発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナミックオーディオ5555 TEL 03-3253-5555 / FAX 03-3253-5556 H.A.L.担当 川又利明 |
2017年11月10日 No.1429 H.A.L.'s One point impression!! - Sentimental Reasonsの魅力 Vol.2 |
「私の仕事は聴く事から始まる!!というのは不肖、私の格言ですが…。 それはコンポーネントだけではありません。良い音楽ソースの発見という事も 皆様に対するプレゼンテーションの一環だと考えています!!」 と始まった素晴らしいディスクの紹介は下記にて一般公開しました。 H.A.L.'s One point impression!! - Sentimental Reasonsの魅力!! http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1427.html 上記では前置きが大変長くなってしまいましたが、これからはストレートに各曲の ご紹介を述べていきたいと思います。その二曲目がこれ「Kakurembo」です。 2. Kakurembo / CD(通常盤) [BRPN-7006] 私はうかつにも最初にこの曲を聴いた時に、「かくれんぼ」の旋律が演奏されて いたことに気が付かず、最近になってあ〜そうなのか〜と気が付いたものでした。 冒頭は仲野真世の短いピアノソロ。「もういいかい〜」「まあだだよ〜」という 軽妙なフレーズが演奏され、タイトルをメロディーで表した18秒間の導入部。 前曲同様にリヴァーヴを施されたピアノの響きは実に素晴らしいが、実際に録音に 使用されたピアノとはこれ。この詳細は最後に後述するのでご注目下さい。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20171107-DSC00010.jpg さて、この写真でマイクのブームスタンドが左右から伸びているが、これは録音用の マイクを取り付けるためのものではない。下記のようにして使っているもの。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20171107-DSC00008.jpg 細かい配慮だが、ピアノの譜面台で起こる僅かな反射と共振を避けるために、 録音サイドから要求している細かい配慮だという。これは後日紹介するスタジオ 録音の「MIWAKU」においても同様であり、制作者のこだわりとして紹介しました。 次には池田芳夫のウッドベースが弓を使ったアルコでおどろおどろした唸りが奏され、 その後に約三分間に渡って馬場高望のドラムとベースが一種の前衛音楽とも思える ようなかけあいの演奏が続くのだが、ESOTERIC Grandioso P1のカウンターが00:30と なった瞬間に第一の衝撃がやってくる。 左側で38インチ本革張りヘッドのグランカッサがHIRO Acousticの周辺の空気を 揺さぶって豪快な低音を打ち鳴らす! 先ずは、このダイナミックな低域の波動感で オーディオマニアの胸を鷲づかみにしてしまう醍醐味に心躍る期待感が続く! その一瞬後に今度は右側から32インチのプラスチックヘッドのグランカッサの 連打が天井の照明器具のフードをピリピリと振動させる強烈な低音を繰り出してくる!! 細かく震えるように刻むウッドベースと、重厚な低音ときらめくようなシンバルで スティック先端の連打が絡み、時折弾けるようなタムと透明度の高いパーカッションの インプロビゼーションによって二人のプレーヤーが空間を支配していく演奏が物凄い! そして、ピアノが入ってくる3分過ぎにはセンターは24インチで両面ヘッドという キックドラムというみっつの大太鼓が炸裂するという録音なのです!! かくれんぼをしている子供たちのハラハラドキドキという心理がベースとドラムの 巧妙な掛け合いの演奏で描かれ、仲野真世の弾くメロディーが数舜の安らぎを醸し出し、 次第にテンポアップしていくリズムが高揚感をそそり、エンディングへとなだれ込んで いく6分27秒の演奏が何とも短く感じられる!! これほど文章表現の難しい曲はないと思われるのですが、三人のプレーヤーの アイコンタクトで展開されたであろうダイナミックな演奏が終演する最後の瞬間、 仲野真世のピアノの余韻が長く美しく消えていく情景に私の感動がオーバーラップする! 2. Kakurembo / CD-R Limited Edition [BRPN-7006R] 前回の1. Septemberの試聴で勘どころはつかんでいるので、早速二枚目のディスク。 「さー」を「サー」という表現で変化するテープヒスは前回同様に感じられる。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20171001-tape.jpg 以前にも上記の写真にて、この録音に使用された2インチ・マスターテープの物量と 威力というものをご理解頂ければと思っていたが、実際にこのテープをローディングする STUDER A827のモデュファイバージョンのテープレコーダーのクローズアップが下記。 http://www.dynamicaudio.jp/file/2011107-2in8tr.jpg 更に8トラックのヘッドユニットが下記の画像。 http://www.dynamicaudio.jp/file/2011107-2in8tr-head.jpg 実際の録音現場では下記のように別室に設置され、マイクアンプはクリエイションと いうイギリス製のもので、ディスクリートリモートマイクアンプとして1dBステップで マイクゲインを調整し、リアルタイムでダイレクトにSTUDER A80の8トラックに 記録されていく。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20171107-DSC00039.jpg それにして、量産品のCDとこのCD-Rとの格差は大きいというのが実感。そして、 同じ44KHz/16bitというフォーマットながらディスクの違いにおいて起こる変化は 流行のハイレゾという言葉に一種のアンチテーゼとなるだろう、この余韻感の素晴らしさ! そんな思いが頭をよぎると池田芳夫のウッドベースが唸り始めた。すると… 「おー!!ベースの質感が色濃くなって音像が立体的になってるぞ!!」 ピアノの余韻感の素晴らしさを前曲同様に確認したが、初めて聴くホールで演奏する ウッドベースの質感が先ず違う。ぐっと沈み込む重量感と相反するような倍音の 伸びやかさと輪郭の鮮明さ! これはいい! とてもいい! 時折のドラムによる高音階のパーカッションがシャーン! と空間に浮かびやがて00:30。 先ずは38インチ本革張りヘッドのグランカッサが空気を揺さぶる! カタカナの擬音語では語り尽くせないエネルギー感を込めて、直ちに右側からの 32インチ・プラスチックヘッドのグランカッサが壮大な連打を繰り広げた! 「これは! なんとしたことか! 低音打楽器の質感がくっきりはっきり違う!」 HIRO Acousticのウーファー低域エンクロージャーの高さはちょうど90センチで、 38インチ本革ヘッドのグランカッサの直径は96.5センチという比率になるが、 完全密閉型のHIRO Acousticはあくまでも忠実に超低域までを再生する。 このディスクの制作者から30Hz付近の低域まで収録したとコメントがあったが、 このグランカッサの圧倒的な瞬発力と透明度の高い打音に惚れ惚れとする。 そして、今度は直径82センチのプラスチックヘッドのグランカッサの打音が続くと、 この両者の低音の質感に克明な違いが聴き取れる解像度の素晴らしさに圧倒される。 単純に言えば大太鼓の音質比較となるが、CD-Rでの音質が通常盤に比べて鮮明な 打音の違いをこれ程に表現するとは予想していなかった! プラスチックヘッドのグランカッサはより倍音を含み、ピンと張り詰めたテンションが 楽音の基部に感じられ、それに対して本革ヘッドの打音はふっくらとした余韻をはらむ。 この違いが出せるスピーカーであって欲しい。HIRO Acousticはさすがということか!! ブリアンプのボリュームは前曲同様に-22dB、サイドシンバルのセンター近くを細かく 踊るように跳ね回るスティックが光の残像をようにきらめくリズムを空間に放ち、 ほとんどシェルのないロータムのヘッドをパシッ!とヒットした瞬間に、その はちきれんばかりのテンションが余韻へと移行し長い残響を奥行き方向に放つ! その打撃音の何とも素晴らしい透明性は量産CDとの違いを更に明確にした! これらドラムの音を聴くうちに前曲でのミックスダウンのあり方と違うという 変化に気づき始めた。オーバートップのマイクで収録したシンバルと比較して タムやスネアには遠近感があったものだが、この曲ではシンバル以外のパートも 同じ距離感で録音されているように感じた。とにかくインパクトの瞬間が鮮明だ! これ程の違いが感じられるのだから、次はどうなるのか? はやる好奇心はディスク交換を急かせる。さて、この先に何があるのか!? 2. Kakurembo / CD-Rゴールド Premium Edition [BRPN-7006RG] リモコンでトラック2のボタンを押して10秒間。もう、これでやられた! 冒頭のピアノソロが、かくも滞空時間の長い残響をもたらすということに衝撃を受ける! テープヒスの質感はほとんど変わっていないのに、ピアノという楽音の情報量に これ程の違いが出てしまうという盤質によるいたずらは更に驚きのネタを増やす! 続くウッドベースでも新たな発見が! 音階は同じなのに音色が明るく鮮やかになっている! 当然のことながら楽音の質感で輝度が高まれば音像の輪郭も引き締まり鮮明さが高まる! この曲で頭の中に作っておいた二枚の記憶のファイルとクロスチェックすると、 最初のページで感じられた変化によって次にめくるページへの予測が出来るように なってしまったのか、00:30のカウンターから直ちに前回との比較において相違点の 項目が新たなページに書き込まれていく! 「どうしてだ! グランカッサのインパクトの瞬間に凝縮された厚みと重みがあるぞ!」 38インチ本革ヘッドのグランカッサの最初の一打の瞬間に以前になかった兆候を発見した!! プラスチックヘッドの倍音の多さに対して本革ヘッドでは微妙な弛緩が多くの空気を はらみ響かせるような質感と述べたものの、今度は微妙な緊張感を一滴垂らし、打撃の 瞬間の本革ヘッドを恐る恐る指で触れたら物凄い振動に思わず手を引っ込めてしまった ような鋭く力感ある衝撃を感じた。指先を痺れさせるほどの弾けるエネルギー感が凄い! この変化は当然プラスチックヘッドのグランカッサにおいても発揮され、打音に 含まれる倍音成分が伸びる余韻の中に観測されるように増量されたことに気が付く! それは打撃音として空間に広がっていく余韻の拡散領域が前回よりも広範囲であり、 その響きのレイヤーが増加しているのでホール空間のエアボリュームを更に拡大する ことにつながっているのに気が付く! なんとまあ、発見する項目が多いことか! 大太鼓の情報量にばかり気を取られているわけにはいかない。サイドシンバルと ハイハットのインチの異なる金属音はエッジ付近とセンター付近では音色が違う。 きらめくシンバルの上で高速で踊るようにバウンドするスティック先端が、 宙を飛び交差して空間に色彩豊かな音の粒子を振りまいていく有様が前回よりも クリアーに展開する変化に私はチェックマークをつけて集中し聴き続ける! そして、フロアータムの豪快なヒットが織り交ぜられ、対照的なロータムの乾いた 打音が炸裂するスピード感も高まっているのだから呆れてしまう。 5分過ぎにはアルコで奏でるウッドベースとピアノがシンクロし始め、ドラムが 速足で歩くようなリズムを繰り返す展開になり、オーディオ的4K解像度の演奏で 空間が満たされる快感に思わず足でリズムをとる私がいた。でもまだ先がある! 2. Kakurembo / ガラスCD-R [BRPN-7006GL] 下記の10ページ目から解説されているガラスCDのメリットを再確認したい。 https://www.briphonic.com/BriphonicCatalog.pdf 前記のポリカーボネイトでのCDとCD-Rでは大量生産か一枚ずつの手作りとなる データの書き込みかという争点になるが、今度はレーザー光線の透過と屈折という 物理的な視点で優位性を持つガラスCD-Rでの試聴。この前置きも繰り返しておきたい。 先ずはテープヒスの違い。「さー」から「サー」へ、そして今度は「シー」という イメージで全然違うのです!!これも同様に冒頭のピアノソロで確認した。そして… 「いったいなんでだ! どれもこれも余韻の長さは倍化して音像が極めて鮮明だ!」 冒頭のピアノでの質感の向上と響きの領域の拡大は前曲でも確認したにも関わらず、 その変化量の大きさにガラスCDの圧倒的な優位性がここでも実感される! そしてウッドベースだ。弓と弦の摩擦感が今までにないリアルさでスピーカーの センターから繰り出され、Sennheiser MD421ダイナミックマイクと管球式マイク アンプ使用SCHOEPS M222+MK4 capsuleコンデンサーマイクの二本を同時に使い、 そのマイクアンプ出力を抵抗のみでミックスするという巧妙な録音の成果が見事に 音質に表れている。ざらっとした音色と高い音階での響きの延長が存在感を高めた! ウッドベースとドラムのデュオパートの絡み合いはステージの上で下記のような 配置にて演奏され収録されていたのです! http://www.dynamicaudio.jp/file/20171107-DSC00007.jpg そして、00:30のカウンターからグランカッサが弾けた! そうです、重厚な低音なのに弾けたという表現がぴったりする高速反応の打撃音! こればかりは言葉で説明するのに悩んでしまうのだが、その鮮烈なインパクトの 瞬間のテンションの引き締まり方をどう表現してよいやら言葉に詰まる。 まるでマレットの代わりに、鋼の薄板をぐいっと曲げて狙いすました瞬間に手を放し、 しなりきった鋼の先端がグランカッサをバシッと叩いたようなイメージだろうか! だから弾けると言いたかった! 同時に低音楽器の余韻がこれ程空間に浸透し、更に広大な音場感として拡散していく 空間描写力という項目に過去最高得点を付けざるを得ないだろう。素晴らしいのです! ホール録音という特徴は演奏空間のエアボリュームを聴き手に伝えることなのだが、 実際の録音は下記のようなホールで行われた。この奥行き感がキックドラムの質感に 私の大好きな響きをもたらしているという実感が伝わる画像ではないですか! http://www.dynamicaudio.jp/file/20171107-DSC00006.jpg 空席の客席まで含めた大空間に響き渡る三人の楽音がリアルにイメージできると いうことが本当に素晴らしいのです!!この空間再現性が素晴らしいのです!! 左右に展開する各種シンバルに仮にLEDの光源を貼り付けたとしたら、一瞬の強打と 細かい連打によって光の残像が踊るように見えるほどの透明感の素晴らしさ! また、ロータムのようにヘッドのインパクトだけか空間を走り抜けるハイスピードな 響きの瞬間が、打音の発祥点をここだという感じで空間にピン止めし、その一点から 周辺に飛び散っていく打撃音の消滅まで長く鮮明な航跡を残す描写力に息を呑む! 何と贅沢なことか、このアルバムの中でたった一回しか演奏されない楽器がベースと ドラムのデュオのパートで厳かに鳴らされる。 それは38インチ口径の巨大なゴング(ドラ)だ! ゆったりとした鳴りっぷりなのだが、 口径が大きいので残響がいつまでも続く。空間に消滅していくはずの響きの減衰が ガラスCDによってかくも延長されているのかと新たな驚きにため息が伴う! このグランカッサやゴングを高度なテクニックで演奏する馬場高望のドラムセットの 録音風景という貴重な画像が次の写真です。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20171107-DSC00004.jpg これだけのパーカッションを一つずつ鳴らし分ける馬場高望の高度なテクニックは ガラスCDにおいて最高レベルで表現された! ひとつずつ楽器に対するアタックの違い、 打つポイントによって使い分ける音色、こだわりのチューニングなど全てが開花した!! 「もういいかい〜」「まあだだよ〜」というメロディーに続くエンディングで、 仲野真世はペダルを踏むことを堪え、ピアノの余韻の最後の一滴が消えるまで 澄み切った余韻を残していく。 この曲ではピアノがかくれんぼの鬼を演じている。エンディングで鬼のピアノが 「み〜つけた〜〜」の「た」で左手の低音はベーゼンドルファー“インペリアル” モデル290(97鍵仕様)一番下の音、C(ド)の音を弾いている。 http://boesendorfer.jp/products/standard/model290.html 一般的なピアノは通常88鍵なので、この音はこのピアノにしかない。 この音を弾く事は一般的なクラシック音楽ではほとんどないと思われ、現代音楽 ではあるかもしれないが、このように余韻を残す演奏はほぼないだろう。 実際に録音に使用されたベーゼンドルファーを下記の画像にてご紹介致します。 最低音を長6度低いCまで9鍵拡張している色違いの鍵盤がお分かり頂けると思います。 https://www.briphonic.com/290.html 仲野真世は余韻を大切に大事にして演奏するが、その響きの最終部までがしっかりと 録音に取り込まれているのだ。聴く側も余韻の最後の一滴まで味わいたいと思う! いやいや、前曲でのガラスCDの威力は分かっていたものの、タイトルのように 隠れていた音の情報量に驚き、私は思わず「み〜つけた!」と小さく叫んでしまった!! この最後の余韻を是非味わって欲しい!! 果たして皆様のシステムでこの四種類の、いや! せめてガラスCD以外の三種類の ディスクでも良いので、どんな空気感と臨場感が再現できるのかに挑戦して頂きたい!! 今後、ハルズサークル特典として仲野真世のピアノトリオによる録音作品の全てを 会員特典価格にて販売していく新企画を実施致します!!続報にご期待下さい!! ★販売企画実施の前に、もう一枚のディスク「MIWAKU」の試聴インプレッションも お伝えしなければと思っていますので、もう少しお待ちになっていて下さい。 https://www.briphonic.com/BriphonicCatalog.pdf ■追記 以上は下記のシステム構成にて試聴しています。ここにもご注目下さい!! ◇ H.A.L.'s Sound Recipe / H.A.L.'s E.S.Insulator-inspection system ◇ http://www.dynamicaudio.jp/5555/7/H.A.L.'s_Sound_Recipe_H.A.L.'s_E.S.Insulator.pdf そして、盛り上がってきました下記の企画にもご注目頂ければと思います!! http://www.dynamicaudio.jp/5555/7/ESI/ ハルズサークル特典は今からのご入会でも間に合いますので是非どうぞ!! |
担当:川又利明 |
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