発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナミックオーディオ5555 TEL 03-3253-5555 / FAX 03-3253-5556 H.A.L.担当 川又利明 |
2017年5月27日 No.1396 H.A.L.'s One point impression!! - Sonusfaber AMATI Tradition!! |
「H.A.L.'s One point impression!! - Sonusfaber AMATI Tradition!!」 「H.A.L.'s One point impression!! - Sonusfaber GUARNERI Tradition!!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1387.html 「H.A.L.'s One point impression!! - Sonusfaber SERAFINO Tradition!!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1388.html 上記のように100点満点二連続の評価を下したのちに、残るはトップモデルの AMATI Traditionのみということで、極めて短期間ではありますが、輸入元より 現在のところ国内唯一のデモ機を搬入して頂きました。 当フロアーのリファレンススピーカーたちと並べて見ましたが、位置的に手前に あるので大きく見えますが実際のサイズを次に確認してみましょう。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20170523-amati_tr.01.jpg AMATI Traditionのサイズと重量は次の通り。 幅411×高さ1170×奥行き540mm(突起部含む最外形寸法) 総重量61Kg 同じフロアースタンディングのSERAFINO Traditionと比較してみて下さい。 SERAFINO Traditionのサイズと重量は次の通り。 幅396×高さ1094×奥行き510mm(突起部含む最外形寸法) 総重量52Kg このようにあまり大きな違いはなく、下記のGUARNERI Traditionの設置に要する 床面積とも大差ないと言えると思います。 GUARNERI Traditionの専用スタンドにて設置場合のサイズなどは下記の通り。 幅300×高さ1135×奥行き410mm(突起部含む最外形寸法) 総重量30Kg このように設置に要する床面積はほとんど同じくらいで、フロアースタンディング タイプで61Kgというのは同程度のサイズのスピーカーとしては扱いやい方だと思います。 前回のSERAFINO Traditionの時には組み合わせするコンポーネントのグレードを 二段階として試聴しましたが、今回は最初からトップギアで臨むことにしました。 ◇ H.A.L.'s Sound Recipe / Sonusfaber AMATI Tradition-inspection system ◇ ……………………………………………………………………………… ESOTERIC Grandioso G1(税別¥1,600,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/g1/index.html http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1317.html and TRANSPARENT OPC2+OPI(税別¥2,700,000.)★Transparent OPI 1out http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1332.html http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-conditioner/power-conditioner/ http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-code/power-cord-2/#cnt-power-cord and finite element MR02-2+CERABASE 4P (税別¥970,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ ESOTERIC 7N-DA6100II BNC(Wordsync用)×3 (税別¥750,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7nda6300_6100_2/index.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… ESOTERIC Grandioso P1 (税別¥2,500,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/p1d1/index.html and TRANSPARENT OPC2+OPI(税別¥2,700,000.)★Transparent OPI 1out http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1332.html http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-conditioner/power-conditioner/ http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-code/power-cord-2/#cnt-power-cord and finite element MR02-2+CERABASE 4P (税別¥970,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ ★Grandioso P1+D1の接続は付属:HDMI Cable http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1083.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… ESOTERIC Grandioso D1(税別¥2,500,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/p1d1/index.html and TRANSPARENT OPC2(×2)+OPI(税別¥3,450,000.)★Transparent OPI 2out http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1332.html http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-conditioner/power-conditioner/ http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-code/power-cord-2/#cnt-power-cord and finite element MR02-2+CERABASE 4P (税別¥970,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ TRANSPARENT OBL1.5(1.5m) Balanced OPUS line cable (税別¥2,900,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/transparent-2/ ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… ESOTERIC Grandioso C1 (税別¥2,500,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/c1/index.html and TRANSPARENT OPC2(×2)+OPI(税別¥3,450,000.)★Transparent OPI 2out http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1332.html http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-conditioner/power-conditioner/ http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-code/power-cord-2/#cnt-power-cord and finite element MR02-2+CERABASE 4P (税別¥970,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ TRANSPARENT OBL20(6.0m) Balanced OPUS line cable (税別¥3,800,000.)中・高域用 http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/transparent-2/ and TRANSPARENT XLBL 25(7.5m)REFERENCE XL line cable(税別¥1,810,000.)低域用 http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/transparent-2/ ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… ESOTERIC Grandioso M1(2Pair 税別¥6,400,000.)★Bi-Amp http://www.esoteric.jp/products/esoteric/m1/index.html and TRANSPARENT OPC2(×4)+OPI×2(税別¥6,900,000.)★Transparent OPI 2set http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1332.html http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-conditioner/power-conditioner/ http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-code/power-cord-2/#cnt-power-cord ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ Accustic Arts PREMIUM LINE Bi-Wire 6.0m (税別¥278,000.) http://www.hifijapan.co.jp/accusticarts.htm ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… Sonusfaber AMATI Tradition(税別¥3,600,000) http://www.sonusfaber.com/ http://www.noahcorporation.com/sonusfaber/20170421_HomageTradition_release.pdf and H.A.L.'s Z-Board×2(1枚/税別・配送費込み¥60,000.) http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/BZ-bord.html ……………………………………………………………………………… エンハンサーCD-ROMを一晩リピートさせてバーンインを十分に行い、今回も恒例の 選曲から聴き始めました。すると…!? ■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章 小澤征爾/ボストン交響楽団 「この録音がこんなに美しく聴けるとは! 文句なし! 100点満点!」 GUARNERI TraditionとSERAFINO Traditionに続くAMATI Traditionも100点満点です!! この私の感性をもってしても減点要素は皆無!!完璧です!! 長年の経験をもとにして私が美しいと感じるオーケストラとはズバリこれでしょう!! しかし、今回の100点満点には条件付きです。過去のTraditionシリーズ二作に関しては、 60万円の価格差ながら両者の個性を認めて同点としました。 200万円から300万円の範囲でひとつのクラスを想定すれば、GUARNERIもSERAFINOも 同じステージということで同点で良いと思います。 AMATI Traditionに関しては300万円から500万円のレンジにて、他社のスピーカー たちの存在を前提にして100点満点としました。ここで上限を500万円までとしている 私の考え方にポイントがあります。 そして、同じSonusfaberのTraditionシリーズという枠組みの中で採点すれば、 私はAMATI Traditionに150点という採点をしているということを追記しておきます。 それは単に価格的に他のTraditionシリーズ二作よりも高価であるということで 便宜上の加点をしたという単純なものではありません。 AMATI Traditionは別格でした!! この曲では、前回SERAFINOにおいて次のように述べていました。 直感したことはGUARNERI Traditionに比べて聴こえてくる楽音の絶対数が大変 多くなっているという事。 それはGUARNERI Traditionの情報量が少ないという訳ではなく、GUARNERI Traditionは 2ウェイという方式の中で弦楽五部の演奏に調和した魅力を醸し出しているのに対して、 SERAFINO Traditionでは3ウェイの特徴として中低域における分解能が優れている ということを前面に押し出した結果だろうと思う。 例えるなら、GUARNERI Traditionでは12色の絵の具をパレットに置いて、それらを 調合することで新しい色を作っていくという事なのでしょうが、SERAFINO Tradition では情報量としての原色は18色くらいに増えていて、しかもパレットの面積が大きい というもので、原色の絵具を混ぜ合わせるスペースがより広く多彩な色彩感を作れる ということではないでしょうか。 (中略) 前述の例えを引用するなら、この組み合わせでのSERAFINO Traditionでは情報量 として原色の絵の具は24色くらいに増えていて、しかもパレットの面積が二倍と いうもので、絵具の種類も混ぜ合わせるスペースもより広く、無限に近い程の 新たな音色を作り出しながら更に多彩な色彩感を響きの中に発生させているのです!! では、AMATI Traditionはどうなのか? はい、皆様の想像の通りです。絵具の数は 36色でパレットの大きさはGUARNERI Traditionの三倍と例えたら良いと思います。 同じトゥイーターとミッドレンジドライバーなのに弦楽五部の質感が微妙に違う。 クロスオーバー周波数は同じなのに、この質感の違いはいったい何なのか? 電気的な設計は同じはずなのですが、ウーファー口径とエンクロージャー容積が 違うだけということだけではなく、どこかに秘訣がありそうです。 今後、設計者に質問してみようと思いますが、最終的には設計者のチューニングと いうことになろうかと思いますが、そのまとめ方が素晴らしいとしか言いようがない。 オーケストラにおける弦楽各パートを聴くと、50名以上の編成による合奏でありながら、 個々の奏者あるいはセクションごとの楽音の合間に絶妙な空気感を含む響きがあり、 一本の絵筆の先に複数の絵の具を絡ませ、それをパレットで完全に混ぜ合わせてしまう のではなく細かく原色が残っている状態でキャンバスに乗せたという印象だろうか。 複数の絵具をパレット上で完全に混ぜ合わせてしまい、出来上がった中間色を新種の 一色として白いキャンバスに描いたものではなく、筆先の腹から穂先までに溶け切らない 原色を残したままで、さっと筆を走らせると様々な色が境目の中間色を含めて多数の 色合いを白地の上に残していくようなイメージだろうか。 流麗なヴァイオリンセクションが主題を奏で、ビオラの存在感が鮮やかに描かれ、 コントラバスの響きがステージの大きさを思わせるスケール感を提示する。 弦楽セクションの各パートが音像というよりは群像として中空に描かれる際に、 一色だけではなく多数の色彩感を含んでいることを聴き手に示し、弦楽奏者ひとり ひとりに固有の響きがあることで集団の中に余韻をはらむ空気感を醸し出している。 錯覚かもしれないが、AMATIの名前に由来する弦楽器の力強くも新鮮な響きが、 私の先天的な美意識を最初から揺さぶり、ずっと前から聴きたかった弦楽器の 美しさとはこれだったんだ! と直感から実感に移行するまでほんの数秒間だった! そして、このオーケストラを聴き進むうちにコントラバス、ティンパニやグラン カッサの質感に関して、前述の空気感をはらむ描写というポイントで共通項が あるのではないかと低音再生における再現性の素晴らしさに気が付き始めた。 先ずは前回のSERAFINO Traditionの解説で述べていたことだが、クロスオーバー 周波数が80Hz、250Hz、2500Hzと三ポイント存在しているが、SERAFINO Traditionと AMATI Traditionの低域再生法として、極めつけはStealth Ultraflexというポート チューニングと、二個のウーファーにおける二種類のハイカットフィルターの使い 分けによって一層の低歪と高速反応を実現しているというポイントをAMATI Tradition でも再確認したのです。 それがオーケストラの低音部の演奏では遠近法の消失点が鮮明になり、低音楽器の 位置をより遠く深い位置にあるという認識で私に迫ってきたのです! これはどういうことかと言うと、低音楽器の音像が膨らまず輪郭が鮮明になると 距離感が感じられるようになるということです。 コントラバスのアルコが唸りを上げた時、グランカッサやティンパニが叩かれた 瞬間から消失するまでの時間軸において、低音楽器の演奏が始ると奏者が楽器を 持ってステージ手前に瞬間移動したような再生音を聞いたことはありませんか? AMATI Traditionは低音楽器の音が発生した位置関係を実に正確に、しかも前例の ない余韻感と広がりというスケール感の素晴らしさを伴って聴かせるのです!! 今までにSERAFINO Traditionで確認した着ぶくれしない低音が、更なる広大な 空間表現を示しながら、くっきりと再現される興奮に打ちのめされてしまいました! オーケストラにおける多数の考察が、その後の課題曲に対してチェックポイントを 明確にしてくれたことに気を良くして、さあ! つぎはこれです。 ■FIFTY SHADES OF GREY ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK 3.THE WEEKEND / EARNED IT(TRADUCIDA EN ESPANOL) http://www.universal-music.co.jp/p/UICU-1262 近年のスピーカーの評価ではマーラーの次にかける曲として定着してきましたが、 あのHIRO Acousticによる私のリファレンスと比較してどうなのか、期待と推測と いう相反する思いが錯綜し、リモコンで選曲して急いで席に戻った。すると… 「何だ!!このパルシブな反応と解放感!!更に引き締まった低域の質感と消え方は!!」 スネアの鋭い一打、タンギングを利かせたブラスの切れ味、それに続く重厚な 低弦楽器の長く尾を引く響きから広大無辺の空間に拡散していく低域の余韻の 何とも素晴らしいこと!! オーケストラで感じた低音の遠近法はスタジオ録音においても当然のごとく発揮され、 左右AMATIのジャストセンターの奥から発祥する低弦の音像が見えるほど鮮明であり。 前方から見た初期の音像サイズは左右スピーカー間隔の三分の一程に凝縮されている。 きりきりと引き絞った弓を放った瞬間の弦がビシッと空気を打つ音のように、 高速度で放たれた楽音の立ち上がりが鮮烈なスピード感で私の頭上を飛び去って行く! 問題は、この瞬間的なエネルギーの解放によって飛び出した打楽器と弦楽器の低音部が ストップウォッチで100分の一秒単位で測れるほどの残響を残し消滅していくまでの 過程において変質しないというバスレフであってバスレフの低音ではないという素晴らしさ! 今までに何度も述べた表現ですが、着ぶくれしない低域とはまさにこれのことなのです!! つまり、Stealth Ultraflexという命名によるポートチューニングを施したバスレフでは あるのですか、ここで聴ける音は極めて密閉型スピーカーの低域の質感に近いのです! エンクロージャー内部で位相反転された低音がポートから排出される際にエンクロージャー 内部の構造と材質によって、更にポートの容積と形状と材質によって、クロスオーバー ネットワークで除去しきれない中高域成分が混入した低音として変調され時間と位相が 遅れて出力されるバスレフの低域とAMATI Traditionのそれでは全く違う性格を示します。 先ず、低音楽器の音像が引き締まり鮮明になること、低域の楽音の音色と質感が 変調されず発音時間の経過に伴った変質がないこと、低音がバスレフポートを通過 する際に波長の長い気圧変化によって低域の伝搬速度と波形に影響をもたらさないこと。 バスレフの弱点として挙げられる項目のすべてをAMATI Traditionは見事に解決し、 高速かつ正確な低域再生を私の求める音量にて驚異のパフォーマンスを示したのです!! この重厚な低域が背景を飾る演奏でTHE WEEKENDのヴォーカルは実に清々しい声質で、 圧倒的な広がりを見せる響きの空間を展開し、そこに散りばめられたパーカッションと ピアノの切れ味のいい、しかも軽々と余韻を空気中にたなびかせる情報量も見事に 今までの試聴体験にはなかった感動の新発見という音の数々が展開していく!! 私がAMATI Traditionにつけた100点満点は500万円までのスピーカーたちを意識して、 それまでを考察領域としたポイントを思い出しながら、このスピーカーだったら HIRO Acousticで聴き込んできた課題曲を更にぶつけてみる価値があるだろう! と私の頭の中には瞬時に選曲リストが出来上がってしまいました。次はこれです! ■UNCOMPRESSED WORLD VOL.1 http://accusticarts.de/audiophile/index_en.html http://www.dynamicaudio.jp/file/100407/UncompressedWorldVol.1_booklet.pdf TRACK NO. 3 TWO TREES / TRACK NO. 4 SAMBIENTA 私は試聴している時にはしっかり目を開け、眼前に展開する音を見つめていると 述べたことがあります。左右スピーカーの中間と周辺に湧き起こる音場感のすべて、 音が発生したポイントに視線を飛ばし目まぐるしく眼球が動いているという聴き方を しているのですが、「TWO TREES」でセンター左寄りの中空に出現したサックスに 視線は釘付けになってしまいました。 サックスのリードが振動し、菅による共鳴から放たれて空間へと広がっていく その楽音の質感が息を呑むほどに生々しいのです! そのサックスから放たれた楽音は右手方向に素晴らしいリヴァーヴで拡散していき、 私の視線も思わず右側のAMATI Traditionへと流れていくことが自然で心地よい! ひとつの楽音が作り出す音場感の広大さはスタジオワークの素晴らしい成果として 分かってはいても、AMATI Traditionというスピーカーが見せる空間表現に圧倒される! 持続するサックスとは対照的に打鍵の瞬間は中空できらめきの点として出現し、 みずみずしい響きが広々とした空間を構成するピアノの存在感と合わせて、デュオと いうシンプルな演奏が見せる音場感の素晴らしさに陶酔する自分を発見していた。 Damped Apex Domeというソフトドーム・トゥイーターの新技術を私は以前から高く 評価していたが、このTraditionシリーズにおける高域再生の素晴らしさは、こんな 独自設計から生み出されたものかと微細信号を忠実に再現するからこそ耳にすることが 出来る高域の情報量の多さと正確さに自分の経験値のアップデートを任せることにした。 小編成のシンプルな録音であるがゆえに、個々の楽音が作り出す響きと余韻の 美しさはTraditionシリーズの見事な外装仕上げの品位にふさわしいと納得する。 「SAMBIENTA」の冒頭できらめくようなパーカッションが前例のない鮮明さと分解能を 提示しながら、彗星が尾を引いて飛び去って行くような透明度の高い余韻感を構成する。 その背景に重厚なシンセサイザーによる重低音が響き始めると、通奏低音の響きに これ程の脈動感が含まれていたのかと、HIRO Acousticで聴いた同じ曲との比較を 私の頭脳が勝手に始めてしまい、頭の中に出力されたチェックシートに私は目を通していく。 このシンセサイザーによる低音は途中から音階がぐっと下がる場面があり、その変化を AMATI Traditionは音色と質感を忠実に維持してぐっと沈み込む重厚な低音として 軽々と再生してくるのだから恐れ入った! そう、軽々というのは楽音の質感、音程的に軽いというものではないのです。 低域の反応が素早く軽く楽音の質感をしっかりと維持しているという事なのです。 これ程の低周波になるとエンクロージャーからバスレフポートを経由して排出され るまでの過程において、波形のトップがクリッピングしたように丸められ、輪郭の ないボボボーッという塊のような低音になってしい、ブルブルと脈打つ低音ではなく なってしまうスピーカーが実は多かったものでした。 それが私の求める音量において相当なストロークでウーファーが振動しているにも かかわらず、音程と波形の正確さをここまで維持できるということは凄いことです! 再度口にしますが、あのHIRO Acousticと同じベクトルの低域ではないですか!! さて、これまではホール録音のオーケストラでも、スタジオ録音のEARNED ITや UNCOMPRESSED WORLD VOL.1の二曲でも、どちらかと言うと連続する低音に関しての チェックポイントでしたが、SERAFINO Traditionでも解説した課題曲として瞬発性の 高いドラムのアタックに注目すべく選曲しました。これです。 “Basia”「The Best Remixes」1.CRUSING FOR BRUSING(EXTENDED MIX) 80Hz以下の信号があるかどうかによって、反応するサブウーファー的な設定の スピーカーユニットがThe Sonusfaberでの実験試聴にて有効であるという考察でした。 この曲をAMATI Traditionでかけると冒頭のドラムの反応は当然予想通り。 タンタン!と切れ味良く聴かせるドラムですが、これを大口径ウーファーで聴くと ドスドス!という低音に変化してしまう事例が良く見受けられます。 質量の大きい大口径ウーファーで、しかも容積の大きなバスレフポートを使っている スピーカーだと、録音に含まれていない、電気信号にないはずの低音を演出的に 出してしまうということがあるものです。 SERAFINO Traditionでも同様でしたが、この曲でも見事な過渡特性による切れ味の いいドラムをAMATI Traditionは軽快に叩き出し、兄弟そろって見事な血統であることを 当然のごとく示してくれました。 その続きとして、“Basia”の次に試聴したMercedes Sosa / Misa criollaでは ラテン楽器の大太鼓として重厚な低域を響かせるボンボ・レグエロの再生音に 注目して聴いてみました。すると… この時には前述のオーケストラにおける低音の遠近法的定位感の実感というべき ポイントを再確認しました。 重厚なボンボ・レグエロの実際のサイズ、鳴りっぷりからすると打撃の瞬間の音と、 その後に空中を伝搬してくる低音の響きとの区別がこれ程鮮明に聴き取れたとは 初めてだったのです!! はるか遠くの奥の方から、ズッシーン!と響いてくる過程において、その打音が 発生した瞬間のドラムヘッドだけの音。そして、打撃の直後から空間を満たすほどの 低音の奔流として湧き起こってくる残響成分のエネルギー感がこれ程凄かったのか というAMATI Traditionでの新発見です。恐れ入りました、見事の一言です! 打楽器という瞬発的な楽音で低域の質感を分析することで新発見がありましたが、 では低弦楽器の継続する低音という視点で次の選曲をしてみました。やはりこれです。 ■DIANA KRALL「LOVE SCENES」11.My Love Is http://www.universal-music.co.jp/diana-krall/products/uccv-9378/ DIANA KRALLのパルシブなフィンガースナップが印象的な選曲です。私がこの曲を 使い始めて何年経ったでしょうか? 私も人様がここでかけた音楽で良いものは 試聴盤として揃えてきましたが、私がwebで公開した試聴曲がイベントなどで 色々な機会に使われていることがあるようです。お役に立てば何よりでした。 リモコンで11トラックを選曲し、AMATI Traditionに対するセンターポジションの ソファーまで急いで戻り、最初のフィンガースナップが始まりました。 Christian McBrideのウッドペースは力強いピッチカートで弾け、ぐっと重量感を 伴い沈み込んでいくベースが実に鮮明な輪郭を描きながら冒頭から展開する。 さて、ここで問題はベースの音像のサイズだ。 大口径ウーファーのシステム、バスレフポートの設計が量感補正を狙ったような スピーカーなどではベースの音像は肥大し、下手をすれば左右スピーカーの幅と 同じくらいのスペースで唸りを上げることがある。 しかし、SERAFINO Traditionは違った!! と、前回述べましたがAMATI Traditionはさらに上をいっていました!! 左右スピーカー間隔の距離を五分割して、その真ん中にウッドベースの音像が くっきりと浮かび上がったのです! その音像は解放弦でボリューム感を増量しても左右音源間隔の三分の一程度の サイズに収まる程に引き絞られているのです! Christian McBrideのウッドペースは他のアーチストの録音でも多数ありますが、 彼の弾き出すベースの音をこれ程鮮明に捉えた録音はあまりないと思います。 そのテンションの高まりと、更に低い音階へと移行した時の質感がスピーカーに よって変化してしまう事があるのですが、いやいや!AMATI Traditionは見事でした! このベースの質感は濃厚であり重厚なのに、左右スピーカーのセンターくっきりと、 しかも響きの途中で変質することなく、引き締まった音像と鮮明な輪郭を伴う ベースが切れ味の素晴らしいピッチカートを展開するのです!! 80Hzと250Hzというクロスオーバーポイントを持つ二個のウーファーの連携が、 低音の重厚さと低歪をものにして、Homage Traditionシリーズの両足に強靭な 筋力と瞬発力の両方をもたらしたことを宣言します!!まさに100点満点です!! 前回の上記のコメントに追加して、AMATI Traditionでは更に凝縮した音像を見せ、 注目すべきは最低音部の再現性が本当にリアルであるということでしょうか。 低域に関するコメントが多くなってしまいましたが、中高域に関する評価は 同シリーズの他の二機種でも述べてきたように極上のものでした。 今回は短期間ながらじっくりと試聴することが出来ましたが、まさにトップモデル という風格を音質で示しており、冒頭に述べたように減点要素がありません。 聴けば聴くほどに更に加点してしまいたくなる誘惑にかられ、短期間の試聴を 終わろうという時、最後にこのディスクから二曲を聴いたのです。 ■和田 薫/伊福部 昭/外山 雄三:日本の管弦楽(マルメ響/広上 淳一) http://ml.naxos.jp/album/BIS-CD-490 伊福部 昭 - 交響譚詩 Ballata Sinfonica 1.Prima ballata: Allegro capriccioso 4.外山 雄三 - 交響詩 「まつら」Symphonic Poem, "Matsura" 長らくこの仕事をしておりますが、再生装置で聴く音楽に対して美しさを感じる ということはどういうことなのかを考えてしまいました。 人間には持って生まれた感受性があり、生まれて初めて食べた美味しさに感動したり、 巡り合った女性の美しさに言葉を奪われたり、芸術家が描いた絵画や彫刻に感動したり、 これが美味しいもの、これが美しいものと教育や経験によって教えられ学習して いなくても心動かされる体験は誰しもがあると思うのです。 いわば先天的であり本能的な感性というものでしょうか。 オーディオ分野においても、今回ご紹介したTraditionシリーズ三モデルをきちんと した環境とセッティングにおいて、マニアではないごく一般の皆様が前置きなしに 聴かれた時には自然な感受性のあるがままに美しい音、きれいな音として認めて 頂けるという確信を私は持つに至りました。 そして、私のような仕事としてオーディオ製品を、しかも世界的トップクラスのものを 長年に渡り実に多数聴いてきた人間にとっても、このTraditionシリーズで聴く音楽の 美しさ素晴らしさという事実を新鮮な思いで語り受け入れることが出来ます。 上記の日本人作曲家による交響詩を聴き始めた時に、弦楽器のあまりの美しさに感動し、 それは自分の経験値から過去の事例と比較して初めての音質という価値観もありますが、 実は本当の美音というものに接した時、私は自然体で過去の経験則をほぼ気にしておらず 初心であり無心のままに音楽に対峙していたのではないかと思っています。 このTraditionシリーズという音を出す作品が、その出会いの時から第一声において 聴き手をそのような心境に誘ってしまうのではないかと考えてしまうようになりました。 Sonusfaberという老舗ブランドではありながら、若い感性のエンジニアとデザイナー たちが最新技術を駆使して設計したはずなのに、何故Traditionというネーミングを つけたのかと、最初にGUARNERI Traditionを聴いた時から私は考えていました。 短期間でのAMATI Traditionの試聴でしたが、この最後に聴いたオーケストラの 特に弦楽器における美しさに心の奥底から感動の泉が湧き起こり、音楽によって 精神的浄化がなされたのではと感謝するほどの素晴らしい美しさでした。 この感動は比較論争の上での結論ではないのです。正真正銘、私は初心に帰り 素直な気持ちでAMATI Traditionの奏でる音楽に心をゆだねての感動でした! Traditionの辞書的な意味は皆様もご存じの通りでしょうが、伝統とは革新の連続であり、 伝統的なものに更に新しいものが積み重なってこそ継続していくことが出来るものでは ないでしょうか。 常に革新と進歩が継続されて存在しているもの、それが伝統と言うものだと思います。 Sonusfaberの若きエンジニア、デザイナーたちは見事に伝統の新たな一ページを 切り拓いたものと心から拍手を送りたいと思います。 そして、聴き手にとってTraditionとは何を意味するのか? 音楽とオーディオの作り手の伝統(革新を含むことが条件)を信頼し、わが身と心を 委ねることで初心に帰り、素直な自然体の感受性をもって聴こえてくる音楽を受け入れること。 世の中の評判や技術論争という予備知識はどこかに置いておいて、 今この時(皆様にとってはオーナーとなった時を現在として)目の前にある美しい造型と 仕上げの伝統的道具から聴こえてくる音楽が心を震わせる感動に素直に従えばよいのでは…。 最後のオーケストラを聴きながら、これが今まで求めていた美しさだったのだ! と気が付いた私からのアドバイスを最後に締めくくりたいと思います。 事例に上げた試聴曲はほんの一例で、本当に聴く曲が増えるほどに加点したく なってしまうので、続きはまた後日ということで。 さあ、Sonusfaber Homage Traditionシリーズをこれからどう扱うのか!? _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/「緊急企画⇒Sonusfaber/Homage Tradition試聴会」 ★本企画の試聴会は二部構成にしたいと考えました。第一部はTraditionシリーズの 三モデルの違いを各々の個性と魅力という観点から選曲し説明してお楽しみ頂きましょう。 第二部は各モデルの魅力を感じて頂くにふさわしい選曲ということで、各々の スピーカーでこんな曲を聴いて頂ければという提案型の選曲と進行とします。 私の取り組みは下記の試聴会として公開しています。まだお席はありますので是非ご検討下さい。 2017年5月17日 No.1390 にて公開 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1390.html このような新企画の最新情報を日々配信しているハルズサークルに是非ご入会下さい。 |
担当:川又利明 |
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556 kawamata@dynamicaudio.jp お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください! |