発行元 株式会社ダイナミックオーディオ 〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18 ダイナミックオーディオ5555 TEL 03-3253-5555 / FAX 03-3253-5556 H.A.L.担当 川又利明 |
2016年8月16日 No.1317 H.A.L.'s One point impression!! - ESOTERIC Grandioso G1 |
8月6日のこと「新企画⇒ESOTERIC Grandioso Master Clock Generator待望論」を H.A.L.'s Circle Reviewに新規掲載し、話題性を高めていこうと思っていたら 三日後にはESOTERICより正式な新製品としてGrandioso G1が発表され、私の期待と 推測が現実のものとなりました。 さて、その音質は果たしてGrandiosoシリーズとしていかがなものかということを 分析し検証するのはH.A.L.の使命ではないか! とESOTERICに打診していたものです。 私が待望論と題した新企画を見ていたESOTERIC担当者に、御社の夏休み中に実物を 何とか試聴出来ないかと交渉したのは私としては当然の成り行きでした。 そうしたところ、最初は内密にと言いつつもプレス発表の翌日に当フロアーに なんとGrandioso G1をセッティングすることが出来ました!! http://www.dynamicaudio.jp/file/2016.08.10.01.jpg この実物はESOTERIC開発が音質決定のために試作した唯一のものであり、トルク 管理もして組み立てたものなので絶対にビスを緩めたりしないことというのが条件。 http://www.dynamicaudio.jp/file/2016.08.10.02.jpg この音質的なマスターであり原器として今後の生産のための標準個体となるものと いう事なので、私とて取り扱いは慎重にならざるを得ません。 http://www.dynamicaudio.jp/file/2016.08.10.03.jpg 私の下手な写真ではなくESOTERICからの画像資料もご紹介します。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20160811-G1.jpg Grandiosoシリーズの高品位な加工精度と美しい仕上げを見れば揃えたくなります! http://www.dynamicaudio.jp/file/20160811-P1_D1_G1-01.jpg http://www.dynamicaudio.jp/file/20160811-P1_D1_G1-02.jpg 心臓部に超高精度なルビジウム発振器を搭載 http://www.dynamicaudio.jp/file/20160811-G1_rg02.jpg 新設計ワイドレンジ・クロックバッファーアンプ搭載 http://www.dynamicaudio.jp/file/20160811-G1_rg01.jpg 余裕の電源供給力を誇る電源部 http://www.dynamicaudio.jp/file/20160811-G1_ps01.jpg 重厚なシャーシーは重たいはずです。G-01より10キロも重いのです! http://www.dynamicaudio.jp/file/20160811-G1_int01.jpg 正弦波10MHz専用50オーム出力端子を四系統装備してリアパネルですが、 今までのMaster Clock Generatorにはなかった出力端子上のトグルスイッチは何か? http://www.dynamicaudio.jp/file/20160811-G1_r02.jpg それは新開発「アダプティブ・ゼログラウンド」モード対応のオン・オフスイッチです。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20160811-G1_r01.jpg 「アダプティブ・ゼログラウンド」モードがオフの時にフロントパネルはこうです。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20160811-G1_f02.jpg 「アダプティブ・ゼログラウンド」モードがオンの時にはこうなります。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20160811-G1_f01.jpg クロック出力の基準電位となるグラウンドを常に0Vに保つ「アダプティブ・ゼロ グラウンド」モードを新たに装備ということですが、この設定で音質激変なのです!! 現在のところ唯一の試作機を的確に分析するために採用したシステム構成はこれ!! ◇ H.A.L.'s Sound Recipe / ESOTERIC Grandioso G1 - inspection system ◇ ……………………………………………………………………………… ESOTERIC G-01(税別¥1,350,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/g01/index.html and TRANSPARENT OPC2+PI8 (税別¥1,240,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-code/power-cord-2/#cnt-power-cord vs ESOTERIC Grandioso G1(税別¥1,600,000.)★ http://www.esoteric.jp/products/esoteric/g1/index.html and TRANSPARENT OPC2+PI8 (税別¥1,240,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-code/power-cord-2/#cnt-power-cord and finite element MR02-2+CERABASE 4P (税別¥970,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ ESOTERIC 7N-DA6100II BNC(Wordsync用)×3 (税別¥750,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7nda6300_6100_2/index.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… ESOTERIC Grandioso P1 (税別¥2,500,000.)本体 ★RELAXA 530使用 http://www.esoteric.jp/products/esoteric/p1d1/index.html and TRANSPARENT OPC2+PI8 (税別¥1,240,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-code/power-cord-2/#cnt-power-cord and finite element MR02-2+CERABASE 4P (税別¥970,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ ★Grandioso P1+D1の接続は付属:HDMI Cable http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1083.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… ESOTERIC Grandioso D1(税別¥2,500,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/p1d1/index.html and TRANSPARENT OPC2(×2)+PI8 (税別¥1,990,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-code/power-cord-2/#cnt-power-cord and finite element MR02-2+CERABASE 4P (税別¥970,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ ESOTERIC 7N-DA6300II MEXCEL / XLR 1.0m (税別¥580,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7nda6300_6100_2/index.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… ESOTERIC Grandioso C1 (税別¥2,500,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/c1/index.html and TRANSPARENT OPC2(×2)+PI8 (税別¥1,990,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-code/power-cord-2/#cnt-power-cord and finite element MR02-2+CERABASE 4P (税別¥970,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/ ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ ZenSati Seraphim / Interconnect cable XLR 8.0m(1Pair 税別¥5,645,000.) http://www.zensati.com/ http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/960.html and ESOTERIC 7N-A2500MEXCEL / XLR 7.0m (税別¥2,280,000.) http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7na2500/ ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… ESOTERIC Grandioso M1(2Pair 税別¥5,600,000.)★Bi-Amp http://www.esoteric.jp/products/esoteric/m1/index.html and TRANSPARENT OPC2(×2)+PIMMX(×2) (税別¥2,580,000.) http://www.axiss.co.jp/brand/transparent/power-code/power-cord-2/#cnt-power-cord ……………………………………………………………………………… ▽ ▽ ▽ ZenSati Seraphim/Speaker cable 3.0m/Bi-Wier(税別¥9,408,000.) http://www.zensati.com/ http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/960.html ▽ ▽ ▽ ……………………………………………………………………………… HIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCS Improved (1Pair ¥14,250,000.) http://www.hiro-ac.jp/ and H.A.L.'s B-Board×2 (1枚/税別・配送費込み¥122,000.) http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/BZ-bord.html 「特報!!HIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCS Improvedとはこれだ!!」 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1199.html ここに紹介した下記の二枚の写真でImprovedモデルとスピーカー本体とネット ワークボックスをセットしたのがB-Board http://www.dynamicaudio.jp/file/20150306-model-ccs_improved01.jpg http://www.dynamicaudio.jp/file/20150306-model-ccs_improved02.jpg ……………………………………………………………………………… さて、今回は貴重なGrandioso G1試作機の当フロアーでの滞在期間は一週間。 その中で私が試聴出来るのは実質三日間程度ということで、上記システムにて 色々なケースでの音質比較をしましたが、その音質を語るためには皆様に多少の 予備知識をお持ち頂いてからの方が得策かと考えましたので少しお付き合い下さい。 そもそも、私がMaster Clock Generatorを重要なアイテムとして取り扱うように なったのは2001年のこの頃からでした。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/151.html dCSのMaster Clock Generatorに関して、こんな言いがかり? もつけていました。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/234.html Cesium Frequency Standardというセシウムのマスタークロックも試しました。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/281.html http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/283.html こんな昔からマスタークロックに関しては色々なことをやってきた歴史があります。 そして、ESOTERICからMaster Clock Generatorの第一号機が発売されたのは2003年、 G-0とG-0sでした。 http://www.esoteric.jp/products/esoteric/g0_g0s/index.html ESOTERIC製のMaster Clock Generatorを初めて試聴したインプレッションが下記です。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/240.html 1997年発表の初代ESOTERIC P-0に初めて装備されたワードシンクでしたが、当時は ESOTERICにはMaster Clock Generatorという製品は存在せず、dCSの992という プロ用の製品があるのみで、それが992/2というバージョンアップを受けて業界初の クロノス(Chronos)というルビジウム発振器の開発へとつながっていったものでした。 http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/151.html さて、このようにざっくりと16年ほどの歴史がある家庭用ハイファイシステム向けの Master Clock Generatorという今までの存在に共通することがあるのです。 私たちはMaster Clock Generatorの新製品が出るたびに±0.05ppb(=±0.00005ppm)の ように表記される発振精度というポイントに注目してきたわけですが、実は音質を 左右する要素として、ワードシンク信号を受信するコンポーネントが外部からの 高精度なクロック信号を受信した時に、それに同期させるために必ず必要だったのが PLL(phase locked loop)位相同期回路だったという事実です。 つまり、いかに高精度で素晴らしい基準信号を受け取っても、それを実際の音質に 貢献するように生成し直すためにPLL回路は重要な役割を担っており、その精度と 品質によって音質も左右されるという事実でしょう。 これに気付いたESOTERICはG-0sという自社製のMaster Clock Generatorを発表した後、 あの名器P-01&D-01において新機軸となる機能をユーザーに提供しました。 「WORD SYNC 入力ポジションを通常の IN モードと Rb IN モードを新たに設定し、Rb IN が選択された場合にはルビジウムのような高精度クロックとの同期のために変動範囲と追従 のさせ方をチューニングした PLL回路が選択される。」 これは下記の随筆17Pでの一節ですが、PLL回路の重要性を12年前に認識していたのです。 http://www.dynamicaudio.jp/file/060906/oto-no-hosomichi_no53.pdf このように製品本体のパネル上でユーザーがクロック設定を操作できる機能性は その後に発売された一体型プレーヤーX-01にも「CLOCK MODE」スイッチとして http://www.esoteric.jp/products/esoteric/x01/index.html 装備されましたが、その後は製品内部で入力されたクロック信号に自動追随する 設定に変更されて現在ではP-02X/D-02Xにてクロックモード設定があり、それに よってユーザーによる音質選択が出来るようになりましたが、基本的には前述の PLL回路によってマスタークロックに同期させるという手段は変わっていません。 http://www.esoteric.jp/products/esoteric/p02xd02x/index.html 私が今回Grandioso G1を試聴して感動したのは、今まで必須項目だったPLL回路を 使用しない音であり、何とGrandioso P1 D1には既にG1の登場を予見した設計が なされていたという事なのです!! この取り扱い説明書の28Pをご覧下さい。 http://teac-global.com/download/esoteric/manual/P1_OM_J_vC.pdf 同様に14Pをご覧下さい。そして、このウィンドウを開いたままで続きを読んで下さい。 http://teac-global.com/download/esoteric/manual/D1_OM_J_vC.pdf そして、両者ともに「MCK10M」という設定にご注目下さい。この設定はESOTERICの 他の製品には存在しないモードであり、高品位な外部のMaster Clock Generatorに 完全に依存した再生を可能にしたものです! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 先ず、今回のマスタークロックの比較試聴に使用する選曲は次の二曲を使用しました。 ■UNCOMPRESSED WORLD VOL.1 http://accusticarts.de/audiophile/index_en.html http://www.dynamicaudio.jp/file/100407/UncompressedWorldVol.1_booklet.pdf TRACK NO. 3 TWO TREES / TRACK NO. 4 SAMBIENTA TWO TREESはこれまでにも多数の試聴に使用してきましたが、サックスとピアノの デュオというシンプルな構成で楽音の質感を観察しやすいことと、スタジオワークで 施された素晴らしいリヴァーヴによる広大な音場感という対照的なチェックポイントが クロックの比較にふさわしいと考えたものです。 SAMBIENTAは多種多様なパーカッションが空間を埋め尽くす背景に、サックスの ソロバートが中空に浮かび、その背後をシンセサイザーの重厚な低域が響き渡り、 打楽器のパルシブな立ち上がりと極小の音像に変化を感じ取りやすいからです。 両者ともにピンポイントに楽音の質感と空間提示というスケール感の対照的な 着目点がクロックの比較に適していると経験上から判断したものです。 さて、ここで以前からG-01とGrandioso P1 D1との接続をどのようにしていたかを 説明しておく必要があるでしょう。 G-01の正弦波10MHz専用50オーム出力は使用せず、75Ωで矩形波のTTLレベルのクロック 信号を出力するA.B.C各二系統の[CLOCK OUT]で10MHzを指定し、A.からP1へ、B.から D1二台へと一対一の接続をしてきました。 その際に肝心なことは、P1 D1ともに[CLOCK SYNC]に二種類の入力端子がありますが、 [IN]の方に接続していました。ですから、せっかく装備されているもう一つの入力 [10MHz IN]という端子は今まで使用してこなかったのです。 メニュー画面では[CLKin]という項目で選択するのですが、[IN]の方は[CLK]という 表示になり、こちらは75Ωで矩形波のTTLレベル(4.5〜5Vppに相当)という信号に 対応する端子です。[10MHz IN]の端子は[10M]と表示され、50Ωで正弦波、振幅 レベルは0.5〜1.0Vrmsの信号を受信するためのものです。 このように私は説明書通りにG-01とGrandioso P1 D1を接続して使用してきましたが、 もう一つの要素としてP1 D1のメニュー画面では[CLK]と表示されるクロック設定が ポイントになってきます。 この設定も上記の説明書のページをご覧頂くとお分かり頂けると思いますが、 P1 D1ともに[IN]として外部クロック、すなわちG-01のマスタークロックに対して 内蔵クロックをPLL回路によって同期させるクロックシンクモードにて使用してきました。 以上が比較試聴を始めるに当たりG-01におけるセッティングです。 では、Grandioso G1の場合はどうかと言いますと、先ずは4系統の出力端子はすべて 50Ω正弦波、振幅レベルは0.5〜1.0Vrmsの信号のみで変更は出来ませんが、唯一 新技術である「アダプティブ・ゼログラウンド」モードのオンオフという選択が あるだけです。 P1 D1の[CLOCK SYNC]の入力端子は[10MHz IN]をここで初めて使用することになります。 G1の出力を仮にP1 D1の[CLKin]のメニュー画面で[IN]を選択して接続しても同期しません。 上記のように[IN]の方は75Ωで矩形波のTTLレベル(4.5〜5Vppに相当)に対応するもので、 正弦波で振幅レベルが0.5〜1.0VrmsというG1の出力では電圧不足になってしまうからです。 ちなみに、G-01にも正弦波10MHz出力が二系統ありますが、このうち一つをP1に接続し、 もう一つを一台のD1に接続し、そのD1からクロックをスルーさせて直列でもう一台の D1に接続するという方法を考える方がいらっしゃると思いますが、その場合にはD1の クロックアウト端子からは矩形波しか出力できないので、左右のD1のクロック波形が 異なることになってしまいますので念のため追記しておきます。 このようにG1を使用することでP1 D1の正弦波専用入力端子がやっと使えるように なったという事です。これがG1対G-01の比較試聴の第一歩であり、BNCケーブルの 差し替えは六ケ所となります。おまけに上記のようにP1 D1の[CLKin]のメニュー画面 にて入力端子を切り替えるという操作も行う事になりました。さて、試聴開始です! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- HIRO Acousticという極めて敏感なスピーカーを使い始めて二年目、当然のことながら スピーカーそのものは完璧に熟成の領域にあり、近年に私が新製品をテストする度に ここまでオーディオ信号の違いを音にしてくれるのかと驚きと感動、そして絶対的な 信頼性を持つ存在に進化してくれました。 それをESOTERIC Grandiosoのフルシステムで、しかもパワーアンプM1をバイアンプで 4台使用するという上記システムで、再生音を顕微鏡レベルで分析できる程の分解能を 有しているということを最初に述べておきたいものです。 先ずは、G-01の従来からの接続方法によって、課題曲を再度聴き直し、比較のために 音の間違い探しのための最初の一枚のシートを頭に焼き付けます。 敢て言っておきますが、この状態が今までは私にとってのベストであったもので、 二年前の10月に初めてHIRO Acousticを聴いた時にもG-01を使用していました。 2016年7月18日 No.1311 H.A.L.'s One point impression!! - 納得のTransparent XLPCの実力!! http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1311.html 直近では上記のように電源ケーブルの比較試聴においても絶対的な基準を音質で 提示してくれるシステム構成にて、聴き慣れた課題曲は最高の音質だったのです…。 なぜ過去形で言わなければならないのか!? 基準となる再生音を確認し、ラックの後方に回り六ケ所の接続変更を行い、席に 戻る前にはP1 D1の入力端子を[10MHz IN]に切り替えます。この時には初期段階として G1の「アダプティブ・ゼログラウンド」モードはすべてオフとしておきました。 さあ、先ずはTWO TREESです。 「…(無言)、!?(戸惑い)、なんでだ!(驚き)、そりゃないだろう?(想定外)」 前述のようにG1の使用開始は最もスタンダードな設定で、特にESOTERICが開発した 新技術を使用したものではなく、10キロも重たくなったG1を最もシンプルに使用 しただけなのに、この変化は何なんだ!! 要するに言葉に出来ない驚きがたちどころに感動に豹変してしまったという事なのです。 TWO TREESの冒頭でセンター左寄りの空間から表れたサックスの質感がしっとりと した潤いのある音色に変化し、その余韻は微風に運ばれて右チャンネルのスピーカーまで ふ〜と運ばれていく響きの連鎖が美的再現性にプラス10ポイントという感じ!! ちょうどリオ・オリンピックで体操などの採点競技を見続けていたので、私も 思わず加点方でG-01からG1への進化を採点したくなってしまったようです!! 連続する楽音のサックスが広大な音場感をG1によって与えられた直後、今度は センター右寄りの空間にピアノが登場します。そのピアノが浮かぶ空間には オリンピックの室内競技場の天井に吊るされた大型ディスプレーがあるようで、 ピアニストの指と手の動きをクローズアップした画像で映し出しているかのようです!! この解像度の向上は音像そのものが鮮明さを増して、ピアノの弦がハンマーで 叩かれた瞬間のエネルギー感を音像の輪郭の中に凝縮し、楽音に濃密な情報量を 増量している。打音の立ち上がりが高速化しているのに、それに続く響きの連鎖が 十分な滞空時間をもってサックス同様に拡散していく描写力にプラス10ポイント!! 楽音そのものの音像が定位している中空の一点に私の視線を固定して観察しているが、 実は楽音が発祥してから消滅するまでの空間が大きくなっているので、音場感の 拡大に伴って視野を広げる本能的な条件反射が無意識のうちに行われていた!! 音像に焦点を合わせた観察でG1による変化の兆しを感じとり、音場感の拡大という 変化に対しては耳に連動した視野の拡大がG1に対する追加点を与えていく!! 二曲目、SAMBIENTAの導入部で小音量のパーカッションが鳴りはじめ、左右の HIRO Acousticの更に外側まで展開する様々な打楽器の質感は予想通りの変化!! ウインドチャイムのように高音階の小刻みな楽音が連続してきらきらと輝き、 硬い木材を叩き合わせるパルシブな打楽器の響きが飛び交い、カリカリ!!と 弾けるパーカッションの切れ込みが一層鋭さを増してプラス10ポイント!! ジャスト・センターにくっきりと浮かぶサックスは音像サイズをダイエットして いることがたちどころに分かってしまい、シンセサイザーの重厚な低音のうねりの 向こう側に残響を引き延ばしていく遠近法の明確さが引き立つ。 そのダイナミックな低域の怒涛のようなエネルギーの発散の中で、微量な残響まで 空間に留めておく情報量の素晴らしさにプラス10ポイント!! いいです、これ!! TWO TREESに比べて楽器の数が大変多くなったSAMBIENTAの再生音において、 パーカッションのひとつひとつを空間にピン止めしていける程の克明な音像を確認し、 サックスの響きがはるか遠くに奥行き方向の消失点を感じさせる遠近法の緻密な 表現力にG1が間違いなくGrandiosoの一員であると太鼓判を私は押してしまった!! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- G1の標準的な使用方法にて新製品としての基礎体力が十分に説得力あるものと 確信した私は、この段階でG-01との比較試聴に関しては採点終了のフラッグを上げた。 この先は芸術点としてG1を加点方で採点しようと考えて次のステップへ。 ここで、一言お断りしておかなければなりませんが、今ここにあるG1は今後の 生産で音質的標準とする個体であり、ESOTERIC開発において音質決定のために 試聴してきた実物そのものなのですが、私がここで実験し分析評価した各項目が ESOTERICでも共通の結果として確認されたものではありません。 言い換えれば私の独断と偏見によるテスト方法によって採点されたものであり、 ESOTERIC開発者が知りえなかった現象も数項目ここで新発見したと報告します。 そして、重要なことは私がここで感じたことは第三者に実演することによって 証明できるという事なのです。この次の段階で行った比較試聴は私の好奇心から 試してみたことですが、そこで新発見があったことを次に述べていきます。 さて、前述の試聴ではG1とP1 D1の接続と設定は既に説明しましたが、次は接続は そのままで設定を変化させました。「アダプティブ・ゼログラウンド」モードです。 http://www.esoteric.jp/products/esoteric/g1/index.html ■ESOTERICサイトより引用 クロック出力の基準電位となるグラウンドを常に0Vに保つ「アダプティブ・ゼロ グラウンド」モードを新たに装備。グラウンド電圧の変動によるノイズ(ランダム ジッター)防止により高い効果を発揮します。背面のトグルスイッチで、出力端子 ごとにアダプティブモード/ノーマルモードの切り替えが可能で、バッファーアンプ の駆動方式の違いによる音質の違いをお好みでお選びいただけます。 下記の写真で[10MHz OUT]の右から1.2.3.を使用していますが、今までは[NOR]の ポジションで通常の正弦波10MHzを出力していました。トグルスイッチを一番下に 倒した状態です。それを一番上に倒して[A.GND]をオンとしました。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20160811-G1_r01.jpg 「アダプティブ・ゼログラウンド」モードをオンにかると次の写真のように インジケーターはブルーからグリーンに変わります。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20160811-G1_f01.jpg フロントパネルのインジケーターは左から1.2.3.なので、一番右の4.はブルーの ままという設定にしました。さて、その変化とは…!?課題曲TWO TREESをスタート!! 「あー!!これずるい。だったら最初からオンオフ・スイッチ要らないじゃないか!!」 栄養バランスを無視したダイエットは体調を崩し逆効果と言いますが、まさに この「アダプティブ・ゼログラウンド」モードによって得られる効用は楽音の 音像に対する理想的なダイエットだと言えます。 サックスとピアノの響きが拡散していく空間領域の情報量はそのままですが、 音像サイズが更に凝縮され輪郭の見え方がくっきりと鮮明になるのです!! SAMBIENTAのパーカッション音像などはてき面に効果を表し、カリカリ、キンキンと 短時間で立ち上がり消えていく打楽器。キーン、ピキーン!とリブァーヴを残し 空間に溶け込んでいく響きを伴うものと、残響の大小に関わらず鮮明さが倍増し プラス10ポイント、いやいや15ポイント加点しましょう!! 好みで選択して下さいとは謙虚なのか自信の表れなのか、このような変化をものに しているのなら切り替えスイッチなど不要だと思ってしまいます。 そして、G1を他社製品で10MHz受け入れ可能なコンポーネントに使用した時にも 相手側のシャーシ電位と基板上の電位の誤差を気にせず有効に使用できるという ことなので「アダプティブ・ゼログラウンド」モードはマスト使用のものでしょう。 さて、4系統のクロック出力があるのに3系統しか使っていない状態で、新技術の 成果を確認した訳ですが、一般論としては使用していない回路はオフにした方が 音質的には良いのではないか、と言われることがあります。 今回、私は上記の比較試聴の延長線上で出力4.のスイッチをオフにしてみたら どうか? という実験をここの環境とシステムでやってみたのです。すると… 「あれ!?まったく予想と違うじゃないか!?」 プリアンプでも使用しない出力はオフにしたり、ショートプラグでノイズ対策を やったりと、不要な回路をオフにすると音質向上に関係してくると言いますが、 ここでの実験では音楽にとって美味しい要素であるリヴアーヴが減少するという 結果になってしまいました。不思議ですが結果を受け入れるしかありません。 G1に関しては出力4系統をすべて動作状態にしておく方が良いと推薦致します。 そして、この結果は加点はしませんが減点対象にもなりません。ご安心下さい!! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- さて、ここまではP1 D1のクロック設定は[IN]として外部クロック、すなわち内蔵 クロックをPLL回路によって同期させるクロックシンクモードにて比較してきました。 前述のように過去のMaster Clock Generatorという製品の使用法すべてにPLL回路 という存在が関わっていた再生手段であり、私の経験則もすべてこの領域で検証 してきたものですが、ここからがG1が間違いなくGrandiosoの一員であるという 事実をガツンと突き付けられた新発見がESOTERICの中でも唯一Grandiosoシリーズの 組み合わせでしか実現できないPLL回路に依存しない再生音だったのです!! 前述したP1 D1の説明書のウインドウはまだ開いているでしょうか? これまでの試聴でG1の新機能も実験し、PLL回路を使用する他のコンポーネントでも 10MHzが受信できれば使用できるということで評価をしてきましたが、ここで最後に メニューのクロック設定[MCK10M]に切り替えての試聴をすることにしたのです。 この設定はESOTERICの他の製品には存在しないモードであり、高品位な外部の Master Clock Generatorに完全に依存した再生を可能にしたものです! P1 D1などには22.5792MHzの内蔵クロックがあり、CDのピックアップ関連では 44.1KHzに分周して動作させ、オーディオデジタル信号も同様に内蔵クロックを 使用しています。 その内蔵クロックに対して外部のMaster Clock Generatorからのクロック信号に PLL回路を使ってクロックシンク(同期)させていたものですが、[MCK10M]にすると G1からの10MHz信号を内蔵クロックに置き換えて使用するモードとなり、PLL回路を 使用しない再生音が実現したのです!! 各機器に内蔵するクロック精度は当然G1に匹敵するものではありませんが、 PLL回路を使って精度・安定度をあくまでも同期させるという状態でした。 イメージとしては大きな歯車が左右にあり、その中間に小さな歯車を挿入することで 左右の歯車の動きが同期するという感じでしたが、小さい歯車が噛み合う箇所で極めて 微量の機械的ゆとり、ガタツキというと大げさですが連動するための遊びがなくてはなりません。 左右の大きな歯車の片方が内蔵クロックで、もう片方がMaster Clock Generator、 そして真ん中の小さい歯車がPLL回路とご理解下さい。 それの遊びと例えたのはジッターというイメージで良いと思います。 その遊びがなくては、いくらオイルを指してもスムースに動かないのは想像できると思います。 そして、この[MCK10M]モードでは中間に入った小さな歯車を省略し、左右の大きな 歯車が直接噛み合うというイメージかと思います。こんなデジタル再生は私も初めてです!! 未体験であるので、私は最初何を期待していいのか分かりませんでした。 デジタルフィルターの選択によって音質が微妙に変化するくらいの程度だろうと 想像し、変化の方向性が予測できないので本当に何も期待していなかったのです。 そもそもはGrandioso G1 P1 D1という三者が揃わないと実現できないことであり、 いかに高価なMaster Clock Generatorがあったとしても単体では出来ないことです。 ですから、期待の胸膨らませて、という展開では全くなかったのです。しかし… もう何度目か忘れてしまう程繰り返して聴いてきたTWO TREESをスタートさせました。 「あー!!これ、いっちゃってます!!トランス状態の音です!!物凄いです!!」 私がG1の第一印象で語った、下記の胸の内のコメントと比較して下さい。 「…(無言)、!?(戸惑い)、なんでだ!(驚き)、そりゃないだろう?(想定外)」 新製品G1の最初に感じた印象はG-01との比較によるコメントだったのですが、 この[MCK10M]モードでは比較する相手がないのです!!それほど違うのです!! サックスの楽音は空調機を使ったスタジオの空気で吹き鳴らされていたのしょうか? ところが[MCK10M]にした途端に大自然の懐深い森林、それもマイナスイオンを多分に 含んだ新鮮な空気の中で響き渡っていくような自然さというイメージでしょうか。 とにかく楽音の鮮度そのものが根本的に違うのです。ピアノも当然のことながら 早朝の森林で木々の間に響き渡りながら自然な減衰で消滅していくような印象。 敢て例えるなら、下記のAGSを使用した時の変化とでも言いましょうか。そうです、 演奏している空間の鮮度が究極的に向上したという感じでしょうか!! http://www.noe.co.jp/product/pdt1/pd1_12.html サックスのリードのバイブレーションが心地よく解像度を上げて湿り気を帯び、 キーとバルブのメカニズムによる開閉音という付帯音が鮮明になるが聴きやすい。 あたかも森林の木々に反射を繰り返しながら自然に減少していく残響の最後の 一滴まで克明に空間に保持し、以前にない音場感を提示し始めたのです!! 不思議なことにノイズフロアーが前例のないレベルまで引き下げられた結果として、 前述のような空気の清浄化が行われ音場感がみずみずしく拡大したと感動したのも つかの間、サックスの音像そのものにも変化が表れていることに気が付く! G1に切り替えると音像サイズは収束し凝縮していったわけですが、ここでは逆に 音像が多少膨らんだのではないか? という印象を持ったのです。おかしい…。 しかし、しばらく聴き続けていくうちに私の錯覚であったことが分かってきました。 サックスのリードという発音体は時にジリジリ、ジュルジュルという微妙な振動音を 発して、それまでもが正確に録音されているのですが、そのサックスの音の発祥 ポイント、楽音の核とも言うべき中心部分から同じ面積の空間に広がっていく 過程にて再現している音色の諧調、グラデーションの段階が更に細かく細分化 されていたという事なのです! 音波は1/1000秒で34センチ進行しますので、その時間軸では0.001秒で半径34センチの 球体として音波は360度の全方位に球面波として膨張し進行していくわけです。 その極めて短時間の一瞬の繰り返しによって耳に感じる音波を左右二つの音源で あるスピーカーから正確な位相で再生されると、リスナーの耳には立体的な定位感 として前方の空間に音源位置を感じ取るわけです。 私には1/1000秒ごとに34センチ、68センチと拡大していく音波の進路となる空間、 その中心部から遠ざかる過程で、音色の濃淡、音量の大小、テンションの緩和と いうような微妙な変化を伴いながら楽音が拡散していくのが見えてしまうのです! PLL回路を使用していた設定の時には感じ取れなかった、サックスのソロバートでの 極めつけの解像度の向上が、音像の中に多数の音色の階層が存在していたことを [MCK10M]の設定が教えてくれたのです。これは聴いて頂ければ分かります! 天体望遠鏡で眺めていた火星でも木星でも、それまでは単純な光点だったものが 輪郭が見えるようになり、更に倍率を上げた高性能な望遠鏡ではリングの詳細が 見えたり天体表面の色合いや起伏が見えてきたような変化とイメージして下さい。 つまりは、音像の中身と周辺の情報量が拡大したことで、音像のシルエットが 投影される面積がグラデーションの増大によって、あたかも広がってしまったの ではないかと錯覚してしまったわけです。 実際には音像の周辺に発生した微細な残響、響きのオーラが以前にもまして鮮明に 見えるようになってしまい、音像がまとう羽衣が微風になびく華麗な動きによって 私にはふくよかに変化したかの如く見えてしまったのでしょう。 そして、何よりも音像が膨らんだのでは、という錯覚を直後に打ち消したのがピアノの 音像が打鍵の一つずつで完璧なセパレーションを見せる分解能の素晴らしさでした。 打鍵というよりも、ピアノの弦の振動が高速度撮影されたスローモーションで 見えるのではないかと思う程のリアルさで、一音一音がくっきりと正確に描かれ、 その一音が空間を漂い消滅するまでをずっと眺めていられる安心感は初めてでした! 流れるようなピアノの演奏は楽音の連続として空間で新旧の音波が交わりながら 響きを空間に留めるのですが、一瞬の時間差で発生した音のひとつひとつに一切の 混濁がないので、音像の鮮明さ輪郭の明確さを視認しながら聴ける素晴らしさです! さあ、こんな未体験の音を突き付けられると[MCK10M]モードで聴くSAMBIENTAが 楽しみでなりません。私はC1のボリュームを4dBほど大きくして待ち受ける…。 「何という事だ!!パーカッションの一粒一粒が輝いているじゃないか!!」 マスタークロックの違いを試聴するには立ち上がりが鋭い楽音、例えばオルゴールや ハープなどで、ピン!と張り詰めたテンションから弾かれた音を注視すると、その 解像度や音像の輪郭などの違いで比較出来るものなのです。 同時に、弾く楽音のインパルス応答がどうかというチェックと同時に、ギターや ピアノのように鋭い立ち上がりの楽音から発生した余韻のあり方を観察するなど、 空間表現の違いでもマスタークロックの性質を分析することが出来ます。 そんな習慣を16年間繰り返してきた私が、今目の前で展開する多種多様な パーカッションの楽音を初めて体験する驚きと感動が脳裏を駆け巡る!! HIRO Acousticが構築する広大な音場感は微細な情報を高解像度で映し出すスクリーンの ようであるが、反射効率の極めて優れたスクリーンの全面に渡り、まるで色とりどりの クリスタル・ビーズを盛大に振り撒いたような小粒な輝きの乱舞が私も目と耳を虜にした!! 銀幕を背景に空中にばらまかれたピースに光が反射し、きらきらと輝きながら 多様な打楽器の細かい音がHIRO Acousticを包み込むように展開する素晴らしさ!! こんなに鮮やかでリアルなパーカッションは聴いたことがない!! この曲でもセンターで立ち上るサックスの響きに関する情報量の物凄さは同様な分析。 その背後にシンセサイザーの重厚な低音が湧き起こってくると…!? 「なに!この低域!!マスタークロックはウーファーにも利くのか!!」 P1 D1の[MCK10M]で受けたG1のクロック信号が、HIRO Acousticのたった22センチの シングルウーファーに数十グラムのマスウエイトを追加したがごとく作用し、 ウーファーのfo(エフゼロ)を強制的に引き下げたかのような豹変ぶりに私は興奮を 抑えられなかった!! ぐっと沈み込む低音の波動感がHIRO Acousticの周辺に湧き起こり、それは同時に 私の体表に見えない脈動として伝わってくる実感に思わず私の体が固まった!! 再生帯域が超低域まで伸びると楽音の質感から緊張感が取り去られ、ずっしりと しつつもゆったりと印象に変化してくるものだが、HIRO Acousticの低音は決して 膨らむことなく100Hz以下の低域においても楽音の輪郭を鮮明に聴かせる。 無機的ではあるが逆に正確無比な低音が、更に音階を下げてウーファーを揺さぶる ダイナミックな超低域は以前には経験のない重量感で私を惑わす!!こんなのありか!! 前述の大小三つの歯車でPLL回路の存在感を例えたが、G1の超高精度なクロック信号が 低域の再現性まで変化させてしまうという事実を眼前に突き付けられ、歯車が回転して 伝えていくのは回転数の同期という事だけでなく、楽音のエネルギー感もロスなく 伝送させていくという事なのだろうか。 私はこの低域の変化を聴いて、今までの常識と既成概念があっさりと覆された事を 確認するために、低域のチェックポイントを含む数曲の課題曲を聴きまくった!! そのいずれでも過去に経験のない低域の重厚さ、解像度の素晴らしさ、緩みない テンションの高まりという各項目を間違いのないG1の成果として認めたのです!! これには参りました。私にして想定外の発見であり、マスタークロックに関わる 効果のあり方に新項目が追加されたと断言致します!! -*-*-*-*-*-*-*-*-*- さて、ここでP1 D1の[MCK10M]モードに関わる有意義な試聴実験を私はもう一つ 行ったことを最後にお知らせしなくてはならないでしょう。 実は、このP1 D1の[MCK10M]モードというのはG-01から出力した75Ω矩形波の TTLレベル(4.5〜5Vppに相当)の信号でも動作させることが出来るのです。 ただし、ESOTERICとしてはP1 D1のクロック設定で[IN]と[MCK10M]の音質的な違いは ユーザーの選択ということで、特に声を大きくしての推奨のコメントは発していませんでした。 その理由も含めて、私はG-01で[MCK10M]モードを試してみたのです。 結果的には上記にて私が感動した[MCK10M]の魅力は残念ながら感じられませんでした。 むしろPLL回路を使ってのクロックシンク[IN]の方が好ましい曲もありました。 やはりGrandioso G1が開発されてこその[MCK10M]モードの価値観ということかと思います。 さて、今回ご無理を申し上げてお借りしたGrandioso G1の滞在期間は本日まで。 今まで絞り込んだ選曲でG1の根源的な存在価値を私は確認してきましたが、最後に やはりオーケストラを聴かなくては!ということで定番の課題曲を楽しもうと思った。 ■マーラー交響曲第一番「巨人」第二・第四楽章 小澤征爾/ボストン交響楽団 恒例の第二楽章の冒頭で弦楽五部の合奏が始まった瞬間に私はたじろいてしまった。 今まで何回聴いたか分からないオーケストラがこんなにも変わってしまうとは!! 「ホール録音のオーケストラこそ[MCK10M]モードの威力が最も大きいのでは!!」 先ず最初に印象に残るのは弦楽器の質感、特に音像が細かく再現される変化だった。 第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、ビオラと主旋律を演奏する弦楽器の質感が あろうことか玉虫色の美しさに変化したと言ったらいいだろうか! 弦楽奏者の集団として捉え、その群像として各パートの合奏そのものが一個の楽音と して聴いてしまうことが多いでしょうが、この時表れた弦楽五部の内面の音、指揮者 でしか聴けないだろうオーケストラの内声とも言うべき演奏者一人ずつの音色の違いが これ程までに克明に再現された事例を私は知らない。 楽音の塊を無理やりベリベリと引きはがしていくような分離感ではない。 束ねられたものを一本ずつ丁寧により分け解きほぐしていくかのような自然な 分解能が弦楽五部のすべてに表れている。 そして、肝心なことは解きほぐされた一本ずつの質感に、これまでのスタジオ録音での 試聴で体験してきた余韻感が演奏者個々にしっかりと付帯しているという実感なのです。 一本に分けても余韻感が鮮明であり、それらが合奏として複数の音色を放ち、 それがホールの空間で交差し調和しながら響きの連鎖を巻き起こす快感が素晴らしい!! その分解能は当然、管楽器の各パートにも変化をもたらし、木管楽器のふくよかな 響きが空気中に溶け込んでいき、金管楽器の立ち位置を明確にしながら遠方から ステージ背後の壁面を立ち上る響きに音響的ベクトルを感じ取ることが出来る。 トライアングルの輝く音には誇張感がなく、スピーカーの特長としてトゥイーターの 存在感をこれ見よがしにすることなく、控えめな音像サイズでステージの奥行きを 感じさせる遠近感が大変素晴らしい!! 「おや、このオーケストラは全体が遠のいた感じだぞ!!」 これはどういうことかというと、弦楽器にしても管楽器にしても各パートの楽音に 対する距離感が一定になり、オーケストラ全体がHIRO Acousticの後方に一歩下がり ステージの遠近感が今までよりも遠くに感じられるのです!! 再生システムとスピーカーの特長として、オーケストラの特定の楽器が手前に せり出してくるような鳴り方を経験した方もいらっしゃると思います。 コントラバスが鳴ると近くに寄って来きたり、大太鼓が鳴るとウーファーに 張り付いたような位置関係でステージの手前に移動してきたりという現象です。 しかし、HIRO Acousticの持ち味である帯域別のエネルギー感を極めて均一にする事、 特定の楽音が手前にせり出してくる現象はないということは私は承知しています。 スピーカーの特長を理解している上で、ソースコンポーネントの変化によって、 電気的な信号伝送の特長としてオーケストラの各パートに前後関係の基準があった わけですが、それは大変信頼性の高いものでした。 ところが、Grandioso G1 P1 D1のセットで[MCK10M]モードでオーケストラを聴くと、 レーザー測距機で各パートとの距離をきちんと取り直したかのように、弦楽器、 管楽器、打楽器という各々のポジションが極めて明確に均一に整列されるのです。 これはオーケストラをはじめとするクラシック音楽全般を聴いておられる皆様に とっては、まさに青天の霹靂ともいうべき再生音の新世代感覚と言えると思います!! そして、私はGrandioso G1との別れを惜しむかのように、今日は第四楽章まで 聴いてしまいました。冒頭の強烈なフォルテに続き雄大なグランカッサの強打!! 前述の低域の沈み込む重量感がホール録音でも発揮され、大太鼓の強力な打音が センター奥方向で叩き出され、その音像が膨らむことなく制御されているからこそ 遠近感が忠実に再現されるわけです。その醍醐味に私はしばし酔いしれてしまいました。 第四楽章も終盤に近付き、繰り返す主題の聴き慣れた旋律の響きを目で追っていくと、 特筆すべき遠近感の忠実な再現性に伴い、オーケストラの頭上に大きな空間があると いうことを、響きの上昇気流が駆け上がっていくステージ上の天井高がこんなにも 高かったのかと新発見させられてしまいました。 誇張感のないバランスでオーケストラをじっくり聴くと臨場感とは何かを再発見します。 生演奏を経験されている人々が演奏会場で当然のように見上げていたホールの天井を、 今、私はここでも見上げることが出来るのです!! そして、このGrandioso G1に関する新企画をハルズサークルにて掲載中です。 ぜひこの機会にご入会下さい。 |
担当:川又利明 |
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