VOL.94 B&W 802 D3シリーズ セッティングレポート 


      

2015年11月27日に入荷して1か月弱経過しました。

その間はひたすら様々な曲を鳴らしており、その変化を観察しておりました。
展示してからは多くのお客様に試聴に来ていただき、また12月12日には試聴会も開
催し、そのサウンドを聞いていただいておりました。

高い評価頂いているケースの方が多いですが、旧タイプをお持ちのお客様からは賛
否両論意見が飛び交っておりました。

私個人的にも同様な意見を持っており、エージングが済んでからある程度のセッテ
ィングを行うつもりで、まずは素性を知っていただこうとH.A.L.3ではスタンダード
であるイルンゴのオーディオボードに直接のせたセッティングをしておりました。

今までの経験上、どこかのタイミングで一度大きな変化をしてくれるのですが、
多少は変わってきておりますが、まだ大きな変化までいたっておりません。
試聴室ではずっと802D3を鳴らしている訳ではありませんので、エージングがなかな
か進まないというのはお客様にはお伝えはしておりましたが、このまま待つことが
出来ず、セッティングを見直しました。

実際D&Mの試聴室で聞いたイメージよりも音が硬質に感じ、また低域のレスポンスが
早いのは良いのですが、量感が不足した感じに聞こえます。更に60mm厚のイルンゴ
ボードにセットしておりますので、音像がかなり高くなっておりました。


     
             付属のキャスター  


この802D3は動かしやすいように4つのキャスターが装備されており、そのキャス
ターを浮かすようにスパイクを伸ばしてセッティングをします。そのキャスターの
高さが40数mmほどのあります。外のベース部分から見ると数mm中に入った位置に六
角のねじ4本で固定されております。キャスター使用時は40mmの高さまではない
ですが、それを浮かせるセッティングをすると大体45mmほどの高さまでスパイクを
伸ばさなくていけないということになります。
実際旧タイプの802SDの標準スパイクの高さは短くした状態で約40mmありますので、
ほぼ変わらない高さではあります。

 
802SD                    802D3

そこでまずはキャスターを外すだけ外しました。高さはそのままの状態ですが、
これでも音が変わるんですね。音が静かになり、S/Nが良くなった印象を持ちました。
確かD&Mホールディングスで長年B&Wを検証しております澤田氏も外したほうが良い
という話をしておりました。

このキャスターも一人で傾けて外すのも大変ですので、動かさないということであ
ればセッティング時に外してもらった方が良いかもしれませんね。

さてこれは副産物として、今回やりたかったのは高さの変更でした。最初の状態は4
5mm程度でこれを大幅に25mmまで下げました。

      
          重要な水準器
			


フロント部分に水準器を起き、ボードから下の台座までの位置までメジャーで計測
をしながらですが、この作業は結構根気の作業です。
ただこの作業は私は大好きですね。
問題はスピーカーの左右の傾きよりも前後となりますが、今回の802D3の台座は横の
部分で水平をとることができますので、非常にやりやすくなっております。以前は
苦労をしましたが・・・

セッティング後試聴しましたが、あまりの変化に逆に戸惑ってしまいました。
今まで聞いていたのは上澄み部分みたいな感じで、このセットですと耳あたりも良
くなり、低域の量感と質感がかなりアップしました。
この要因は高さだけではなく、スパイクを固定しているロック部分のゆるみもあっ
たのではないかと思います、緩めてみると確かに音像が落ち着かない感じになりま
した。

さて使用しているイルンゴボードは厚さに比例して、低域の厚みが増えます。今度
は少し、低域が出過ぎて、若干飽和している感じにも取れました。

その時にD&Mのイベントにもご参加いただいておりましたH.A.L.3のご意見番的なお
客様のT様のご来店があり、せっかくですのでご試聴いただきました。

T様もあまりの変貌ぶりに首をかしげていました。
「ここまで違うものかね」の言葉が印象的でした。

数曲聞き終えたところで、私がセッティングをもう少し変更したいということで、T
様に話をしたところ、T様もその方が良いかもということと、その違いを聞きたいと
いうことでお手伝いいただき、高さを25mmから30mmに変更いたしました。

メジャー機能をもった水準器で高さも均等にし、水平もとった状態で再試聴を行い
ました。
T様と二人で笑顔になりました。
低域の量感、弾み方、グルーブ感、そしてVOCALの位置ともにウェルバランスで聞い
ていて楽しくなってきました。

最初は新しいB&Wにちょっと違和感を感じておりましたが、やはり凄いスピーカーで
あると確信できました。

フルではないですが、10数曲ぐらいは試聴したのではないでしょうか。良くなると
次々に聞きたくなる衝動に駆り出されますね。そういった時にはデータ再生は便利
です。

それぞれのユニットのつながりも大分良くなってきましたが、もう少し変化を期待
しているところです。

そのポイントとしては奥行感とまだ残る高域の癖かもしれません。

さて今回使用した機材ですが、
トランスポートにはDELA(NAS)、USB DACとしてはTAD D1000MK2のDAC部分。
プリアンプ OCTAVE HP700、パワーアンプにTAD M2500MK2。
TADのパワーアンプはまだ新品に近い状態で、まだまだエージング不足でそのあたり
の音も出ているのかと思ったりなどしましたが、閉店後試しにDACとプリ間のケーブ
ルを変更したりしましたが、またその違いに驚いてしまいました。

またバイワイヤーですとつなぎ方も複数あります。

 
          低域                     中高域
  
最初は低域につなぎ、エージングがある程度済んだところで、試聴の上決めます。
いくつかのパターンを試しましたが、今回はプラス、マイナスとも中高域につない
だほうが良い結果になりました。
B&Wの推奨も中高域につなぐことのようです。
高域はきついので低域側に接続しておりましたが、逆に中高域につないだ方が素直
な感じになりました。実際は付属ではない、良いジャンパーケーブルにすると違う
結果になる場合もありますので、こちらは好みでよろしいかと思います。
今バイワイヤーのスピーカーをお持ちのお客様は一度試してみると良いと思います。
B&Wでも時代によって私は接続の仕方を変えておりました。

さてケーブルでの変更などで音が違うのは当たり前ですが、今回はその変化量が以
前と比べても倍増しているような印象を持ちます。おそらくそれだけスピーカーの
情報量があるということに他ならないと思います。

これが何を物語るかとなりますと「神経質」「シビア」などあまり肯定的な言葉じ
ゃない感じにもとれてしまいますが、好きなシステムの音を忠実に再生してくれる
という面では、自分が求めている音に近づけることが出来るといったプラス面もあ
ります。私はこれがB&Wの最大の魅力だと思っております。

B&Wのホームページの中にデザイナのジョン・バウアーズ氏が語っている文章があり
ます。

「最良のスピーカーとは最も多くを与えるスピーカーではなく、失うものが最も少
ないスピーカー」

この802D3を試聴して、この言葉の意味が深くしみいりました。

今回はついつい自分の好みだけでセッティングをしてしまいましたが、次回はもっ
と音楽のジャンル別、また今回使用したブランド以外のアンプで、もっとその素性
に迫っていきたいと思っております。

今回セッティングの面白さと802D3の変貌という内容でお届けいたしました。

2015年12月20日 H.A.L.3 島