VOL.92 B&W 800 D3シリーズ 製品レポート 今回はB&W 新800Diamond D3シリーズをご紹介させていただきます。 私が入社した当時はMATRIXシリーズがS3。 その後継モデルがNautilusシリーズ。 その後803、802、800がダイヤモンドツィーターを搭載し、シリーズが一新されまし た。 それから約5年を経てすべてのラインナップがダイヤモンドツィーターを搭載した、 Diamondシリーズということで統一されました。 そのDiamondシリーズ発売から約6年、待望の新シリーズが発売されました。 3世代目のダイヤモンドということで今回は「D3」ということでネーミングされてお ります。 今回大きな注目ポイントとしては803 D3になるかと思います。 以前の803Diamondは805Diamond、804Diamondと兄弟にあたると思いますが、今回の8 03 D3は完全に802D3との兄弟分にあたると思います。 実際その価格は旧802Diamondよりも上がっており、旧800Diamondと新シリーズ802D3 が同じ価格という位置づけです。 今回展示品の入荷前にD&Mホールディングスの方で説明会があり、B&Wのことを一番 精通しております澤田氏にじっくり説明をいただきましたので、ご紹介をさせてい ただきます。 参考までに 802DのレポートはVOL.30 802Diamondのレポートはこちら まずは下記新ラインナップの価格表となります。 クリックで拡大 まずは全体的なD3の進化をご説明させていただきます。 例えば今回802D3を例に出してみると、前回と同じパーツはたったの3か所。 ●ダイヤモンドツィーター ●真鍮製のスピーカーターミナル ●ネットワークのムンドルフのコンデンサー それ以外はすべてリニューアルされていると思っていただければと思います。 POINT1:長年のケブラコーンから新開発コンティニュアムコーンへの進化 画像クリックで拡大 B&の代名詞と言われるケブラコーンから、今回独自開発のコンティニュアムコーン を採用しております。 このコンティニウムコーンの計画は2003年からスタートし、完成したのは2007年。 それから量産、実用化まで8年かかり、ここに来てやっと採用することができたという ことで話を伺っております。 POINT2:フロントバッフル版の湾曲 画像クリックで拡大 画像クリックで拡大 限定モデルのSignature Diamondと同じように、フロントバッフル面を湾曲させ、 うまくフロント部分にユニットを装着しております。 802D3、803D3は同じように見えてユニットの取り付けの方法も違い、802D3の場合は バッフルに取り付けているのではなく、中のマトリクス部分に固定されております。 POINT3:ツィーターのハウジングの変更 同じに見えますが、叩いてみると違います。 旧モデルは叩いてみると高い響きが乗っておりましたが、今回のハウジングは叩い てみても独特な響きを持ちませんので、固有な素材音が乗りません。 こちらはアルミの無垢を採用しております。 POINT4:ツィーターのネオジウムマグネットの強化 以前は4つのネオジウムマグネットを使用しておりましたが、今回は3つになってお りますが、N35というものからN52という1.5倍の磁力を持ったネオジウムマグネット に変更しております。 POINT5:803D3、802D3のミッドレンジ部分の大幅進化 画像クリックで拡大 803D3及び802D3に関しては、ヘッド部分がございますが、以前はコーリアン素材の ものでしたが、今回はアルミの無垢になっており、その重量もかなりのものになっ ております。今回タービンヘッドという名称で呼んでおります。 POINT6:ロハセルコーンからエアロフォイルコーン。 画像クリックで拡大 画像クリックで拡大 画像クリックで拡大 ロハセル素材は新幹線などでも使われておりますが、そのロハセル素材から変更 し、シンタクティック素材というものを採用していおります。 表面はカーボン素材で覆われておりますので、同じに見えますが、裏をみると その厚みが外側、中側、内側で違います。 エネルギー効率を考えた時には均等であるとうまくバランスがとれないということ でこういった構造にしているとのことです。 それを支えるバスケット部分も強化しております。 POINT7:マトリクス構造の強化 Nautilus以前はMATRIXという型番がついておりましたが、そのMATRIXというの はキャビネットの中の構造にあります。 このMATRIX部分もモデルによっては板の厚さを倍にしたり、MDFを使っていた部分を 合板にしたりと変化しております。 POINT8:803D3、802D3のネットワーク部分 画像クリックで拡大 画像クリックで拡大 旧モデルは下のベースにネットワークを装備しておりましたが、今回は 背面にネットワーク部分を設けております。 また中のMATRIX部分に影響がないように、仕切って取り付けされております。 POINT9:803D3、802D3のベース部分 画像クリックで拡大 画像クリックで拡大 ベース部分にはネットワーク部分は入っておりませんが、重量も重くなっておりま す。 また次も大きな進化ですが、旧タイプはボールベアリングキャスターが標準装備で、 付属、もしくは別売のスパイクキットをスピーカーを倒した状態で後からつけてお りましたが、今回は通常のローラーキャスターになっており、またスパイク部分も 最初から本体に隠されております。 通常はキャスターとなりますが、スパイク部分を伸ばして、付属のスパイク受けを 使って固定となります。その付属のスパイク受けはスパイク部分とマグネットで固 定されて設置時の事故を防ぐことが出来るようです。 POINT9:803D3、802D3の輸送ロック 画像クリックで拡大 画像クリックで拡大 以前ミッド部分は後ろから引っ張っており、そこに輸送ネジがついておりました。 基本はそのネジを外しますが、お客様によってはネジを外した後にその先のねじを 緩めてしまうケースがありました。 今回は2本のねじで固定されており、そのネジを外した後に別梱包のカバーをはめる 形となります。 POINT10:ツィーターカバーの強化 今までのモデルはツィーターのカバーの取り外しが出来ましたが、今回特殊な工具 がないと外せなくなりました。 輸送中のトラブル、音質の為に外した後に戻す時にマグネットの力でダイヤモンド ツィーターの破損ということもありました。 そういうトラブルを防ぐために今回は固い素材のカバーにしております。また透過 率もしっかり考えておりますので、今回は装着した状態でご使用ください。 POINT11:803D3の進化 冒頭にもご説明させていただきましたが、各モデルの進化を見た時にこの803D3が一 番違います。802D3の廉価モデルという位置付けになります。前回のモデルは804Diamo ndのサイズは大きくし、ユニットの数を増やしたモデルとなりますが、どちらかと いうとシアターを意識した設計であったという話も聞きます。 803という型番がお客様にとってどういうイメージを持たれるかは想像はつきますが、 その先入観を是非今回は外していただきたいと思っております。 下記前モデルとの比較表 画像クリックで拡大 各モデルの詳細は下記をご覧ください。 802D3はこちら 803D3はこちら 804D3はこちら 805D3はこちら さて皆様が気になっているところはやはりその音質だと思います。 今回旧モデルとの比較は行っておりませんが、805D3から802D3まで順番に試聴して いきました。 メーカーによっては大きな路線変更をして以前の方が良かったというケースもあり ます。それが個性というところになります。 ただその場合は音楽性に富んだメーカーの場合が多いことは皆様ご承知のことと思 います。 そもそもB&Wをお選びになるお客様とそうではないお客様の考え方はその時点であま り交わっていないようにも感じます。 B&Wは昔はあの有名な録音スタジオアビーロードのエンジニアの意見も参考にしなが ら音作りをしていた世界を代表するモニタースピーカーの一つです。 ただ前回のモデルもそうですが、スタジオモニターでありながら、そこに音楽を楽 しく聞かせるチューニングを施しているように感じました。 前々モデルのDシリーズからDiamondシリーズに変更した時に、ジャズやロックのな どの低域の弾み方は旧モデルの方が良く、クラシックの余裕感などはDiamondの方が 断然良く感じました。 そういうことを思い出しながら今回新モデルを比較しましたが、笑顔が出るぐらい 次元の違うサウンドステージを作ってくれました。 良く表現される時に使用される音のベールがはがれるという言葉がありますが、 ちょっと大げさかもしれませんが、厚手のカーテンの有る無しぐらいの情報量と 見通しの良さを感じることができました。 情報量=高域の派手さ というところを感じる場合もあり、長時間聞いていると疲れるのではないかという 風に思われがちですが、私がD&Mの試聴室で聞く限りはそういうイメージはあまり持 ちませんでした。 もっと突っ込んだコメントは展示品が入ってからにしたいと思います。 さて今回私が特に気に入っている点は低域のレスポンスの速さ。 803D3で試聴したのがJ-POPだったのですが、録音によっては低域のだぶつきが酷く 聞くに堪えない音源もあったりもします。これはB&Wであってもしかりでしたが、 今回のモデルは違います。スペック上での低域の伸びはさほどではないですが、S/Nや ひずみ特性は非常に向上しております。これは新開発のエアロフォイルコーン、そ してそれを支えるバスケット部などと関係していると思いますが、非常に心地よい 低域を奏でてくれました。 また全体的には解放感もあふれ出ており、スケール感も抜群です。 あえてこの段階で悪い点をつけると、奥行感への違和感かもしれません。 他社のスピーカーということではなく、旧モデルとの違いとして、全体的に音像が 前に出てきている印象が強く、ユニットからの音離れがまだまだかなという印象で す。 もちろんエージングによるところもあると思いますので、また確実な答えでは無い とは思いますが、あえて気になった点を述べさせていただきました。 さて今回一番気になるのが803D3です。 802との違いは、ユニットの後継、ユニットの取り付け方法、ツィーターのハウジン グの長さなどいろいろありますが、見た目は並べてみないと解らないぐらいです。 さてここで皆様の意識の中で802Diamondから803D3への買い替えは微妙と考えられて いる方も少なくないと思います。それは型番からのイメージかもしれませんが、 実際はかなりの音質向上となることが間違いなく、逆に設置環境などを考えると 802D3よりもコントロールがしやすいと思います。見た目的な印象は変わりませんが、 802D3のエネルギー、解放感が凄すぎて場合によっては飽和してしまう懸念さえある ようです。 これも新品が入荷しましたら検証の一つとしたいところです。 いずれにしてもオーディオ的な判断では802Diamond < 803D3になるのではという判断 をしております。 今回も驚くべき進化点が山積みで早く店頭で聞きたくなりました。 さすがに期待を裏切らないブランドであることは今回も確認できました。 恐るべしB&Wですね。 今の段階では11月中に805D3,804D3、803D3、12月に802D3が代理店に入荷するととい う予定にはなっているようです。 皆様にしっかりご案内出来る日を楽しみにしております。 2015年10月9日 H.A.L.3 島 |