったものである。 さて、それが今になってどうして…!? というと、まだ続きがあるの だが、私は先ほどまで検索サイトで一生懸命にリチャード・エステス の作品は何か見つからないかと探しました。 http://sunsite.sut.ac.jp/cgfa/e/p-estes1.htm http://sunsite.sut.ac.jp/cgfa/e/p-estes2.htm http://www.articons.co.uk/estes.htm *他にもリチャード・エステス情報がありましたら教えてください。(^^ゞ 小さな画面であり、年代的にもちょっと古いものなので私が感銘した すべての作品から受ける衝撃とは比べようもないが、その片鱗だけで もわかって頂ければと思ったものです。当時の個展で購入したパン フレットにはもっと多くの作品が掲載されているので、ご来店の際に は皆様にも見て頂ければと思います。 これらから私が感じ取っていたキーワードは随筆のページの冒頭に あるパブロ・ピカソの引用がすべてを象徴しているものです。 「芸術は真実でない。とは、我々誰もが知るところである。 芸術とは真実を、少なくとも我々に理解すべき真実を、 認識させるための虚構である。 芸術家は、虚構を真実として他者に納得させるすべを知らなく てはならない。」 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- さて、この芸術とは…、という考えようによっては難解な分野には いわゆる“作家”としての活動を営まれることで、その範疇に自然に 定着した人生を送っておられる人々が存在しているということは皆様 もご承知のことであろうと思う。そのお一人が何とハルズサークルの 会員にもいらしたのである。 本日の正午くらいだうか、私に郵便が届く。「二つ折り厳禁」と記された 大きな封筒を開けてみると…。「おおー、何と!!」品格漂うモノクロ 写真によって構成された、そう!いわゆるSophisticateされたカレンダー が入っているではないか。 http://www.kn-photo.com/jp/calendar/2002/calendar02.html 思わず私は…「おおーーー!! カッコいい!!」と狂喜してしまった。 ハルズサークルのお一人であり、プロの写真家である永嶋勝美氏の 作品である。そして、更に限定300部しか制作しないというではな いか!! これは大切に当フロアーに掲示させて頂くことにした。 ご来店の皆様には実物をぜひご覧頂ければと思います。 オーディオに興味を持つ方で同様に“写真とカメラ”に関しても 造詣の深いお客様を何人も存じ上げているが、プロとしての共通の “追究する姿勢”ということを評価してくださったということで、 以下のようなメールも頂戴している。 私がお送りしたメールで「私は自分でも「この道のプロ」を自認して おりますが、逆に申し上げれば他の分野のプロフェッショナリズムに は深く尊敬の念を抱くものです。」という一文に対して氏のご返事は。 「秋葉原に出向いた時に、HALには何度か伺いましたが、川又様とは 未だお話をしたことは御座いませんが、そこで聞いた音楽の素晴らし さに惹かれて、大したオーディオを使用して無いにも関わらず、ハル ズサークル会員にさせて頂いております。HALにて聞いた音楽は正に 再生芸術の一つだと思っている私にとって、そこでどんな情報や話が 交わされているのか興味を持ちました。(これが一番危ない事なのか も知れませんが....泥沼への道。)自分とは違う他の分野のプロフェ ッショナルに興味を抱くのは私も同じです。刺激になりますし影響も うけます、更には自分自身のボキャブラリーも豊かになりますから。」 写真という、その道のプロに評価して頂いて本当にうれしく思いました。 その永嶋勝美氏のweb siteをご紹介しましょう。 http://www.kn-photo.com/ 私も色々なサイトをのぞきますが、センスあふれる構成にうなるもの があります。皆様もぜひ一度訪問してみてください。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*- さて、今回の主題である「芸術とはなんだ!???」という定義に関して、 私のシンプルで誰にでもわかりやすい答え。それは…。 「人を感動させるもの、それすべて芸術!!」 ちょっと危険であり無知な定義かもしれませんね。だって、ピカソの 描いた世に名作と言われる作品を見ても私は感動しなかったのだから? でも、意図しなかった巡りあわせで知ることになったリチャード・ エステスには心底傾倒してしまう。そして、かのエステスは実際の 風景を写真に納め、それをアトリエで観察、分析しながらキャンバス にもうひとつの自分の世界を描いていく。 写真を見て描いていてもすべてが写真の通りに描かれているわけで はなく、その意味では明らかに創作活動であり非現実の世界であり ながら見る人には「スーパー・リアリズム」を印象付けるのである。 その回想から端を発して写真家としての永嶋勝美氏の作品を実際に 手にして、かつ氏のサイトをめくりめくって、芸術性の共通項を いくつかは発見したような気持ちになってしまったのである。 さて、前述の定義「人を感動させるもの、それすべて芸術!!」とは 便利なもので、夕焼けや雪景色の美しさという自然現象から、人間 の手になる様々な作品(もちろん音楽も含んで)まで非常に広範囲な 理解が出来るというものであり、かつ対象となる作品によっては 私のように鈍感であり感じないものもあるということ。すると、芸術 性の起源というか根源は生きている人間の数だけ種類があるというこ とになる。地球上には数十億通りの“芸術性”があるということで、 個々の人間が内包している“感動の種”を私は芸術と称することで 自分を納得させることにした。皆様いかがでしょうか…!!?? |
このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。 | |
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