発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18
ダイナ5555
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
H.A.L.担当 川又利明

No.1160 2014年10月25日
 「音楽を裸にするスピーカー登場!!その名はHIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCS!!」



小編随筆『音の細道』特別寄稿 *第71弾*
『音楽を裸にするスピーカー登場!!その名はHIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCS!!』


             ■ 序章 ■

「芸術は真実でない。とは、我々誰もが知るところである。芸術とは真実を、
 少なくとも我々に理解すべき真実を、認識させるための虚構である。
 芸術家は虚構を真実として他者に納得させるすべを知らなくてはならない。」 

                                                        パブロ・ピカソ

これは私の随筆「音の細道」の目次巻頭に引用した一節だが、私にとって意義
ある感動を体験した時には事あるごとに繰り返し引用してきたものだ。

虚構であるはずの音楽を演奏するオーディオシステムによる再生音において、
真実としての科学的な設計指標に基づいて作られたスピーカーであっても、
実は人間の感性によって仕上げられていくという事実が、どれほどの驚きと
感動をもたらすか、という体験をすることになった。

なぜ、スピーカーというアイテムでそれが可能なのか!?

オーディオシステムの進化とは測定技術の進化と共に近代化してきたと言える。
コンポーネントの性能を示す指標は測定器によって測られた特性・スペックに
よって未完成なところ不十分なポイントが指摘され、その測定器の精度が高く
なれば被測定側のコンポーネントの精度も向上するということになる。

つまりは科学的な分析力が向上することでコンポーネントを設計する上での
パラメーターの数が増加し、またパラメーターそのものの追求レベルが高くなり
進歩するという関係にある。

特に、この半世紀に渡る電子技術の進歩とコンピューターの普及というものは
オーディオシステムの音質を急激に進歩させ、同時に産業としても拡大させてきた。
その同時代にオーディオ製品を取り扱う仕事に長らく従事してきた私には、
科学技術の進歩と音質の向上が同意義に思われるのは当然のことだったろう。

音楽という芸術を冷凍保存して好きな時に解凍して楽しむというオーディオと
いう趣味は、それを追求していくことで人々に感動を与えることができるとい
うことでは「再生芸術」と言える。

この「再生芸術」という範疇において録音された時の音質と比較することは
不可能であるのだが、この私の立場と経験からしても前代未聞の再生音、
途方もなく美しい音を聴かせられた時、Hi-Fiという語源の意味を超越した
音が存在すること、いや、2014年のこの時に、このスピーカーが出現した事に
よって新たな定義を「再生芸術」に追加しなければならないと確信した。

このスピーカーの作者は弱冠九歳からスピーカーの自作を始めていたという
根っからのオーディオマニア。その男は美しい音を出そうとしてスピーカーを
開発したのではない。やはり、原音に忠実な音を出したいと願って作ったはず
なのだが、それが生みの親を元を離れて私の元に来た時から、科学的追求を
元に開発してきたはずの我が子が、実は聴き手に様々な観点からの感動を与える
ロマンチストであったことに気が付されたのであった。

足掛け四年以上に渡る開発と試作と試聴の繰り返し、そこには各分野の職人技
が至る所に発揮され、科学的な根拠をもとにトライとエラーを繰り返し、その
判断の基準であり根拠は作者の感性に他ならない妥協を知らないモノ作りとして、
このスピーカーが作り出した「再生芸術」を完成させた。そして…
そのスピーカーとの巡り合いは下記のような経過から始まった。

H.A.L.'s Circle Review-2014.03.10-No.3264-より引用

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/  Editor's Column  _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

ちょっと雑学ですが、セールスマンとビジネスマンの違いはなんだろうか、と
いうことを以前から気にしていたのですがネットで調べてみました。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

■ビジネスマンで検索してみると…
(英: Businessman)とは、英語の原義では実業家や経営者だが、日本では
特に営業を主とする交渉ごとに関わる会社員を指してもこう呼ぶ。
古くは同じ立場にある人を指して営業マン(えいぎょう マン)・また商社に
務めている人は商社マン(しょうしゃマン)とも呼んだ。

■次にセールスマンで検索してみると…
販売を主たる業務とするが、ひと口に営業職と言っても、実際にはその仕事
内容は様々であり、業界・業種、扱う商品・サービスあるいは会社の規模など
によって大きく異なるともされる。ただし、いずれにせよ、営業職の原点は、
人と人とのお付き合いであるという点では同じとも、「コミュニケーション能
力」と「意思決定を促す力」が必要とされる点では同じだともされる。

切り口により、営業の分類はさまざまである。決まった契約済み顧客を回る
「ルートセールス」と「新規開拓営業」、顧客の種別による「法人営業」と
「個人営業」、活動地域による「国内営業」と「海外営業」などである。
訪問形態による「アポあり」と「アポ無し」などの分類がなされることもある。

営業職に専従する者は俗に「営業マン」、「営業員」と称される。個人消費者
の自宅を訪問して営業活動を行う者は、特にセールスマン・セールスウーマン
とも呼ばれる。一方、企業、あるいは個人事業主を訪問する法人営業を行う
者は、営業マンと呼ばれる事が多い。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

改めて調べるとほほ〜と思ってしまいました。私が最も注目したポイントは
「営業職の原点は、人と人とのお付き合いである」これですね〜やっぱり!!

訪問販売をするのがセールスマンということで、私は自分をビジネスマンと
呼べる根拠がこの辺にありそうです。クリエイトするのがビジネスですから!!

今後も新企画に賭けていきますので何卒よろしくお願い致します。<m(__)m>

さて、ハルズサークルを紹介しているページにはこんな一節があります。
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/circle.html
(2000年5月現在、私はパソコン歴一ヶ月で本企画をスタートしています。)

そうなんですね〜、14年間という歳月を経過して会員数2300名以上、年間で
平均200回以上の配信を行っていますので、ざっと二日に一回以上は必ず配信
があるということで、皆様にも楽しみにして頂いているようです。

こんな活動をしているオーディオ業界のビジネスマンはいないと思います。
外部サーバーに登録して配信しているメールマガジンとは違い、私の配信に
そのまま返信して頂ければ私にメールが届きます!!

“人と人とのお付き合い”を大切にしていきたいという思いが、そんな配信
システムに表れているものです。いつでも気軽に私にメールを返して下さい。
何なりとご相談に乗りますので末長くお付き合い頂けますよう、改めてよろし
くお願い致します。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

そこで、今日は私としては珍しい行動に出ました。新聞で見かけた全く未知の
国産スピーカーのメーカーの代表者に下記のようなメールを送りました。
そのメーカーとはここです。→ http://www.hiro-ac.jp/

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

HIRO ACOUSTIC LABORATORY (ヒロ音響研究所)御内
廣中義樹 様
はじめまして。

私は東京、秋葉原のオーディオ専門店に勤務しております川又と申します。
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/

新聞記事から御社webサイトを拝見しまして、大変興味を持ちました。
一度私自身のホームグラウンドで聴いてみたいものだと思いますが、
そのようなチャンスを作って頂く事は可能でございましょうか?

私は世界中のハイエンドオーディオ製品も自分の試聴室で聴かないと
納得出来ない性分でございまして、厚かましいとは思いましたが先ずは
お訊ねしてみようと思ったものでございます。

特に急いでもおりませんし、面識もない廣中様に何らご無理を申し上げる
つもりもございませんのでよろしくお願い致します。

初めてのメールで不躾なご相談を申し上げましたが、忌憚のないご意見と
ご返事を頂けましたら幸いです。

突然のメールで失礼致しました。
何卒よろしくお願い致します。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

昔…、中道研究所というのがありましたね〜。私も沢山販売しました。
上記のメーカーのwebサイトには、なぜ「研究所」というのか、という説明が
ありますが、私はそのような発想は素晴らしいと思います。

だって…、H.A.L.も研究所ですからね〜(^^ゞ
さあ、どんな返事が来るものでしょうか。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

この時点では面識もなく、私としては慎重に控えめに言葉を選んでのメールを
お送りしたのだが、翌日に文字化けした一行だけの返信があっただけ。

しかし、それ以上は私から何も申し上げることなく半年以上のブランクが…。
すると9月末の事、国内某社の担当者が来店され上記の廣中氏からのアポイン
トメントがあるという。その後、廣中氏より直接の電話を頂き、急転直下の成り
行きで10月3日にご本人とスピーカーがやって来ることになった。
(以降は親しみを込めて、廣中さんと表記)

このHIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCSとの出会いは、この私にハイエンド
オーディオに対する新境地を提供してくれたのである!!

■HIRO Acoustic Laboratoryとは?
http://www.hiro-ac.jp/introduction.html

企業や会社は利益を得るために活動するのが本来の姿です。まず何が売れるか
を考えて製品を作る訳です。
しかし我々は「理想や夢を詰め込んだ製品を作ってみよう」からスタートして
いるのです。
ですからひょっとしたら商品としては一つも売れないかもしれません。
しかしそれでも良いのです。
「できることを全部やったらどんな製品ができ上がるのか?」
できあがった製品は言って見れば「研究成果」であり「芸術品」なのです。

■HIRO Acoustic Laboratoryの処女作MODEL-CCCとは?
http://www.hiro-ac.jp/production.html

MODEL-CCCとはCeramicのウーファー、ミッドレンジ、トゥイーターの頭文字。
MODEL-CCDはトゥイーターのみダイヤモンドトゥイーター搭載モデル。
今回私が試聴し感動したのはソフトドームトゥイーター搭載のMODEL-CCS。

■HIRO Acoustic Laboratoryのテクノロジーとは?
http://www.hiro-ac.jp/technology.html

「音を演出するのではなく、音源に入っている音をすべてさらけ出すことが
 最大の目的なのです。」

私はこの思想を聴いてから納得しました。このリンクの写真のページを開いて
ぜひご覧下さい。

■HIRO Acoustic Laboratoryの製品価格とはこういうレンジです。
http://www.hiro-ac.jp/specp.html

私にとっては以前より取り扱い範囲の価格帯なのですが、商売を優先した
プロモーションを行うというつもりはありません。
先ずはHIRO Acoustic Laboratoryがなし得た真実を忠実にユーザーの皆様に
お伝えしていく事、廣中さんの情熱を正確であり忠実な実演によって多くの
人々に知らせていく事によって結果は自ずとついてくるものと考えている。


      ■ HIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCS ■

私にとっても記念すべき日となった2014年10月3日、遂にMODEL-CCSが姿を表す。

https://www.dynamicaudio.jp/s/20141005-MODEL-CCS_02.jpg
https://www.dynamicaudio.jp/s/20141005-MODEL-CCS_05.jpg
Scan-speak社のソフトドームトゥイーター(イルミネーターシリーズ)
http://www.scan-speak.dk/twe_ill.htm
専用ハウジングは持ち込まれる三日前に形が出来たという事で表面仕上げは
なされていない状態。スピーカーの足元にあるのが外部に独立させた専用の
クロスオーバーネットワークボックス。

https://www.dynamicaudio.jp/s/20141005-MODEL-CCS_03.jpg
カタログ写真とは違い、FOOT STABILIZERは新開発されたものをこの日初めて
装着したもの。写真では四点支持に見えるが、実はスピーカー低部後方にもう
一本のスパイクがあり、基本的には三点支持とし後方の二つのスパイクは転倒
防止用ということで荷重を与えずに緩やかに接地させている。
http://www.hiro-ac.jp/fot2014.html
この写真と同じスパイクが組み込まれているが、床面にキズを付けることなく
フラットな円形低部が床に接し内部ではピンポイントにスパイクが一点支持。

https://www.dynamicaudio.jp/s/20141005-MODEL-CCS_04.jpg
これはウーファーのエンクロージャーとミッドレンジの接合部にあるタイム
アライメント調整用ゲージ。
http://www.hiro-ac.jp/timealignment.html
しかし、重要な事は、このゲージの目盛の数値でどれをどのように合わせるのか
というメーカーからの具体的指示は出されていない。このガイダンスは今後
制作するということで私もお手伝いが出来ればと考えている。

https://www.dynamicaudio.jp/s/20141005-MODEL-CCS_01.jpg
他のスピーカーと比較すれば解るがサイズとしては小型と言える。
http://www.hiro-ac.jp/panf2014.pdf
このカタログにて各部のサイズと重量が紹介されているが扱いやすいサイズ。

このようにMODEL-CCSが搬入された当初、先ずは簡単に音が出せるもので…
という安易な発想から取り敢えずの第一声を聴いたが、その段階でこれでは
いけない、もっともっと上のクラスで鳴らすべきだろうという事で直ちに
システム構成を変更したのが下記。

◇ H.A.L.'s Sound Recipe / HIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCS inspection system ◇

………………………………………………………………………………
ESOTERIC G-01(税別¥1,350,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/g01/index.html
     and
ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥360,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9500/index.html
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1044.html
     and
TRANSPARENT PI8+ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥815,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
finite element Pagode Master Reference Rack/HD02+CERABASE 4P(税込み¥870,000.)
http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

ESOTERIC 7N-DA6100II BNC(Wordsync用)×3 (税別¥750,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7nda6300_6100_2/index.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC  Grandioso P1 (税別¥2,500,000.)本体 ★E.M.G-board使用
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/p1d1/index.html
     and
ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥360,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9500/index.html
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1044.html
     and
TRANSPARENT PI8+ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥815,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
finite element Pagode Master Reference Rack/HD02+CERABASE 4P(税込み¥870,000.)
http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

★Grandioso P1+D1の接続は付属:HDMI Cable
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1083.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC  Grandioso D1(税別¥2,500,000.)    ★E.M.G-board 二枚使用
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/p1d1/index.html
     and
ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(2本/税別¥720,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9500/index.html
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1044.html
     and
TRANSPARENT PI8+ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥815,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
finite element Pagode Master Reference Rack/HD02+CERABASE 4P(税込み¥870,000.)
http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
ZenSati	Seraphim / Interconnect cable XLR 1.5m(1Pair 税別¥1,823,000.)
http://www.zensati.com/
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/960.html 

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC  Grandioso C1 (税別¥2,500,000.)   ★本体にE.M.G-board使用
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/c1/index.html
     and
ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(2本/税別¥720,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9500/index.html
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1044.html
     and
TRANSPARENT PI8+ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥815,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
finite element Pagode Master Reference Rack/HD02+CERABASE 4P(税込み¥870,000.)
http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽
 
ESOTERIC 7N-A2500/XLR 7.0m(税別¥2,280,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7na2500/index.html
 
                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC  Grandioso M1(1Pair 税別¥2,800,000.) ★E.M.G-board 二枚使用
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/m1/index.html
     and
ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(2本/税別¥720,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9500/index.html
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1044.html
     and
finite element Pagode Master Reference HD10+CERABASE 4P(2台/税別¥720,000.)
http://www.axiss.co.jp/brand/finite-elemente/finite-elemente/
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

ZenSati	Seraphim / Speaker cable 3.0m(1Pair 税別¥4,704,000.)
http://www.zensati.com/
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/960.html 

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
HIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCS(1Pair 税別¥11,660,000.)
http://www.hiro-ac.jp/
………………………………………………………………………………

この十日間ほど、これ程聴き込んだスピーカーがあっただろうか。
いつもの課題曲だけに留まらず、とにかく私が過去に聴いた曲の総てが全く
違う次元の再生音であり、自分が記憶する再生音のレベルを凌駕する音質に
驚愕の思いで、ただただ聴き続けてしまった。

いつもなら課題曲のこのパートがこうだと、部分的な演奏個所の相違点を
貧弱なボキャブラリーから引用して語ることの限界を感じてしまう。

この私にして過去に例のない音質は今まで存在しなかった質感であり、それは
正に「音楽を裸にする音」なのである。ある演奏のこの部分という説明では
試聴した曲数が多すぎて、どの曲をモチーフとして語ろうかという選択が困難
であることを思い知ることになった。そう、全ての曲が別次元の音質なのだから!

多数の楽曲を試聴して最大公約数的に私が感じた印象を、スピーカーという
アイテムに対して私が考察してきた技術的なポイントを織り交ぜながら、
拙い解説を試みることにした。

  ■ HIRO Acoustic Laboratory MODEL-CCS Sound Profile ■

セラミック・ダイヤフラムのスピーカーユニットメーカーとして歴史と伝統が
あるドイツThiel&Partner社が運営するブランドAccuton製スピーカードライバー
をメインに制作されたMODEL-CCシリーズは、画期的な新技術、回路技術、新素材
などの設計者の発見による画期的な要素を持つスピーカーではない。
http://www.accuton.de/home/index.php

スピーカーシステムとして何を優先すべきなのかというシンプルな発想のもと、
エンクロージャーとはこうあるべきというポリシーを日本が誇る金属加工の
職人技による完成度の高さをベースとして、廣中さんの求める音質を実現する
ために相当な費用と時間と情熱を込めて試作の繰り返しから音質を磨き上げて
きたという単純とも言える開発動機と地道なモノ作りの賜物という事だろう。

■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章  小澤征爾/ボストン交響楽団

どんな新製品も先ずこの一曲から聴き始めるという定番の選曲。しかし…、
私はMODEL-CCSが奏で始めたマーラーを聴いて痺れてしまった!!

なんと美しい弦楽器であることか!!
解像度が素晴らしいのは当然のこととして、清々しく透明感あふれる弦楽五部
の各パートは私の記憶にない素晴らしさ!!

私とて理想の音というものを組み立て出来る形として持っているものではない。
つまり、全く次元の異なる新種の音を聴かされて、初めて自身の求める音とは
これなのではないかと覚醒させられることで理想の音というものを自分の感性
の上で認識できるのである。私の脳裏にはこんなイメージが沸き起こった…!!

一本の毛糸を手にとって軽く引っ張ってみると、くっきりとした直線として
空間に濃厚な一線を目にする事が出来る。

その毛糸を引っ張る指先の力を抜いて、ふっとテンションを緩めると細やかな
毛に光が入り込み、一本の直線と見えていた毛糸の中に細やかな空間が広がり、
一本一本の羊毛の存在感がふっくらと空気を取り込み穏やかなディティールが
目視できるようになったかのような弦楽器ではないか!!

今までのスピーカーはあたかも一本の毛糸を持つ指に力が入っていて、色合いは
濃厚だが一本の直線にしか見えなかったものが、MODEL-CCSで聴く弦楽器は
一本一本の極細の糸がほぐれるかのように、そして実に多数の糸が撚り合わさって
いたということに気付かせてくれるのである。

これは以後に述べる全ての再生音に共通することなのだが、セラミック振動板
のAccuton製ミッドレンジ・ドライバーとScan-Speak製Illuminatorトゥイーター
の過渡特性が極めて素晴らしい事に起因していると感じられた。

トランジェント(過渡特性)が良いという傾向の音質は、パルシブなアタック音
が鋭く立ち上がりが良い音というイメージを持たれるだろうが、実はそれだけ
ではない。もちろん、スピーカーからの再生信号の立ち上がりが素晴らしいと
いうことはパーカッションなどのアタックの鮮明さにつながるのは事実なのだが、
微小信号が忠実に再現され、弦楽器や声楽などの連続する楽音の滑らかさにこそ、
その真価が発揮されるものなのだ。

http://www.hiro-ac.jp/kezuridasi.jpg

上記のように左側のアルミニウムの塊を削り出して右側の写真のようにミッド
レンジとトゥイーターのハウジングが製作されるが、減衰が予測しやすくコン
トロールできるというアルミの素材感と質量によって、更にメタルワークの
巧妙な削り出し形状、これ以上ないと言うほどの至近距離で音源位置を設定
するという各手法によって、振動板が発するエネルギーを極めて有効に音波に
変換していることが滑らかさを支えるトランジェント特性を獲得したと言える。

「VIVID AUDIO K-1」 
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/oto/oto55.html


そして、上記の随筆ではスピーカーのエンクロージャーは必要悪とも言える
機能性を求められているとしているが、VIVID AUDIOのようにエンクロージャー
のデザインでスピーカードライバーから放射された音波のディフラクション、
つまり一次反射波の影響を回避していると述べているが、実はこの真意として
各種ドライバーを取り付けているバッフル板の存在が要点となって来る。

つまり、発生した高域周波数の音波における短い波長が反復しながら拡散して
いく過程において、平面のバッフル板に必要以上の面積があった場合の反射波の
影響を考慮してのこと。

そのバッフルが全くない理想のプロポーションとしてB&W Nautilusがある。

しかし、MODEL-CCSにおけるミッドレンジとトゥイーターを取り付けている
ハウジングは上記の機械的剛性が極めて高いことから、ドライバーユニットを
取り付ける際に支持構造としてのバッフル面を必要としない、実に最小面積の
形状であり、問題になるようなディフラクションの発生はほぼ発生していない
と私は再生音から判断している。

その証拠に挙げられるのはトライアングルのチャーミングな音像だろうか。
私が聴いてきたスピーカーで、これ程ジャストフォーカスで煌めく光点として
トライアングルがステージの奥でひそやかに、そして鮮明に鳴らされたという
記憶がないくらいに小さい音像、そして克明な輪郭を有するトライアングルだった。

ミッドレンジとトゥイーターのエンクロージャー構造と材質によって最高度の
トランジェントを確保し、高剛性のハウジングによって音波を出力した後の
自然な球面波としての拡散を可能にしたバッフル面積の最小化という二種類の
テクノロジーが高性能ドライバーの本領を、いやユニットメーカーの知り得ぬ
高度な再生音として確立している事を私は実感した!!これは素晴らしい!!

アルミニウムのボックスに納めたセラミック振動板ユニットという組み合わせ。
何とも金属的で冷たい音が出るのではという既成概念を軽々と覆すMODEL-CCS。

上記の毛糸の比喩を使ったのはMODEL-CCSが聴かせる弦楽器には、これまでに
体験した事のない温度感と肌合いが感じられるからこそなのである。決して
無表情で冷たくクールな音ではない。丁寧な編み込まれたセーターで感じる
ほのかな温もりを感じさせる弦楽器の音、それをMODEL-CCSは備えている。

先ず第一印象として弦楽器の素晴らしさを述べたが、同様な技術的背景による
管楽器の再生音も前例のない美しさで展開した事は言うまでもない。

■セミヨン・ビシュコフ指揮/パリ管弦楽団 ビゼー「アルルの女」
 「カルメン」の両組曲から1.前奏曲 8.ファランドール

前奏曲での弦楽五部によるアルコの合奏では楽音の質感だけに留まらず、息を
飲むほどの広大な音場感を展開する。五百円玉とほぼ同じ振動面積のソフト
ドーム・トゥイーターと、たった13センチで女性の手の平より小さいミッド
レンジ・ドライバーが織り成す多彩な質感を随所に含む弦楽器群は幾層にも
響きのレイヤーを重ねていく。実に美しいハーモニーがMODEL-CCSを包み込む!

ファランドールではぐっと奥行き方向への展開が印象的。カスタネットやタン
バリンの音像は殊更鮮明な輪郭を描き、ステージ奥に遠近法の消失点を提示する。
スリリングな弦楽の合間に勇壮な打楽器が響き渡り、ホールエコーを味方に
つけた管楽器の余韻感が素晴らしい!!克明な音像提示に私は舌を巻いた!!

そして、オーケストラの各パートでの再現性を知るうちに、MODEL-CCSが有する
可能性の高さを別の角度から分析し始めた。まだまだ何かあるぞ!

■チャイコフスキー:バレエ音楽《くるみ割り人形》op.71 全曲
サンクトペテルブルク・キーロフ管弦楽団、合唱団
指揮: ワレリー・ゲルギエフ

序曲でのひそやかな弦楽器の展開、この質感は記憶にない。聴く度に新発見と
いう興奮を誘うMODEL-CCSのスクエアなデザインは、目をつぶって聴けば曲線
フォルムのスピーカーではないかと疑ってしまうしなやかさが素晴らしい!!

3トラックの行進曲では木管楽器のソロパートが左右に駆け回るように展開する。
前述のようにトランジェント特性が今一つか、またはエンクロージャーでの
ディフラクションによって、この鮮烈な管楽器の質感が滲んでしまうという
現象を経験したことがあるが、何とも爽快な響きの連続に驚いてしまう!!

15トラックの「お茶・中国の踊り」は必ずかける私の定番のテスト曲。
ファゴットのユーモラスでありタンギングを利かせた演奏の低音部。ゆったり
したコントラバスの低音にスリリングなピッコロの切り口上のような演奏。

ピッチカートのささやきが弦楽器の表情を塗りかえ、MODEL-CCSが醸し出す
音場感が桁外れであることに気が付く。どうにも美しい質感にうっとりする。

続けての16トラックの「トレパーク・ロシアの踊り」では、今まで鮮烈にして
高速に切り返す弦楽のアルコが刺激成分を含むという経験もあったが、MODEL-CCS
においては全く心配はない。さあ、ここでタンバリンの合間に後方から響いて
くる強烈な大太鼓に打音に注目していた。

大口径ウーファーを搭載する大型スピーカーではゴージャスな演出となる音。
この大太鼓の音がボリュームを上げると左右スピーカーの中間を独占し盛大な
打音を引き延ばすように展開するスピーカーが結構あった。しかし…

MODEL-CCSの低音再生における最大の特徴がこの辺から垣間見えてくる。
いや、これ以前にも感じていたことなのだが、ティンパニーやグランカッサ
という鳴り物の音像が音量によって膨張・縮小するという現象があったことだ。

後述するが、低音楽器の再現性はスピーカーによって個性の主張でもあり
作者の感性が表れるところ。雄大な鳴りっぷりだけでいいのか!?

ところが、MODEL-CCSが聴かせる低音打楽器の質感は先ず音量によってサイズが
変化してしまうという事がない!!実は、これが最も重要なポイントになる。

このトレパークではステージ後方で叩かれる瞬間と同サイズの音像で進行し、
定位置で叩かれる打音は余韻感を発するだけで膨張することはないのだ!!

しかし、前述のマーラーの一番、第三楽章での葬送行進曲の中で、ゆったりと
したグランカッサの連打が小音量で続くのだが、重量感を持ちつつもホール
エコーとして拡散する響きを多分に含んだ打音をMODEL-CCSは実に正確に再現
していたことを思い出す。打楽器の音量感の変化に対して音像サイズを決して
変えることのないMODEL-CCSの潜在能力が更に新発見をもたらしていく!!

ここで述べている選曲の順序は実際の試聴順序とは異なるのだが、解説の流れ
として都合のよい順次で述べていく事にする。試聴した曲数が大変多い事と、
聴いた曲での発見を確認するために、全く違うジャンルに飛び火するように
次々と様々な曲を聴き続けてきたのだった。さて、都合のよい流れに戻り…!

サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン」を聴いて確認したくなる。

JONGEN, J.: Symphonie Concertante / SAINT-SAENS, C.: Symphony No. 3
 (Guillou, Dallas Symphony, Mata)
http://ml.naxos.jp/album/DOR-90200

上記のURLによるジャケット画像と同じディスクをステレオサウンド誌が直輸
入盤として販売したのは、もう20年近く前の事で今となっては貴重なディスク
が私のコレクションとしてここにある。

その第二楽章の演奏が始まった時の弦楽器の美しさに驚愕した!!
そしてオルガンの響きがMODEL-CCSと私のいる空間をしっとりと包みこむ。

打楽器のように瞬発的な低音ではなく、楽音としての音像を提示することなく、
ゆっくりと、そして重厚な脈動感を確実に伝えてくるMODEL-CCSの低域再現性は
確実に前例のないものとして直ちに私の記憶を上書きしていく!!

オルガンとしての音像を左右スピーカーの中間に描くのは、高音階のパイプから
引き出されてきた楽音が中央上空にふーと浮かび上がる時。オルガンの低音階
の楽音では22センチ口径のセラミック・ウーファーが正確なピストンモーション
を繰り返す度に、私の体全体で気圧変化を感じるような細かな脈動感で部屋
全体の空気に波動を広げていく。それもさりげなく誇張感など微塵もない!!

大口径ウーファーとバスレフポートを有するスピーカーとは全く違う再現性。
MODEL-CCSの低域再生に関するチェック項目が何行も私の頭に浮かぶ!!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

■DIANA KRALL「LOVE SCENES」11.My Love Is

全く対照的という音場感でヴォーカルとウッドベースで録音したこの曲。
この曲はデュオの演奏なのだが、実際にはイントロから続くDIANA KRALLの
指を弾く音とヴォーカル、そしてChristian McBrideの重厚なウッドペースと
楽音としては三種類であり、全てがセンター定位という実にシンプルな録音。

スタジオワークによってDIANA KRALLのヴォーカルと指を鳴らす音には実に
広大な広がりを見せる深いリヴァーヴが施されており、それとは全く対照的に
ウッドベースは大変ドライな録音で、リヴァーヴは感じられないソリッドな
質感という、同室で演奏したら絶対にあり得ない音場感のカップリングである。

今までに相当数のスピーカーで聴いてきた曲、しかしMODEL-CCSでは別世界。
ホール録音における低域再生の振る舞いを観察し、軽く反応するが重量感を
保ち、空間に広げるべき低音と個体感をもってリスナーに提示する低音楽器を
見事に分類して再生するスピーカーなどあっただろうか!?

左右MODEL-CCSのジャストセンターに浮かぶChristian McBrideのペース。
これには参った!! 今までの経験で史上最小の音像と一言で結論が出る!!

オーケストラの低音楽器で予想していた通りの展開。この曲は全ての楽音が
センター定位であるが、その三者の音は見事に空間に共生しながらも存在感を
棲み分けするという垂直方向での分解能が実に素晴らしい!!

冒頭から続く指を弾く音は今までの印象よりも大人しく。切れ味は良いのに
雑味がないのは、過去の指パッチンの音は刺激成分を含んでも効果音としての
演出効果として認めて来てしまったのであろうか。意外だが聴きやすい!

そして、DIANA KRALLのヴォーカルが提示する音場感の広い事!実に爽快だ!!
その拡散していくヴォーカルの響きとは見事なセパレーションでペースが
くっきりとセンターに音像を描き、スタジオ録音ならではの解像度が凄い!

前述の弦楽器の質感で予測していたように、ヴォーカルの質感には潤いがあり、
SとTが付く発音で聞苦しいことなど全く感じさせない素晴らしさ。いい!!

MODEL-CCSのウーファー用エンクロージャーの内部を再度ご覧頂きたい。
http://www.hiro-ac.jp/innne1.html

右上の写真でフロントバッフルのウーファー取り付けよう開口部から見ると、
内部のブレーシング用フレームの先端が二か所、白く光るように写っているが、
比較的硬度の高いシリコンの円筒形のパーツが取り付けられている。
このパーツが内部からウーファードライバーのマグネットに押し付けられており、
スピーカーユニット自体の振動を制御している。しかし、これは各論なのだ。

世界中にはハイエンドと称するスピーカーが実に多数存在しているが、今までに
輸入された製品を私は多数聴いてきた。その経験からすると中・高域の再生音
よりも低域再生にメーカーと設計者の個性が色濃く表れていると考えている。
それはスピーカーのエンクロージャーの設計方針によって大別できる傾向がある。

ここで言う低域を個性化するエンクロージャーの議論としては、アクティブ
ウーファーやサーボアンプを使って低域を専用にコントロールするような設計
のスピーカーは対象外とする。

そうすると、平面バッフルのみの完全な後方開放型スピーカーという形式、
包み込むという語源の通りエンクロージャーを有するスピーカーではバック
ロードホーンのように、低域でホーンロードをかけて特定の低音を強調しよう
とするものが少数派だが存在している。

そして、バックロードホーンでは物理的に低域の波長に合わせてのホーンの
設計を行うと、どうしても大型化してしまうという事情と、低域に位相遅れが
発生してしまうという事がある。ただし、下記のような巧妙な設計で説得力の
ある魅力的な演奏を聴かせるものもあるので全否定は出来ない。

「H.A.L.'s impression!!-Voxativ Ampeggio Signatureの魅力とは!!」
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/news/1064.html

次に、エンクロージャーを持つスピーカーではバスレフ型と密閉型があるのは
皆様もご存知の事。むしろ現在ではバスレフ型スピーカーの方が大切を占める
くらいに製品数は多いと言える。

密閉型スピーカーとして大変高く評価され、AVALONの成功のカギとなった名器、
Acentから理論的にバスレフ型に移行して行った同社の歴史の中で、社長であり
設計者のニール・パテル氏との語りによる下記の随筆をご覧頂くと両方式の
特徴がご理解頂けるものと思う。私がコンピューターを使い始める前の時代に
書いた手書きの図がシンプルで解りやすいかと思う。

第一部「プラトン哲学に生きる音」
https://www.dynamicaudio.jp/5555-7F/oto/oto45-01.html

正しくポートチューニングを行えば良質な低域再生が出来るという点に関して、
私は何も異論はない。そのような形式のスピーカーで素晴らしいものは多数あった。
しかし、ここで私は新たな論点を思い付いた。

無響室におけるスピーカーの測定で正弦波を信号として使用した場合にフラット
レスポンスが得られたとして、そのスピーカーにダイナミックな低音を含む
非常に動的な音楽信号を再生させたとしたらどうなるだろうか…!?

マイクロホンで測定できるのは再生周波数特性であり、正弦波によって各帯域
にピーク、ディップが発生しないようにフラットレスポンスを獲得する。
これは基本中の基本で第一歩であろう。

しかし、多岐にわたる音楽信号で前述のような打楽器やリズム楽器のように
非常に瞬発性があり、発音の瞬間が最大音量で減衰していく音。あるいは、
オーケストラにおける低音楽器で連続するもの、オルガンももちろんそうだが、
一定音圧で継続される信号を再生させたらどうなるのか。この論点においては
測定器での普遍的解析はほぼ困難であろうと思われる。

そして、肝心なことは2chハイファイ再生において表現される楽音の音像と
質感に関しては測定することは困難であるという事。それはバスレフ型の宿命
として、ポートから排出される共振周波数をピークとする低音は音像の表現性
を音場感に誘引し、広がる低音の傾向を良しとしてしまう事ではなかろうかと
推測するのである。

更に、バスレフ型スピーカーはスピーカーユニットの振動板に対するエンク
ロージャー内部の音圧、または空気圧による制動効果がないので、振動板の
ピストンモーションを高速化できるというメリットも見逃せない。しかし…

バスレフポートから出力される低音は電気信号による再生音とは別種のもので
あり、ポートチューニングによって変調された低音と、クロスオーバーネット
ワークでフィルタリングされたとは言え、減衰してはいても中・高域の成分を
含んでいる事も事実なのである。

これらの要因から、バスレフ型スピーカーでは再生する周波数と音量によって
周波数特性も変化するし、同じ音量で複数のスピーカーを鳴らした場合に個々
の再生音で低音の質感が大きく異なり製品としての個性を持たせているという
ことが言えるのではなかろうか。ただし、個々のスピーカーでの個性と魅力と
いう論点においては製品として認められる完成度を持っているものも多数ある
というのは事実だろう。

このように、ダイナミックな楽音の低音がスピーカーによって大きく表現力が
異なるという前提に置いて、密閉型スピーカーによる低音はあくまでも振動板
の挙動によって作られた一元的な低音ということが言える。つまり、バック
ロードホーンやバスレフ型はウーファーの振動板の裏側に放射される音波を
どのように扱うのかというポイントがあるが、密閉型スピーカーでは完全に
振動板の前面から放射される音波のみという原理が大きな違いと言える。

その密閉型スピーカーのエンクロージャーにおいて、振動板の背圧となる音波
に変調をもたらせなければ極めて純粋な低域再生が可能になる。
ここで言う変調とは何か!?

先ずはウーファーが発した音響エネルギーによってエンクロージャーが共振
するという事。これは機械的な共振と言い換える事も出来る。スピーカー
ドライバーが発した機械的な振動がエンクロージャーからリターンされる時に
キャビネットの材質と構造によって変調された振動がドライバーに影響する。

次に、ウーファーの振動板の背圧がエンクロージャーの内部に放射された後に、
どのように減衰させていくかという音響的手法による変調がある。言い換えれば、
振動板の背圧は内部で定在波を発生させたり、特定の周波数が強調されたり
してから、再度ウーファーの振動板に襲いかかって来るからだ。

MODEL-CCSの開発過程において、廣中さんは内部に充填する吸音材、いや、
ご本人は吸音材ではなく吸音体という表現をしておられたか、特殊なキルトを
試聴の上で量を調整してエンクロージャーに充填させていると言っていた。

このキルトの説明は私も慣れていないのだが、一種の繊維質であるのは間違いない。
ただし、質量は大変小さく、圧縮するとどこまでも小さくなるが空気を含むと
何十倍にも容積を増すという大変軽量な繊維としか言いようがない。

機械的な共振を徹底的に排除しようという事は上記の写真でも解るだろう。
そして、音響的に背圧を減衰するための手段も試行錯誤の上で確立した。
超低域まで深々とえぐるような重厚な低域をいとも簡単に出しながら、しかも、
MODEL-CCSの低音は音像サイズを音量を上げても変化させないという離れ業と
して物にしているのである。こんな低域再生は私も経験したことがない!!

Martin Grubinger - Drums 'n' Chant を聴いた。
http://www.deutschegrammophon.com/html/special/grubinger-drumsnchant/
http://www.youtube.com/watch?v=v9kuxJYLsuA

タブラのような楽器で叩かれる小音量で極めて低い周波数のパーカッション。
その空気を揺るがすような打音がオルガンの持続する低音と同様に均一な質感
と重量感で私の体表に空気のさざ波のごとくの感触を伝えてくる。震える!!

多数のスタジオ録音でロック系とポップス系の曲を聴き続けてきたが、低域の
質感は以前の記憶とは程遠い。盛大なドラムの音をスピーカーの演出効果に
任せて録音した曲は、バスレフ型で大口径ウーファーで大音量再生での迫力に
刺激と興奮を覚えたものだが、そこで見失っていた本来の質感とはこうだった
という新発見が選曲を変える度に起こるのだから仕方がない。

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

一夜にしてMODEL-CCSを語ろうと言う試みの失敗を今は認めざるを得ない。
このスピーカーの異色な音を語ろうとした時の技術的説明による説得力の欠乏。

やはり、感動した私の心境を余さず語ろうとして時には、私が聴いてきた曲の
数だけインプレッションを述べないと物足りなさを感じてしまう。

つまり、聴いた音楽の数だけ発見と感動があるという事実を縮小して語ることは
出来なかったという私の未熟さが最後に感じられてしまった。

しかし、これだけは言える。MODEL-CCSは音楽を裸にするスピーカーだと!!
今まで外見からボディーラインを想像していただけの再生音から、全ての楽音
がまとっていたコスチュームをはぎ取り、真実の姿を初めて見せてくれるスピーカーだと!!


担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!!


戻る