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H.A.L.担当 川又利明


No.116 「久々の感動、進化していたクレルでノーチラスが生まれ変った!!」
私の夏休みがあけて早々のこと、8/11はかねてから予定していたノーチラスシステムにセットアップするためのクレル・アンプ群の搬入の日である。一回では積みきれないため二日にわたる搬入となった。午前中からはじめてようやく音が出始めたのは午後三時過ぎになってからと久々の大セッティングとなった。用意したのは650MC、350MCを2セット、250MC、と合計8台のモノラルパワーアンプと同社の新型プリアンプのKCT、そしてMRSという錚々たるラインアップである。

価格にして1.819万円、重量にして約560キロ、いやはや汗だくのセッティングである。そして、PADのRLSシステムによるノーチラス専用スピーカーケーブルを何としても使いたいということで、片側4台のヘビー級のパワーアンプを密集体型としてレイアウトしなければならないので仕上がりは次のようなセッティングとなった。
さて、ノーチラスにクレルをペアリングするのは随筆にも述べているように四年ぶりということになり、しかもその当時にはなかったクレルのダゴスティーノ氏から頂戴したオリジナルチャンネルディバイダー、同社のマスター・リファレンス・サブウーファーシステムとの共演ということで、いささか興奮気味にセッティングを進めた。ここで各パワーアンプをどの帯域に使用するかということだが、この場合に最もパワーの小さい250MCをトゥイーターに合わせるのでは考える方が多いだろうと思われる。しかし、私の判断ではノーチラスのトゥイーターこそ650MCクラスの充実したアンプを用いたいポイントでもある。ここで私は迷わず上から二つトゥイーターとミッドハイユニットに2セットある350MCを使用し、250MCはミッドロー、そしてウーファーに650MCを組み合わせた。クレルのシステムも電源投入直後の音は評価できないので、初日は軽く音を出す程度で翌日からの試聴に備えたのだった。
http://village.infoweb.ne.jp/~fvbd0434/hal/oto39.html

翌日の土曜日、この日は午前中から試聴のお客様が来店された。今まで他店でオーディオを揃えたのだが、進むべき方向もわからず納得のいかない現在のシステムに対して今後の展開をアドバイスして欲しいという熱心な方である。私はノーチラスが現在考えうる最高のスピーカーのひとつと信じており、まずはどなた様にも聴いて頂くことにしている。もちろん、誰彼かまわず無分別にノーチラスをお勧めしているわけではなく、一人一人の都合に合わせて提案をしているのだが、オーディオを使っての音楽鑑賞でユーザー個々が進んでいくべき道を示すための判断基準としては最良のサンプルとなっていることは間違いはないのである。その証拠に「川又さん、これが私が求めていた音ですよ。いやぁ、今日は来た甲斐がありました。具体的には…。」という展開になってしまった。
さて、電源投入後二時間四時間と経つうちに「ちょっとこれまでとは違うぞ!!」という印象が次第に強くなってくるではないか。「一体何だろうか?」と頭の中で盛んにこれまでのジェフロウランド・モデル12とコヒレンス2による演奏の記憶と対象比較していた。「ううむ、これはまず低域だなあ」と一人合点する。クレルのMRSにはモノラルアンプの650MCと同じものが内蔵され、38センチ口径のウーファー2本を駆動しているのだが、先日のMRS単独の試聴ではこれまでにない低域の制動感に舌を巻いたものだった。それと同じアンプが今は贅沢にもノーチラスの30センチ・ウーファー一本に一台使われているということになる。さあ、ここで登場するのがバージョンアップに出していたP-0である。数日間の別れであったが、期待のsタイプになって戻ってきてくれた。これで私のリファレンス・ラインが整ったことになり、より正確な分析が出来るというものである。

それではと、とっておきの低域観察用のソフトを取り出してきた。以前のブリーフニュースNo.098気絶するほど悩ましい!スーパーノーチラスで聴く“Fourplay”」http://www.dynamicaudio.com/hal/brn_old.htm で紹介しているフォープレイの「ベスト・オブ・フォープレイ」(WPCR1214)である。この5トラック目の「チャント」のイントロで展開するハーヴィー・メイソンの強烈なフロアータムの音にドキッとする。これも以前に組み合わせていたジェフロウランド・モデル12において、PADのRLSノーチラス用スピーカーケーブルに光を入れた瞬間に感じた以上の違いがあるではないか。今まで目に見えていたウーファーの挙動がピタッと制動され、ズシーンと余韻と思っていた響きが見事に圧縮されてしまったようである。いやいや、響きが圧縮されてなくなってしまったということではない。本来がそれほどスピード感をもって立ち上がり、そしてパニックブレーキをかけたように立ち下がっていたということなのだろうか。「なるほど、スタジオ録音の鮮明な低域のあり方はわかった。それではホール録音のオーケストラではどうなんだ」と次のディスクを用意した。リファレンスレコーディングのクラシックオーケストラ・サンプラーの「Tutti!」(REFERENCE RECORDINGS RR-906CD)である。http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/100.html その一曲目がEiji Oue/minnesota Orchestraのニコライ・リムスキー・コルサコフDance of the Tumblersである。フルオーケストラとグランカッサの強烈なフォルテが連打されるのだが、これも今までホールエコーだろうと思っていた低域の残響がすっと引き締められている。そしてグランカッサの表現が面ではなくステージの奥にちゃんと輪郭として捉えられるようになったではないか。とすれば、いままでこいうものであっただろうと認識していた低域の空間表現は一体なんだったのか。

疑り深い私は、これほどの低域の駆動力という印象はチャンネルディバイダーの違いによるものではないかと、付属のものとクレルのオリジナルと二台のチャンネルディバイダーを切り替えて同じクレルのアンプ群で聴くという実験もしてみた。もちろんチャンネルディバイダーによる質感の相違はあるものの、チェックポイントとしていた演奏の随所ではやはり650MCのマッスルな支配力が大きく感じられた。まったく650MCによるノーチラスのウーファーにおける変貌ぶりが、長らくJeff Rowlandをリファレンスとしてきた私の認識に根本からの更新を促すこととなった。

これは、既にノーチラスを使用されている方、そしてこれからの計画にエントリーしている皆様には絶好のサンプルとなる演奏であると私も太鼓判を押すことになった。そして、熱いノーチラスの変貌には更なる驚きが…。

  
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