発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明

No.1106 2014年4月20日
 「H.A.L.'s One point impression!!-Wilson Benesch the A.C.T. C60」


4月5日「Wilson Benesch the A.C.T. C60を遂に本日展示導入致しました!!」

「18年ぶりとなるThe A.C.T.Loudspeakerの再来!!国内唯一の展示導入!!」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1101.html

いつかいつかと私も期待して待っていたものですが、4月5日H.A.L.に展示導入
が実現しました。実物を見て先ず思ったことは「こりゃ〜小さいぞ!!」

周辺のスピーカーと比較して頂ければと思い直ちに記念撮影です!!
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140405-c60.01.jpg
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140405-c60.02.jpg

高さ1090mmで重さ53Kgという実に扱いやすいスピーカーではありませんか!!
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140319-ACT-C60.p

さて、今回も初日の第一印象は大変素晴らしかったのですが、私が注目して
いるポイントを実験するために200時間以上の鳴らし込みを行い、途中では
スピーカーケーブルもバイワイヤー仕様に変更するなど、こだわりのセット
アップを行い毎日聴き続けています!!

このスピーカーが他者と何が違い何が特徴なのか、多数の選曲とシンプルな
実験によって次第に解き明かされていくレビューをお届け致します!!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

実は、このスピーカーを展示した直後はDEVIALET 240で鳴らしたのですが、
その第一印象が事の他素晴らしく、このスピーカーには奥深い潜在能力がある
のではと考えて二日目から下記のシステム構成に変更しました。

更に、最初は某社スピーカーケーブルでシングルワイヤーで聴き始めましたが、
情報量が大変多いWilson Benesch the A.C.T. C60であることに気が付き、
それを最大限に発揮させるためにスピーカーケーブルをZonotone 7NSP-Shupreme 1
に変更しました。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1095.html

その変化に大きな手応えを感じ、1ペア追加してバイワイヤー接続として、
更に100時間以上のバーンインを行ったのが下記のシステムとなりました。

◇ H.A.L.'s Sound Recipe / Wilson Benesch the A.C.T. C60 inspection system ◇

………………………………………………………………………………
ESOTERIC G-01(税別¥1,350,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/g01/index.html
     and
ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥360,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9500/index.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1044.html
     and
TRANSPARENT PI8+ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥815,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
finite element Pagode Master Reference Rack/HD02+CERABASE 4P(税込み¥870,000.)
http://www.axiss.co.jp/fFE.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

ESOTERIC 7N-DA6100II BNC(Wordsync用)×3 (税別¥750,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7nda6300_6100_2/index.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC  Grandioso P1  (税別¥2,500,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/p1d1/index.html
     and
ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥360,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9500/index.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1044.html
     and
TRANSPARENT PI8+ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥815,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
finite element Pagode Master Reference Rack/HD02+CERABASE 4P(税込み¥870,000.)
http://www.axiss.co.jp/fFE.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

Grandioso P1+D1付属:HDMI Cable
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1083.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC  Grandioso D1  (税別¥2,500,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/p1d1/index.html
     and
ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(2本/税別¥720,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9500/index.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1044.html
     and
TRANSPARENT PI8+ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥815,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
finite element Pagode Master Reference Rack/HD02+CERABASE 4P(税込み¥870,000.)
http://www.axiss.co.jp/fFE.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

ESOTERIC 7N-DA6300II XLR 1.0m×2 (税別¥580,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7nda6300_6100_2/index.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC C-02×2 Dual-Mono(税別¥2,800,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/c02/index.html
     and
ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(2本/税別¥720,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9500/index.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1044.html
     and
TRANSPARENT PI8+ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(税別¥815,000.)
http://www.axiss.co.jp/transparentlineup.html#POWER
     and
finite element Pagode Master Reference Rack/HD02+CERABASE 4P(税込み¥870,000.)
http://www.axiss.co.jp/fFE.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

ESOTERIC 7N-A2500/XLR 7.0m(税別¥2,280,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7na2500/index.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
ESOTERIC  Grandioso M1   (1Pair 税別¥2,800,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/m1/index.html
     and
ESOTERIC 7N-PC9500MEXCEL(2本/税別¥720,000.)
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/7npc9500/index.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1044.html
     and
finite element Pagode Master Reference HD10+CERABASE 4P(2台/税別¥720,000.)
http://www.axiss.co.jp/fFE.html
………………………………………………………………………………
                ▽ ▽ ▽

Zonotone 7NSP-Shupreme 1 / 2PairをBi-Wireにて使用
(2.0m/1Pair 税別¥220,000.)and(2.5m/1Pair 税別¥258,000.)
http://zonotone.co.jp/products/speaker-cbl.html

                ▽ ▽ ▽
………………………………………………………………………………
Wilson Benesch the A.C.T. C60(1Pair 税別¥3,200,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140319-ACT-C60.pdf
………………………………………………………………………………

第33話 「ポスト・キュービズム」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto33.html

このスピーカーの基本コンセプトは18年前の上記の随筆でも述べていますが、
私は日本の村田製作所が開発した球形トゥイーター(ハーモニックエンハンサー)
を搭載し、100KHzまで再生可能とした事が最大の特徴ではないかと考えています。

しかし、再生帯域が100KHzまであったとして、そのような超高域の再生音その
ものが存在するということは一種の楽音としてはあり得ません。このスーパー
トゥイーターの果たした役目を検証することが私の最大の関心事となりました。

さて、後述する簡単な実験と音質的な印象を理解して頂くために、A.C.T. C60
のユニークなユニット構成を先ず念頭に入れて頂ければと思います。

メーカーのサイトで公開しているスペックには2.5Wayとありますが、輸入元で
ある(株)ステラの資料では3.5Wayとなっています。なぜでしょうか?

クロスオーバー周波数は500Hz/5kHz/20kHzとなっていますが、もっとも特徴的な
ことは170mm口径Wilson Benesch W.B. One Bass Mid unitがダイレクト接続と
なっており、一切のフィルターを使用していないということでしょう。

このカーボンファイバーを主材料とした広帯域フルレンジドライバーの上下に
全くフィルターを使用せず、なだらかに減衰する高域と低域側に他のユニット
を-6dB/octという一次フィルターのみで次のように重層する構成なのです。

murataスーパートゥイーターは20KHz以下を-6dB/octで減衰させるハイパス
フィルターを使用。つまり、この球形トゥイーターは10KHzで-6dB、更に5KHz
でも-12dBの出力を発しているという事をぜひ記憶しておいて下さい。

次に、25mmソフトドーム・トゥイーターは同様に5KHz以下を-6dB/octでロール
オフさせるスロープ特性のハイパスフィルターを使用しています。近代のこの
口径のソフトドーム・トゥイーターは大体が30KHz以上まで再生しているのが
通例になっているので、murataスーパートゥイーターと再生帯域を共有して
いるということを記憶しておいて頂きたいものです。後述しますが、この辺が
ポイントになってきます。

そして、フルレンジ駆動されている上記170mm口径と同様なユニットに500Hzで
-6dB/octというハイカットフィルターを使用して、Bassドライバーとしています。

つまり、500Hz以下ではダブルウーファーとして機能しているということです。
ただし、この同口径ウーファーは1KHzにおいても-6dBの出力を発していると
いうことになり、二個のウーファーの連携が実は強靭な低域再生に大きく貢献
しているということが後述の実験で確認されたものでした。

このようなユニットの使用方法を前提に、トライワイヤリングという方式を
決してスマートではないナットによる締め付け方式としたのは18年前と同じです。
そこで、18年前の随筆から下記を引用しました。

「この重厚なターミナルは純銅製で0.25ミクロンの単層ゴールドコーティング
 が施されています。この頑強なナットによるケーブルの着脱に関しては、
 一般的なターミナルを採用してのスピーカー設計における重要な技術的問題
 を早期に解決する事が出来、時間外勤務を削減するのに役立ったほどでした。

 ターミナルという一部品に関しても、ケーブルを強固に結合させることに
 よって伝導領域を維持するための、しっかりとした接触表面を持たせる必要
 があるのです。トライ・ワイヤリング仕様としたザ・アクト・ワンで若干の
 抵抗成分を有するジャンパーを使用するにあたり、システムの高域特性を
 左右する個々の技術的選択を正確に反映させるためにも前述の強固なナット
 締めによるターミネッションは必要なことであったのです。」

さあ、この接続方法に関して私の好奇心が赴いたところで、今後の試聴に関わる
音質決定要素を発見しました。前述のように最初はシングルワイヤーから始め、
次にバイワイヤーに変更したわけですが、その接続方法に関してのことです。

バイアンプであれば、中・高域と低域側に各々独立したパワーアンプを接続し、
低域ドライバーからの逆起電力による影響が中・高域に発生しないためにも、
同時にバイワイヤー接続にする意味があるとどなたでもお分かりになると思います。

しかし、スピーカーに対してパワーアンプ1台でバイワイヤー接続しても、
結果的に駆動電力の供給源であるアンプは同じ回路であり、スピーカー側は
中・高域と低域側に各々独立したケーブルであっても、アンプ側はシングル
ワイヤーであってはウーファーからの逆起電力の影響は同じパワーアンプへと
戻されてしまい意味がないのではと考えられる人も多いと思います。

さて、ここでA.C.T. C60のスピーカーターミナルを見て頂きましょう。
赤黒のジャンパーケーブルは付属品です。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140412-c60.03.jpg

トライワイヤリングの一番下のプラス(赤)マイナス(黒)は振動板の質量を調整
してある17センチウーファーです。その上が同口径でフルレンジ駆動のミッド
バスユニット、アンプからのスピーカーケーブルが接続されているのはmurata
スーパートゥイーターとソフトドームトゥイーターの入力端子です。

上にふたつ空きがありますが、上から-2dB、真中が-1dBと二つのトゥイーター
の出力レベルを減衰させたい時のプラス側接続端子となり、写真のように接続
してあるのは0dBでフラットレスポンスの入力端子となります。プラス側端子
だけをつなぎ換えることで微妙な高域レスポンスの調整が出来るものです。

私はこの写真のように最初シングルワイヤー接続して聴き始め、第一印象が
大変素晴らしかったわけですが、せっかくバイワイヤー接続にするとしたら
どのような接続方法が有利なのだろうかと実験しました。その写真がこれ。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140412-c60.04.jpg

普通であれば最低域のウーファーを単独で接続したい、逆起電力の大きな低域
ドライバーに専用ケーブルを使用したいということです。トゥイーターと
ミッドバスドライバーは写真のようにキンバーケーブルの純銀ジャンパー
ケーブルでショートさせました。ところが…

「あれ〜、音場感が委縮してしまったぞ! それに低域の量感が減少したぞ!」

パワーアンプまで全く同じシステム構成なのに、この音質変化には驚きました。
せっかく低域ユニット単独で配線したものの、どうやらミッドバスドライバー
とウーファーの連携が薄れてしまったのか?

あるいは、ミッドバスドライバーの逆起電力がせっかくのスーパートゥイーター
とソフトドームトゥイーターに悪影響を及ぼしたのか!?これは意外でした!!

私も認めている優秀なケーブルであるZonotone 7NSP-Shupreme 1/2Pairを使用
してのBi-Wire接続をするのであれば、いったいどんなくくりでつなげば良いのか!?
結果的に私が採用した接続方法はこのようになりました。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140412-c60.05.jpg

C60の最大の特徴であるスーパートゥイーターをベストに鳴らすには、そして
エンクロージャーサイズからは想像も出来ない低域の再現性を引き出すには、
このような連携にてバイワイヤー接続することが最適と判断しました。

前述したように-6dB/octという一次フィルターのみのC60において、各ユニット
が重複しながら各帯域を再生する際に、ワイヤリング方法の違いによって想像
以上の変化があったという事が今後の試聴においてC60の魅力を理解する上で
大きな前提となりました!!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、murataスーパートゥイーターとはどんな存在なのでしょうか?
私の解説を述べる前に今となっては貴重な資料となってしまったファイルを
ぜひご一読頂ければと思います。

もう13年以上前になりますが「日本オーディオ協会」の機関紙「JAS journal」
に株式会社村田製作所 技術開発本部 中村 武 開発室長 が寄稿した文献です。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140406-ES103.pdf

結局は商品化されませんでしたが、ちょうど13年前の4月に撮影していた
こんな貴重な写真があります。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/pho/010421/es103n.jpg

当時からmurataスーパートゥイーターに関してはこんな取り組みもしていました。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/142.html

だからこそ、今回のWilson Benesch the A.C.T. C60に私は多大な期待と興味
感心を持ってしまったわけです。

一口にスーパートゥイーターと言いましても他社からは色々なものが商品化
されているのは皆様もご存じのことと思います。それらは動作原理によって
総じて二つの種類に分類できるものと考えられます。

一つはダイナミック型スピーカーの動作原理そのもので振動系の軽量化により
再生帯域の上限を伸ばしたタイプ。簡単に言えば外観としては既存のトゥイー
ターと類似しており、スピーカーシステムに追加する場合に便利なように
クロスオーバーネットワークを内蔵した単品商品などがありました。

また、ダイナミック型スピーカーの動作原理という解釈は強力なマグネットを
使用するという意味にも置き換え出来ます。なぜかと言いますと、ダイヤフラム
の材質にメーカーによる種類が複数あったとしても磁力の中に振動系を置くと
いう原理は同一だからです。

その範疇としては振動板の素材としてにアルミ、ベリリウムなどがあり、形状
としてはドーム型、リボン型などがあります。また、この中でも振動板以外に
ボイスコイルを振動系に含むものと、リボン型のようにアルミ箔そのものに
音楽信号を流すものとがあります。

そして、高速で振動するものは空気抵抗の影響がどうしても発生するために
振動板自体に剛性が求められるという宿命があります。ですから、ドーム型の
ダイヤフラムは剛性は維持しやすいが、リボン型では振動板全体が均一な挙動
を安定的に行えるのかというポイントに関しては課題があるということです。

しかし、これら磁界の中で振動系を置いているものの共通項は質量あるものを
移動・振動させることによって発音させるという原理です。ここがポイント!!

次に、もう一つの種類として、上記以外の動作原理によるものでは村田製作所
の球形トゥイーターや下記の電気活性高分子ダイヤフラムを用いたユニークな
ものも登場しています。
http://www.kithit.com/
http://www.kithit.com/ayumi/tweeter.html

後者の場合には磁界と音楽信号を流す導体を用いるダイナミック型とは違い
質量あるものの移動・振動という動作原理がないということがポイントです!!

さて、下記のWilson BeneschサイトにあるWhite Paperの10Pをご覧下さい。
http://wilson-benesch.com/downloads/whitepapers/Wilson_Benesch
_ACTC60_Loudspeaker_White_Paper.pdf
上記の村田製作所 技術開発本部 中村 武 開発室長が作成した文献に同じ図表 があったことに気が付かれたでしょうか。 私が述べている質量あるものの移動・振動を行わずに発音するという原理は 何に対して最も効果的かと言いますと、このようにインパルス応答性が素晴ら しいという事が重要なことなのです。 村田製作所の文献には、このインパルス応答性が耳に聴こえる帯域の楽音に 関して変化をもたらすということが最後の方に書かれていますが、これを 何とか確認したいという事がC60というスピーカーに対する私の最も大きな 関心事であったわけです。 C60におけるmurataスーパートゥイーターの効果・貢献度をどのように実験 するかということに関しては、スーパートゥイーターのオンオフ・スイッチが あれば簡単に実験する事が出来るのですが、当然そのようなものはありません。 また、murataスーパートゥイーターにラバー製のカップなどでフタをして、 出力された音波を封じ込めるような方法も考えたのですが、ソフトドーム トゥイーターの間近に突起物を取り付けたりすると通常トゥイーターの出力 した音波が反射してしまい観察したい音像や音場感に影響してしまうことも 考慮して私は次のような実験方法を採用しました。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20140414-c60.06.jpg このようにクリーニング・クロスを適当な大きさに切って、スーパートゥイー ターの出力音圧を吸音させようとしたものです。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20140414-c60.07.jpg しかし、この方法にも問題点があることは事前に承知していました。本来ならば スーパートゥイーターだけの出力を吸音させたいのですが、どうしてもソフト ドーム・トゥイーターの音圧も吸音してしまいます。 簡単にクロスを上げ下げして実験出来ますが、通常のトゥイーターの音圧も かなり減衰してしまい、楽音そのものの輝きも薄れ音場感全体が暗くなって しまうようで、これではスーパートゥイーターの検証は出来ません。そこで… 取りうる方法は吸音させる繊維質の面積を小さくしていこうという事で、この ように更に小さくしたクロスでの実験をしてみました。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20140414-c60.08.jpg 各課題曲を吸音クロスありなしで比較してみると、前回よりはソフトドーム トゥイーターの再生音が減じる割合は減ったものの、やはり20KHz以上の帯域 が再生音にもたらしている変化を認識するにはまだ吸音し過ぎでした。 そこで、更に吸音クロスを小さくしようという事で、結果的には次の写真の ように最小面積でmurataスーパートゥイーターを包み込むようにしたのです。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20140414-c60.09.jpg http://www.dynamicaudio.jp/file/20140414-c60.10.jpg この状態での吸音クロスありなしで、やっとmurataスーパートゥイーターの 効果がどのようにC60の音質に貢献しているのかが分かってきました!!             -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 私の過去の経験からスーパートゥイーターは何種類も試したことがありました。 そして、その際の使いこなしのポイントは何と言ってもスーパートゥイーター の出力レベルを出し過ぎないように気を付けなければなりません。 本来のトゥイーターの他に音源位置として感じられるようなレベルは出し過ぎです。 あくまでもスピーカーシステムとしてまとめられているトゥイーターが作り 出す音像と定位感が動いたり変化したりするのは避けなければなりません。 楽音の質感が違和感なく自然な潤いを帯びるようになり、同時に余韻感を含む 音場感が広くなり、残響成分の存続性が良好になる傾向が成功例と言えます。 さて、そのような経験則からmurataスーパートゥイーターを標準装備とした Wilson Benesch the A.C.T. C60において、前述のような実験方法と成功例と して記憶している音質変化の在り方を探りだすのに私が選曲したのがこれ。 ■DIANA KRALL「LOVE SCENES」11.My Love Is http://www.universal-music.co.jp/diana-krall/products/uccv-9378/ これは、エンターテイメントを意識したスタジオ録音でしかあり得ない録音なのです。 つまり、ヴォーカルとウッドペースが同一空間でライブ演奏をしたとしたら、 絶対にこのような音像と音場感にはならないからです。 Christian McBrideのウッドペースは大変ドライに録音されており、ベースの 音像をくっきりと描き、余分なリヴァーヴは追加せずにデッドな空間で比較的 オンマイクで収録したという感じの音質。 それに対して、イントロから繰り返されるDIANA KRALLが鳴らす指の弾け方と、 その余韻が大変長い滞空時間で空間を走り回り、また彼女のヴォーカルには スタジオワークで付加された広範囲に広がり拡散するリヴァーヴが特徴的!! このように相反する音場感を持つデュオの演奏であり、弾かれる指の瞬間的な 立ち上がりと鋭さ、ヴォーカルに含まれるリヴァーヴが示す広大な空間サイズ、 それらと逆行するようなウッドベースの余韻を含ませない引き締まった鮮明な 音が対象的なのです。 つまり、瞬間的に弾ける高い音階のパルシブな指の音、そしてその余韻感。 連続する楽音としてのヴォーカルが占める空間の大きさと口許の鮮明な音像。 倍音成分を豊富に含む重低音のペースはソリッドな録音で、上記の空間サイズを 広く大きく再現する指の音とヴォーカルとの対照的な質感が観察出来るのです。 先ず、吸音クロスを↓このように貼り付けて聴き始めました。 http://www.dynamicaudio.jp/file/20140414-c60.09.jpg 頭の中に音の記憶のテンプレートが出来るように、また色々な楽音が空間で 交差する音の地図が出来るまで繰り返し三回ほど聴いてしっかりと記憶します。 そして、席を立って左右スピーカーまで歩いて行き吸音クロスをはがして聴く ということを何回も何回も繰り返していく事になります。先ず最初の印象は… 「このスピーカーのバランスはスーパートゥイーターがなくても相当いい!!」 イントロから始まったバシッ!バシッ!と、DIANA KRALLが指を弾いて鳴らす音は、 か細いはずの女性の指とは思えないくらい強力な楽器の一つとなっています。 吸音クロスを貼ったままでも、そのインパクトは十分であり、また余韻感と しても見事な広がりを見せてくれます。 ここで先ず確信出来た事は、本来のソフトドームトゥイーターが発する高域 成分は目論見通り存続していて、吸音クロスによって響き成分が減衰される ことなく音場感を形成しているということが確認できたことです。 次にChristian McBrideのウッドペース。しかし、このC60の低域は実にいい!! 17センチ口径とは思えない程の量感を提示しながらも、ソリッドアルミで構成 されるフロントバッフルとキャビネットデザインの威力か、実に引き締まった 低域であり、ベースの音像が膨張せず重量感ある低音が実に素晴らしい!! そして、ピッチカートするペースの展開が実にハイスピードなのです。 低域の立ち上がりは見事な瞬発力を発揮し、エンクロージャー内部で蓄積され 位相が遅れた低域が解像度を低下させることは皆無と言っていい!! そして、DIANA KRALLのヴォーカル。ウッドベースと同じセンター定位であるが、 低域のエネルギッシュな楽音と混濁することはなく、左右スピーカーの身長 よりも30センチほど高い空間に口許が浮かび、左右音源の中心点から湧き出す リヴァーヴ上下左右に広がっていく展開に何の不満もありません!!いいです!! さあ、三回繰り返してしっかりと記憶に焼きつけてから、席を立ってスピー カーまで歩きセロテープで貼り付けた吸音クロスを外して、全く同じボリュームで 同じ曲をスタートさせます。すると… 「あー!!この変化は何としたことか!!」 先ずはDIANA KRALLの指を弾く音の変化。吸音クロスを付けた状態で感じられた 肉厚感が消えている。どちらかという「バシッ!バシッ!」と聞えていた音が 「ピシッ!ピシッ!」という質感に変わっているではないか!! murataスーパートゥイーターが果たした役目とは高域の増量ではなく質的変化 ということだったんだ!! インパクトのある一瞬の音、その切れ味が違う!! 刃のなまった包丁では力を入れ何回も往復させないと刃が通らない。しかし、 球形トゥイーターが加わったことで俄然切れ味が良くなって、刃を乗せただけ で何の抵抗もなくすーっと刃が沈み込んで行くような爽快さ!!そんな印象か!! 今まで肉厚感として感じていたものは、実はソフトドームトゥイーターだけでは この音の再生音では過渡特性が追随出来ていなかったのだろうか。高速反応に 対応出来なかった分、位相がずれた高域成分が重複することで厚みのある音に なっていたようなのです。 超高速なインパルス応答が可能になった高域成分の追加によって、この球形 トゥイーターは10KHzで-6dB、更に5KHzでも-12dBの出力を発しているという事 で高い音階の弾ける音の波形をより正確に再現することに大きく貢献している ということなのだろう。一瞬の弾ける音が透明感を増加させるのだから凄い! 「あー!!ウッドベースの音像がどうして!?」 更に驚いたのはChristian McBrideのウッドペース。重厚な低音楽器なのだから、 スーパートゥイーターの再生帯域とは縁がないものだと思っていたら大間違い。 ベースの弦を弾いた瞬間に含有される多数の音色から構成される重低音が感じ られるが、漆黒のイメージと思っていたベースの音が実は黒一色ではなかった ということが球形トゥイーターの追加によって解明されていく!! 今までは微量なグレーゾーンがベースの音像の内部に存在していたようだ。 その中間色のグレーが音像の輪郭を不鮮明にしていたようで、純白と漆黒の 対比が鮮明になり、開放弦のうなりが構成する音像にきりっとした輪郭表現 が発生しているのには驚いた!!何と何と球形トゥイーターは低域の音像に ディティールを描き出す効果を持っていたとは驚いてしまう。これはいい!! ウッドベースの音像における輪郭表現が鮮明になったということに注目して 聴き続けていると、更に音像サイズが二割ほど縮小しているという副産物に 気が付いてしまった。 倍音成分を豊富に含むペースの質感にもたらされた変化はヴォーカルにも共通 するのだろうか…、そんな推測が私の頭の中でひらめいた瞬間には既にDIANA KRALLはそこに立っていた!! 同じ位置関係でセンター定位するヴォーカルがC60の中央に浮かびあがった時、 私の直感がズバリ的を射抜いた事が再生音から感じられる!! 「あー!!変化したのはリヴァーヴだけじゃない!!プロポーションも良くなった!!」 左右のmurataスーパートゥイーターの間隔は3.2mというセッティングなのだが、 実はその中間にある薄暗かった空間に細く絞られたスポットライトを向けて、 その光軸の先に直径30センチ程度に凝縮されたDIANA KRALLの口許が浮かぶ!! ヴォーカルの質感が明るくなったという単純なことではない。中空から発する 声のエネルギー感を正面から見た投影面積で例えるなら、球形トゥイーターが 発した正確な高速応答性をもつ20KHz以上の倍音によって楽音の核が発生し、 その周辺に噴出していく余韻感との対比を明確にしたのだという分析だろう!! つまりは、イコライザーを使って15KHzから20KHzの高域を増加させたという 単純なものではない。ぎらぎらと輝く眩しさを追加したのではなく、逆に発声 そのものに滑らかさが加わり、同時にリヴァーヴが消滅するまでの時間軸が 延長される事で、DIANA KRALLの背景に響きのカーテンが揺らぐようになった。 murataスーパートゥイーターは残響の延命策ではなかった。楽音そのものの 内部に本来の正確な波形再現性をもたらし、C60が発した全帯域の音波に対して 質的改善をもたらしているという事、単なる高域信号の増量ではないという ことが次第に実感されてきました!!さあ、他の曲で確認です!! ■“Basia”「 The Best Remixes 」CRUSING FOR BRUSING(EXTENDED MIX) http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/ES/Basia/ http://www.basiaweb.com/ http://members.tripod.com/~Basiafan/moreimages.html#remixes1 イントロから繰り返されるドラムはスピーカーによって千差万別の鳴りっぷり。 小口径ウーファーでは「タンタン!」と切れ味はいいが重さはない。大口径の ウーファーでは「ドムドム!」という感じの付帯音というか、スピーカーシステム のエンクロージャーとポートチューニングの個性を引きずった低音になる。 しかし、C60の発する高速反応の低域には何の不満もない!!大きなストローク の低域信号がエンクロージャーから排出しきれずに残留し、それに次々と 新しい低域信号が送りこまれる事で発生する音像の肥大化。まずそれがない!! 500Hz以下はダブルウーファーとして動作する二つのユニットはバイワイヤリング の接続方で実感されたように、この曲のようなスタジオ録音でのソリッドな 低音に関しては同系統での配線方法が功を奏している。 「え〜、たった17センチの小口径ウーファーがこれほどの量感を叩き出すのか!!」 ウッドベースという楽音に重量感とタイトな音像を提供するC60ではドラムも 同様な反応を示す。ヴォーカルが始まる前の多彩なイントロで前回同様に頭の 中にサウンドマップをイメージして、様々な楽音による地形図を記憶する。 多項目の楽音をスキャンしてマップに書き込んだら再度吸音クロスを外す…。 「なんなんだ!!このドラムの豹変ぶりは!!」 予想出来なかった展開です。恐らくはシンセドラムと思われる一種無機質で 規則正しく連打されるドラムの一音一音が正確にリピートされるのだが、 murataスーパートゥイーターはそんな低音の質感をきりりと引き締めてしまう。 いわゆる打ち込みの低音にこんな倍音が含まれていたとは想定外の変化だった。 「タンタン!」と切れ味が良くなるが、決して軽くならないドラムの変化に私は 思わず舌を巻いてしまった!! ドラムの後にはチェロやピアノというアコースティックな伴奏楽器が続くが、 これらの存在感を余韻感をプラスすることで引き立てるのだから堪らない!! イコライザーを使って周波数特性の強制的な変更は音楽にとっては外科的手段 による調整方法と例えたとしたら、球形トゥイーターがやっていることは楽音 の内部にカテーテルを送りこむ内視鏡手術のように内科的音質治療法ではない かと思ってしまった!! なぜか…。スタジオ録音の課題曲で楽音の質的変化と 音像の鮮明化という変化を実感した後で聴いたオーケストラでの衝撃からだ!! ■チャイコフスキー:バレエ音楽《くるみ割り人形》op.71 全曲 サンクトペテルブルク・キーロフ管弦楽団、合唱団 指揮: ワレリー・ゲルギエフ http://www.universal-music.co.jp/p/UCCD-2120?s=70370 弦楽のピアノッシモと交差するピッチカートの弱音、管楽器のソロパートが 旋律をつないでいく妙技、ホールエコーの在り方を聴き手に意識させる事なく 豊潤な響きを構成する多数のトラックがあるが、私がもっぱらテストに使用 するのは次の四つのトラック。 1.序曲 3.第2曲:行進曲 15.お茶(中国の踊り) 16.トレパーク(ロシアの踊り) この場では書き切れないほど実は多数の課題曲を聴いているので、これで何度目か 忘れるくらいの回数で吸音クロスの着脱を繰り返してきました。 そうすると、不思議なことに実験の回数を重ねるごとに球形トゥイーターを マスクした音が聴けなくなってくるではありませんか!!これには参りました!! 上記の4トラックを続けて聴き、前回同様に頭の中にしっかりと定着させ、 その後に起こる変化と照合するためのテンプレートを作るわけですが、既に この時点でmurataスーパートゥイーターから吸音マスクを外したくて仕方ない 私がいるのですから、すっかり洗脳されてしまったということでしょうか。 さあ、また歩いて行ってC60のマスクをとってやろうか…!その瞬間からです!! ごく普通のCDから前例のない情報量を引き出すディスクプレーヤーの最高峰、 ESOTERIC Grandioso P1+D1をフロントエンドに採用したのはこのため!! ESOTERIC C-02を敢えて二台使用することで可能となった緻密さと音場感の 爆発的な拡大はこのために!! 最低インピーダンス 4.3ΩというC60に理論値通りの大出力を高速で送り込む ESOTERIC Grandioso M1のダイナミックさはこのために!! 楽音の背景に漂う微小な余韻感を克明に描き出す極めて低いノイズフロアーを 有するZonotone 7NSP-Shupreme 1というケーブルを選択したのはこのために!! スタジオ録音の選曲で感じとってきたC60というスピーカーの開発意図は、 最後のオーケストラを聴く頃にはmurataスーパートゥイーター無くして完成 しなかったろうという思いが先行するようになっていた!! 1.序曲 弦楽五部が軽く弦触れるような短時間のアルコの繰り返しがホールエコーの 未開拓領域に最初からスポットを当てる。こんな余韻感が含まれていたとは!! 木管楽器とリズムを合わせて叩かれるトライアングルの質感とフォーカスは これほどまでに鮮明だったろうか!! 第一ヴァイオリンのアルコと第二ヴァイオリンのピッチカートが隣り合って いるのに、左側のC60から発せられる両者の楽音は虹の七色が隣り合う色に 微妙に混じりながらも原色の鮮やかさを失わない鮮明な分離を見せる光景を 思い起こすように、整然と優雅に各々のパートの響きを自己主張する!! 切れのいいタンギングによって放たれる木管パートの合奏では寄り添うような 余韻感を左右スピーカーの上方に滞空させ、響きと潤いという二語をイコール という記号でつなげてしまった!! こんな漂うような余韻感だったのか!! 3.第2曲:行進曲 管楽器によるお馴染の主題が華やかに展開し、その合間を縫ってヴァイオリン の合奏が見事なシンクロを見せて左チャンネルから右側へと響きのボールを 放り投げるように残響を空間に連鎖させる。 この時に右側の奥からコントラバスの軽妙なピッチカートが放たれる。 この低音階の弦の響きがこれほどまでにステージの情景描写に大きな役割を 果たしていたという事実が球形トゥイーターの登場によって明らかになった!! スーパートゥイーターの動作帯域のはるか下の音階になるコントラバスなのに、 彼ら八人だけの演奏とは思えない程の響きの豊かさがもたらされるのはなぜだ? スタジオ録音の低音楽器で鮮明になったベースやドラムという変化は確認したが、 ステージの後方からしずしずとやって来るコントラバスにこれほどの潜在的な 残響の骨格があったとは想像すらしていなかった。何度聴いても間違いない。 この録音のコントラバスには響きを紡いでいく骨組みが最初からあったのだ!! 15.お茶(中国の踊り) 冒頭からの軽妙なファゴットの響きがステージの床を駆け巡り、ここでもかと 思うコントラバスのピッチカートが一定のリズムで背後を固める。低音楽器の 余韻感をどうして球形トゥイーターが支配的になれるのか? とにかく不思議だが間違いのない事実。楽音に含まれる倍音は低音楽器の方が より多くのなるのだろうか。コントラバスの弦に金色の微粒子を塗りつけておき、 その弦を弾く度に金色の粒子が空気中に拡散し、無風であるはずのステージ上を ゆったりと漂っていくようなイメージを私はC60の周辺に見ていたのだった!! フルートの素早い主題提示が左右C60の中間を突き抜けて行くように立ち上がる。 弦楽五部がピッチカートだけで演奏する曲であり、各パートがしっかりと同期 しながらも主題の演奏を次々にパトンリレーしていく演奏が花を添える。 ピッチカートの響きが残留している空間に管楽器の余韻感が重複しながらも 混濁することはなく、両者ともに最後の余韻が消失するまでトレースできる 程の鮮明なステージという疑似空間を作りだすことに驚く私がいる!! 16.トレパーク(ロシアの踊り) 高速なアルコを繰り返す弦楽が左右双方から厚みを伴う旋律を奏で、その中央 ではティンパニーの打音が実にWilson Beneschらしい響きを醸し出す。 大口径ウーファーでは、この打楽器の連打をデフォルメしてしまう傾向があるが、 C60の低域再現性は決してそうはならない。 打楽器のヘッドを叩く瞬間のインパクトを忠実に捉え、その後に楽器の胴体が ブンッと鳴り響く付属音を含ませて連打が続くが、次の打音が来る前に終息 させた低音処理が実に見事にスピーカー中央に音像としての輪郭を固定する。 うねるようなエネルギッシュな弦楽器の質感に、耳に優しい潤いを添加してい るという球形トゥイーターの潜在価値を無意識のうちに感じってしまうように なっている私だった!!             -*-*-*-*-*-*-*-*-*- 高域特性の素晴らしさをセールスポイントにしているスピーカーは多数あります。 それらは再生周波数帯域の高域が伸びているグラフをアピールするものが多い のではないしょうか? でも、正弦波を使っての測定で得られる高域特性は音圧として示されるだけの 場合が多いという裏側の事情があります。 つまり、マイクロホンで測定すると何10キロヘルツまでの音圧を確認することが 出来ました、というところまでの話になってしまいがちです。 でも、実は音圧だけで高域再現性の素晴らしさを物語ることは出来ません。 最も大切なことは正確な波形の再現性なのです。 それはアンプの世界でも同様なことが言えます。俗にいうハイスピードアンプ というイメージからすると、さも音楽信号を加速させるがごとくにイメージを ユーザーに与えがちですが、電気信号をハイスピード化させるなどと言う事は あり得ない話です。 あまり、混みいった話しにはしたくないのですが、アンプの能力を示す項目と して群遅延特性と言うのがあります。これは伝送帯域が十分に広くないと伝送 周波数(大変高い周波数帯域)によって伝送速度に遅れがでることが測定され、 そうすると結果的に伝送される波形に歪が発生するという理屈です。 つまり、ハイスピードとは超広帯域伝送の一つの事例として使われているもので、 結果的にはハイスピードとは波形の正確な伝送を支える技術の一環であると 言うことになります。 さて、実はスピーカーの振動板の挙動にも同様なハイスピードが求められます。 それは再生周波数が高くなればなるほど一秒間の振幅回数も多くなり、それは ダイヤフラムの振動速度が高速化されなければ歪の原因になるという事です。 球形スーパートゥイーターとは音楽信号の伝送において、特に電気信号から 機械運動へのエネルギー変換器であるスピーカーで超高域の歪成分を補完する 役割であり、その効果は低い周波数の楽音にまで発揮されるということです。 ただ、それを証明するためのアプローチがスピーカーメーカーの各々で違うと いうことでもあり、スピーカーユニットの自社開発と製造には限界があるとい うことも考慮しなければなりません。 私は日本の技術力が生んだ独特な球形スーパートゥイーターという画期的な 製品が、海外のスピーカーメーカーに新しい視点と可能性を与えたということ を大変高く評価し歓迎したいと思っています。 そして、球形スーパートゥイーターの貢献とはどのようなものなのかを正確に 皆様に伝えなければと考えて稚拙ながら本文を書いてみました。 Wilson Benesch the A.C.T. C60のどこが他社スピーカーと違うのか。 拙い私の試聴感想からお汲み取り頂ければ幸いです。そして、最も重要な事は 私の感じた事をここで皆様にも体験して頂けるということなのです。 何とか細胞が話題となっていますが、科学論文は第三者が追試して再現できる ことが重要です。それが出来てこそ人類への様々な貢献が出来るというもの。 私は論文は書けませんが、自分の分析を実演として提供し証明することは出来ます。 今回使用した吸音クロスと読んでいた小さな布切れ、それがあればいいのですから!! ■今回ご紹介したWilson Benesch the A.C.T. C60ですが、実は限定販売となりました。  どのような意味で限定なのか!? それは試聴の上で本気になってくれた方だけに  お話しすることにしましょう。どうぞ興味の湧いた皆様はご来店下さい!!

担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!!

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